キハ26が好きな理由

平成28年2月26日ということで「キハ28-26記念切符」を発売いたしますが、実は私はキハ26が好きで、形式末梢から30年も経つというのに、今頃になって記念切符を作ろうと思うのにはわけがあります。
つまり、なぜキハ26好きかということなのですが、それは子供のころの思い出があるからです。
急行「そと房」に乗って勝浦のおばあちゃんちへ何度も行っていたのは房総東線電化前の昭和40年代前半ですが、その頃はキハ26とキハ28の混成で編成されていました。いろんな編成があったので、いつのことかは覚えていないのですが、キハ26が先頭に来ると、とにかく見晴らしが良いので前面展望を楽しめたのです。
キハ28はデッキと運転席との間が完全に仕切られていて、前方を見ようとすると窓の位置が高い。これは小学校低学年にとっては致命的でしたが、キハ26はその仕切り壁がなく、棒1本で運転席との間が仕切られているだけ。ちょうど今のいすみ鉄道のキハ52と同じ感じなのですが、当時のキハ26はキハ52の助士席側にある壁もなくて、ほとんど開放的な運転席でした。おまけに、デッキの出入り台の横に引き出して座ることができる補助席が2席分ついていて、そこに座ると前面展望特等席だったのです。
ある時、伯父さん夫婦と一緒に東京へ戻る車内で、混んでいて座れないことがありました。そこで私は伯父さん伯母さんに、「こっちに来れば座れるよ。」と言って、最後部に連結されたキハ26のデッキに案内してその補助席を確保してあげたんです。
「あきらはさすがに詳しいな。」と喜んでもらったのですが、その最後部のキハ26が大網からは最前部になるわけで、土気へ向かって喘ぎながら登って行きます。運転士さんと通票受渡し用に助士が乗務していて、私は手すりにつかまって前方を見ていると、運転士さんが「ボーズ、汽車好きか?」とか聞いてきますから、「大きくなったら運転士になりたい。」などというような会話をします。やがて、頂上に上り詰めたところにある土気の駅を通過するわけですが、タブレットをホームに投げて、ホームの先端にあるタブレットをバシッと受け取るシーンなどを目の前で見せてもらって、「カッコいいなあ。」なんて思ったのです。
千葉を過ぎると電化区間に入りますが、運転士さんは私の方を見ながら、「スピード出すからな。」と言いつつどんどん加速していきます。今思えば稲毛から新検見川の小さな川を越える付近だと思いますが、90キロに近いスピードで走ってくれて、101系の緩行電車を追い抜いたり、京成電車と並走した時は「すごいなあ。」と喜びました。
その頃はまだSLが走っていましたので、横を通り過ぎる時に煙を浴びたりしましたが、そんな思い出が色濃く残っているわけです。

▲キハ26を先頭にした急行「そと房」
このように小学校低学年でも前面展望を楽しめる車両は当時はいろいろあって、身近なところでは東武東上線の7300や7800がそうでした。最新型の8000は子供の身長では前が見えないので、何本か見送って7300や7800が来るのを待っていることなどしょっちゅうでしたし、旧型国電も運転席の位置が低く、前方が良く見える電車でしたので気に入っていました。

▲東武東上線7800

▲外房線クハ79

▲青梅線クハ79

▲青梅線クハ79
旧型国電は形態がバラエティーに富んでいて先頭車両のクハ79だけでもこのようにいろいろな顔があるのですが、小学生としてはそんなことよりも前面展望が見られることの方が大切なわけで、こういう電車に乗っては一番前に陣取ってただただ前方を注視している子供だったというわけです。
それが高じて今でも前面展望DVDなるものを儲かりもしないのに一生懸命撮っているわけですが、私にとっての動機づけになったと言いますか、いまでもキハ26が好きだということで、こうして30年も前に形式消滅し、1両も保存されていない車両の切符を作ってしまおうということの原動力になっているわけです。
ということで、いすみ鉄道に乗りに来て、ムーミン列車やキハの思い出を持った子供たちがたくさん増えて、そういう子どもたちが大人になった時に、どういう形で鉄道をとらえてもらえるかと考えると実に楽しみなわけで、仕事としては大きな夢が膨らむと私は考えています。
幸い、今、いすみ鉄道で訓練費用自己負担で運転士になってくれた乗務員さんたちも、おそらく皆さん子供のころに似たような経験をしているはずで、そういう人たちが、観光鉄道の運転士として、小さな子供たちに夢を与えるような仕事をしてくれていますから、私は、ローカル線というものが将来につながっていくという確実な手ごたえを感じているのです。
「鉄道ファンは採用しない。」と宣言している鉄道会社もあるようですが、その仕事が好きで、一生懸命打ち込む姿は美しいと思いますし、そういう姿を見て子供たちが「大きくなったらこの仕事がしたい。」と思えるような、そういう大人たちが働く会社であることは、大切なことだと思います。
だから、今回発売するキハ28-26切符は、鉄道に対する愛があふれている切符だということなのであります。


2月27日発売
大多喜駅9時、国吉駅10時、大原駅9時
0001は大多喜駅で発売します。
1部2000円です。