1等・2等・3等車

先日は総武快速線のグリーン車の話をしましたが、今日もその関連の話です。
日本の国鉄で等級制が廃止されたのは私が小学生のときでした。
昭和30年代には1等・2等・3等の3等級でしたが、それがいつの間にか1等・2等の2等級になり、それも廃止されて、グリーン車・普通車になりました。
実際には列車の車両そのものは変わりませんでしたので、呼び方が変わっただけのような気がしますが、根本から大きく変わったのは、運賃そのもので、それまでは、例えば東京から大阪へ行く場合、乗車券の金額そのものが1等、2等でそれぞれ違っていたのです。
ところが、グリーン車になってからは、乗車券(運賃)は共通で、サービスに対して料金を支払う形式に変更になりました。
つまり、グリーン料金という料金を追加して支払うことで、旅の途中でも「やっぱりグリーン車で行こう。」と気軽に変更できるようになりました。
小学生だった私は、詳しいことはわかりませんでしたが、学校の先生が「これで平等になった。」と言っていたことを覚えています。
当時の学校の先生はサービスに上下をつけることや、人によって差をつけることを嫌う傾向があったように記憶していますが、まだ貧富の格差が顕著だった1960年代の日本では、お金がある人が上級のサービスを受けることができることが、国民感情的に違和感があったのでしょう。国鉄が等級制を廃止して「普通車」「グリーン車」と呼び名を変えたことは、こういう流れだったのかもしれません。
結局、呼び名は変わってもグリーン車が庶民にとって高嶺の花であることはは変わらず、当時の日本人たちは皆当たり前のように普通車を利用していて、グリーン車は特別の人が乗る車両というイメージが子供時代の私にはありました。
時代は変わって、平成24年の今ではグリーン車は特別の人たちが乗る車両ではなく、ちょっと疲れたなあ、とか、今日は自分へのご褒美などとふつうの人が気軽に利用できる時代になりましたし、グリーン車のその上のグランクラスやロイヤル・スィートなど、かつては貴族が利用したような特別車両でさえも、切符さえ手に入れば鉄道マニアやふつうの人が利用できる良い時代になったのです。
特に私が感心したのは東北新幹線に登場した特別室の「グランクラス」。
誰が名づけたのか、わかっていて名づけたのかは知りませんが、あえて「クラス」と付けているのは、イデオロギーを打破する意味で大きいものがあると思います。
「クラス」というのは明らかに等級や階級を意味する言葉で、学校で使われる「クラス」という言葉も「学級」という「級」なわけですから、昭和の日本人だったら、聞いただけでアレルギーを起こしたと思いますが、今の時代にはすんなりと受け入れられたのは、日本人の感覚もずいぶん変わったのだと思います。
昔だったら、評論家や市民団体などが「クラスとはけしからん!」と気勢を上げるのは間違いなかったですからね。
ちなみにいすみ鉄道で走っているキハ52の「キハ」ですが、気動車の「キ」とイロハの「ハ」で「キハ」。
つまり、1等「イ」、2等「ロ」、3等「ハ」の3等車ということです。
昭和40年製ですから、当時の名残なのですね。
昭和がテーマということは、こういうところも「昭和している」のです。
(つづく)