LCCのお客様 その3

格安航空会社(LCC)はいったいどのようなお客様に愛用されているのでしょうか?
日本のLCCの草分けの 「スカイマーク」。
1998年の運航開始から13年を経過していますが、その間に業界からいろいろイジメのようなことを受けたにもかかわらず、現在も拡大路線でお客様の数を伸ばしています。
このスカイマークは私の先輩が経営トップにいますから、私もいろいろと勉強させていただいておりますが、見ていて興味深く感じることがいくつかあります。
例えば、特に観光シーズンでもない平日の夕方の羽田空港。
ターミナルビルの片隅にある搭乗手続きカウンター。
行き先は札幌、神戸、福岡、熊本、鹿児島、沖縄など。
どの便も「満席」の赤い文字が付いています。
お客様は自動チェックイン機で搭乗券を出して、ゲートに向かいます。
荷物がなければ、この間職員とは口も利きません。
荷物がある人は、列に並びます。
この列が半端でなく長い。
でも、皆、黙って静かに並んでいます。
A社やJ社のカウンターでこの列だったら、短気なオヤジが「いつまで待たせるんだ!」と叫びだすところでしょうが、そんな態度の人は一人もいません。
20分ほど待って自分の番になったのでカウンターへ行くと、「おひとり様15キロまで無料です。」と書かれた張り紙。
A社もJ社も同じですが、違うのは「超過料金は10キロごとに500円。45キロ以上は預かりません。」と書いてある。
後ろに長蛇の列があるし、金額も高くないのでお客さんは自分の荷物がオーバーしたら素直に払っている。
これがA社やJ社のカウンターだったら、「前回は同じ荷物で料金は取られなかった。」とか「お前じゃだめだから支店長を出せ。」とか、しまいには「俺を誰だかわかって言ってるのか。」とか始まるお客が必ずいます。
ゲートに行っていざ飛行機へ。
150人乗り程度の飛行機だからお客様の数も満席でも150人。(あたりまえか)
だから、サッと乗ってサッと出ていく。
これがA社やJ社の300人、400人乗りの大型機だったら、ボーディングも倍以上時間がかかるし、必ず一人や二人どこへ行ったか分からなくなる人が出てくるから、その人を探すのに人手も時間もかかるのです。
機内に入ると座席はA社もJ社もスカイマークも同じ。
違うのは飲み物サービスが有料なぐらい。
クルーがポロシャツ姿というのもスカイマークの特徴かな。
飲み物が有料といったってせいぜい100円ですから、別にそこであこぎな商売をしているわけでもない。
自動販売機で100円以上する飲み物を100円で売っているのですから。
要するに、飲み物サービスと言っても、いらない人はいらないのであって、必要な人はお金を払えばそれでよいという意味の100円。
今までの国内線では、タダでくれるもんだから、もらわなくては損ということで、みんなもらっていたし、自分の番をうっかり寝過ごすと、どうして俺にはくれないのか、となるものだから、「お目覚めですか?」ってシールを座席に貼っていくのがクルーの仕事だった。
こういうのは全く余計なサービスで、寝過ごしても飲み物がほしければ、「ください」って言えばいいだけの話。
変な公平感や、サービスのつもりのようなサービスが国内線の乗客を甘やかせてきたようにしか思えない。
だから、わずか100円の料金を課すだけで、「いらないものはいらない」とはっきり自分が納得できるわけで、おかげでその分ゴミも出ない。
ゴミといえば、到着の15分ぐらい前になると、クルーが袋を持って通路を回りながら機内で出たごみを回収していきます。
LCCの原則として、折り返し地点での地上滞在時間を極力短くして、飛行機の回転を早くすることが求められていますから、同じ形の飛行機でも、スカイマークは他社に比べて10分も15分も折り返しのための滞在時間が短いのですが、これを可能にするのが地上での掃除の簡素化。
そのためには到着前に乗客の皆さんにも協力してもらって、機内の片づけを行うのです。
だから、スカイマークの飛行機は、到着してお客様が降りた後、ゴミがほとんど落ちていない。
これがA社やJ社だと、飲み物のコップがシートポケットに挟まっていたり、新聞が散らかっていて、ブランケットも散乱している。
それを掃除のおばさんが乗ってきて片付けていくのですが、スカイマークでは、クルーが自分たちでサッサと片付けて、保安チェックをして、「はい、次のお客様どーぞ。」となるのです。
クルーは到着してから掃除するぐらいなら、到着前にやろうと、飛行中に一生懸命機内のごみを集めているのです。
もう一度おさらいをしますね。
LCCに乗る場合、
・インターネットで自分で予約する。
・クレジットカードかコンビニで自分で支払う。
・座りたい座席も自分であらかじめ選択して決めておく。
・予約した飛行機から変更しない。
・十分な時間をもって空港で手続きをする。
・待たされても怒らない。
・VIP扱いのラウンジだとか、優先搭乗だとかを求めない。
・自分で搭乗口へ行き、自分で飛行機に乗る。
・飛行機の中ではクルーに面倒をかけない。
・機内持ち込み手荷物の収納も自分で行う。クルーは手伝わない。
・飲み物や食事は自分で用意する。
・到着前に自分でごみの始末をする。
・着いたら次のお客様のことを考えてさっさと降りる。
これができればあなたもLCCのお客様になれます。
つまり、これができれば、例えば東京から福岡まで36800円の航空運賃が17800円とほぼ半額になるのです。
私は、今の日本の経済状況を考えるに、日本全国どこでも往復で2万円にすることができれば、もっともっと観光需要を掘り起こすことができると感じています。
だって、香港やソウルはホテル付で2万円台でいかれるのですから、国内線の航空運賃はまだまだ高すぎるのです。
どうです。
国内幹線のLCCって魅力的でしょう。
もうすでに20代30代の人たちは、うまく使い始めているように感じます。
そう、最近の若い人たちはおじさん世代に比べて優秀なのです。
(おわり)