雪月花の戦略

10月に入って値上げの嵐ですね。
原材料費の高騰。円高。
ニュースでも値上げ値上げ。

トキめき鉄道の雪月花も10月から値上げさせていただきましたが、発表当初、一部のマスコミの方から値上げはけしからんというような記事が出されましたが、まあ、ほとんどニュースにはなりませんね。

なぜだかわかりますか?

そう、観光列車というのは、1万円だから乗るけど、2万円になったら乗らないというような商品ではないからです。
たぶん、値上げはけしからんというような論調の方々は、このあたりをご理解いただいていなかったのかなあと思いますが、ご説明いたしましょう。

商品には大きく分けて「日用品」と「買回り品」というものがあります。
「日用品」というのは読んで字のごとく、毎日使うもの。
食料品や衣料品、学用品などですね。
これに対して「買回り品」というのは、わざわざそれを買うために出かけていくような品物。
何年かに一度しか買わないような耐久消費財であったり、あるいは趣味のモノであったり。

神保町に書泉グランデという本屋さんがありますが、あのお店は鉄道書籍類が充実しています。
私が制作しているパシナ倶楽部のDVDも書泉グランデさんに置いていただいていますが、あそこのお店のお客様は全国区なんです。

地方の方でも東京出張の時に立ち寄るとか、あるいは月に一度東京に出かけたときに必ず立ち寄るとか。
つまり、わざわざ出かけて行って買い物をする場所なんです。

ふつうの本屋さんは今の時代なかなか厳しいご商売をされていると思いますが、品揃えと長年の口コミで、わざわざ遠くから買いに来る本屋さんが書泉グランデなのです。

同じ本でも雑誌は日用品。
わざわざ買いに行くような趣味の本は買回り品。
日用品である雑誌だと、500円の値段を見て、「どうしようかな」と悩むところですが、買回り品になると、3000円、5000円の写真集がバンバン売れる。

当然観光列車もその買回り品で、上越には用事はないけど、雪月花が走っているからわざわざ乗りに来ていただける商品なのです。

ということはどういうことかと言うと、お客様は東京から往復2万円かけて新幹線でやってくる。
2万円かけてわざわざ行くのだから、ふだんとは全く異なる非日常感をお楽しみいただきたいという心理が働きますから、「どうせ行くなら」と、判断基準が価格ではなくなります。

多少高くても特別な体験をしたい。

これが雪月花の世界でありまして、値段を上げるということは、それだけお料理の質が上がる。つまり、地域にお金が余計に落ちることになるわけで、最近の都会人は、できるだけ地域貢献をしたいという方が増えてきていますから、どうせ行くなら美味しいものをいただいて、地域貢献をしたい。
これが雪月花の値上げであります。

だから、生鮮食料品や衣料品などの値上げと同等に論じようとすること自体が、商売を知らない人たちなんだなあということがバレてしまうのです。

ちなみに雪月花のご予約はおかげさまで順調でございまして、60%ほどのご予約率となっております。

「60%? なんでそれが好調なんだ?」

そう思われる方もいらっしゃると思いますが、例えば4人掛けの座席に3名ご予約をいただいたら、それで満席でしょう?
大衆食堂じゃないんですから、「お客様、ご相席でお願いします。」なんてことは言えませんからね。
つまり75%で満席なんです。

2人掛けのお席に1名様のご予約が入ったら、50%で満席。

そう考えると、6割ほどのご予約というのは、どういうことかと言うと、「ご希望の日時のご希望の列車のご予約が取りづらい状況にある。」ということなのです。

商売というものはそういうものですから、「6割で満席? なんだそれは? もっと経営努力をしろ!」と数字だけ見て私に食ってかかってくるような人は、これまたお里が知れるということなのであります。

さあ、皆様、リニューアルした雪月花をどうぞお楽しみください。

【お料理の一例】 午後便、糸魚川発 汐路さんコース
糸魚川発なら東京をゆっくり出てきても間に合います。

能生漁港の漁師の豪快コース

お子様ランチならぬミニチュア大漁旗付き

これはリピーターになりますよ。

https://www.echigo-tokimeki.co.jp/setsugekka/