夜明け前

木曽路はすべて山の中である、の話ではありません。

今の日本の話です。
順調に伸びてきて、4000万人目前だったインバウンド観光客の流れがぴたりと止まり、日本人の国内流動もなくなって、いきなり消灯で強制的に眠りにつかされた日本の観光産業ですが、今、なんとなく「夜明け前」の予感がしています。

高齢者へのワクチン接種が終わるということは、旅行需要が旺盛な世代が動き出すということです。
実際にヨーロッパなどでも爆発的観光ブームと言われる状況がやってきているようですが、時間差こそあれ、まもなく日本にも同じ動きがやって来るでしょう。

このグラフは土曜日の地域鉄道フォーラムで矢ヶ崎先生が示された日本の旅行者がいくらお金を落としたかを示すグラフですが、2019年の時点で外国人観光客が消費した金額が4.8兆円。
この金額は同じフォーラムで講演されました観光庁観光戦略課長の片山さんによれば、日本の輸出産業の第1位は自動車で12兆円ですが、その次は観光で4.8兆円、第3位が半導体部品で4兆円とのことですので、輸出と同じカウントをされる外国人観光客の消費がいかにすごかったかがわかるというものですが、それよりもはるかに金額が大きいのが、日本人が国内旅行で消費するお金でありまして、その金額たるや年間22兆円に上るのであります。

そして、今、コロナが一段落して、旅行に行かれるようになると、まずは国内旅行となることは明らかですから、海外旅行へ行きたくても行かれない人たちの国内旅行を含めると、恐らく来年は30兆円ぐらいになるのではないかと私は考えているのであります。

では、そういう人たちが国内旅行でどこへ行くかというと、日帰りや1泊程度のマイカーは別として、公共交通機関を使ってでかける人がおそらく半分以上いると思います。

そこで、いつも言っているように、新幹線ですか? 飛行機ですか? それとも高速バスですか? というお客様の選択になると思いますが、この中で飛行機という選択肢はおそらく難しくなるのではないか。難しくなるというよりも、今までと同じ感覚で飛行機を予約して旅行するということが厳しくなるのではないかと私は考えるのです。

その理由は、航空会社がコロナでビジネスの規模を縮小してしまったから。
日本だけでなく全世界的に大型の飛行機をやめて小さい飛行機にして、機体数も減らしてしまいましたので、「はい、夜が明けました。」と言ってもすぐに以前と同じ規模でのサービスが供給できない可能性があります。
これに対して、新幹線は「空気を運んでる」とか揶揄されていますが、コロナが明けて旅行需要が旺盛になった瞬間にその需要に応えられるわけですから、私としては夜明けと同時に動き出すのは飛行機で出かけるところではなくて、新幹線が走っているところになると考えているのであります。

ということで、新潟県にもビッグチャンスがやって来ることが容易に予想されるのでありますが、解禁になったとたん、待ってましたとやってくる観光客というのは「期待して」やって来るのでありますから、観光客を迎え入れる側の皆さんが初期対応を間違えてその期待に応えられないようなことがあると、「な~んだ。こんなところ2度と来るか。」というきっかけを作ってしまうことになりますので、ここが勝負どころになると考えているのであります。
なぜなら勝手な話ですが、お客さまというのは期待が大きい分、がっかり感も大きいからです。

そして、その勝負どころが試されるのが、あと数か月後に迫っている。
夜が明けるぞと喜んでばかりいられないのが、今の日本の観光地なのだと私は思います。

さて、コロナで客がいない間、ボ~ッとしていたところと、戦略を練っていたところの差が顕著になるのがこの秋なのでありますが、うちの会社は準備ができているのでしょうか。

私は楽観視はしておりませんよ。