密度はすべての基本です。

緊急事態宣言が解除されたとしても、新しいスタイルでの生活が求められる。
引き続き「3密」を避けて生活しなければならない。

そういうことが言われ始めています。

感染症予防の専門家の意見としてはそうかもしれません。
でも、それは極めて狭義な解釈であって、人間の特性に合っているとは言えないと思います。

人間というのは近寄って、触れ合って、意気投合したり、コミュニケーションを取りながら生きていく動物だと思うからです。

だから、今後も引き続き「3密」を避けて生きていかなければならないとすれば、人間らしく生きることができなくなるのではないかという心配をするわけですが、それだけじゃなくて、密度というのは経済的にもあらゆる物の基本になっていると思えるからです。

例えば電車。
JRなどのだいたいの電車は幅2.5m×20mの1両で50平米の床面積ですが、その中に何人乗るかで払うお金が違ってくる。
例えば一番安い通勤電車は150人。長距離の電車になると普通座席は80席。グリーン車は50席。寝台車になると30席など、1両の電車に何人乗るか。あるいは1人当たりのスペースがどれだけになるかによって、切符の金額が違ってきます。

飛行機もそうですね。
ファーストクラスが一番ゆったりとしていて、次がビジネスクラス。一番窮屈なのがエコノミークラスです。
同じエコノミークラスでも日本航空などの大手会社に比べるとLCCなどの格安航空会社はさらに窮屈になる。
同じ空間を何人でシェアするかによって、つまりは密度によって支払うお金が変わってくるのが電車でも飛行機でも、あるいは高速バスでも基本的な制度になっています。

ホテルもそうですね。
安いホテルの部屋は狭く、高いホテルの部屋は広い。
或いは同じホテルでも狭い部屋は安く、広い部屋は高い。
宿泊するためのホテルなら個人や家族で一緒に居るだけですから部屋が狭くても問題ないかもしれませんが、会合や集会などで使う場合、10人程度の会合や100人程度の会合など、集まる人数によって部屋の大きさが違うわけですが、当然お値段も違ってきます。
今後も3密を避けるという話になれば、会合で使う部屋も、同じ10名でも今までより広い部屋が必要になるのでしょうが、それだと料金が変わってくる。なぜなら密度が基本だからです。

喫茶店やレストラン、居酒屋などもお店の広さで家賃が変わってきます。
広いスペースを借りれば当然家賃が高くなります。
3密を避けるためには同じ客席数なら広いスペースが必要だし、同じスペースなら客席数を少なくしなければなりません。

だとすると、お客様一人あたりのスペースに占める家賃の割合が変わってきますから、今までと同じ商品を同じお値段で提供することができなくなります。

スーパーマーケットなどもできるだけ狭いスペースに商品をたくさん詰め込んで販売することが定着していますが、売り場と家賃の関係を考えたら、それがすべての計算基準になっているわけで、同じ商品を広い売り場で売ろうと思ったらスーパーマーケットという商売ができなくなるのです。

電車だって飛行機だって、密度で課金するわけですから、同じ料金で広いスペースを提供するとしたら、需要がない時期ならともかく、混雑する季節などは商売が成り立たなくなります。

つまり、密度というのはすべての計算根拠になっているわけですから、今後もずっと3密を避けるという話になると、交通機関も飲食店も物品販売も宿泊業も、あらゆる商売がその根拠を失うことになるわけですから、そう簡単に成り立たなくなることが明らかなのです。

では、どうするか。

例えば、飛行機ならファーストやビジネスに乗って、電車ならグリーン車に乗って、食事は高級店でいただくということが病気にかからないことにつながるようになるかもしれないし、そうだとすれば貧富の差が健康に直結するような、そんな時代が来るかもしれないと考えることもできる。

だったら、いっそのこと、都会になんて住まないで、田舎暮らしをしましょうか。
そういう人も当然出てくるでしょうね。

今まで、仕事がないから田舎には住めないと言われていましたが、テレワークだとかリモートだとか、突然そういう時代になって、住んでいるところと仕事をするところが離れていても問題のない人たちがまず田舎に住み始める。
そうすると、そういう人たちをサポートするような仕事が発生する。
全国一律ではないかもしれないけれど、そういう順番に田舎に仕事ができ始めると、さらにそこに新しい動きができ始める。

テレワークやリモートというのは、ある程度の所得層の人たちが真っ先に対応できると考えられますから、そういう人たちが田舎へ行きはじめると、今まで時代遅れだった田舎の考え方も急速に進むかもしれないし、そうなったところからさらに人を呼びこむことができるから、ある意味最先端の考え方が田舎から生まれるようになる。
逆に言えばよそ者を排除するような訳のわからないおじいさんたちが幅を利かせているようなところは、今回の波に乗り遅れると完全に消滅することになるだろう。

今後も引き続き3密を続けなくてはならないとすれば、日本の田舎にとって大きな別れ道にあるだろうなあと、そんなことを考えると目が離せないのであります。

それにしても、去年の9月にトキ鉄に就任してから最初に取り掛かったのが「テレワークオフィスの設置」。
なんとまあタイムリーなことでしょうか。
まもなく還暦ではございますが、世の中を見る力はまだまだ衰えていないのではないかと思う今日この頃であります。

例えばね、新幹線は絶対に窓が開かないのですが、在来線なら窓が開くわけです。
8年前ほどにいすみの新車を作る時に「窓が開く車両!」と言った時はいろいろ言われましたが、その後立ち往生した電車に乗客が缶詰にされるような事態がたくさん発生したりしましたから、私は窓が開く車両を作って正解だったと思います。
でも、今回の3密を避けるという話を耳にすると、だったらいっそのこと窓を取っちゃったらどうでしょうか? ということを考えたりするわけで。

雪月花のような2両編成で30人しか乗らないような豪華列車は3密にはなりませんが、そうじゃない列車なら窓が開くどころか、窓を取っちゃえば良いのではないでしょうか。

そうです。観光列車はトロッコに限る!

そんな時代を見据えることも必要だろうと、今、考えているのであります。

こういう時代だからこそチャンスがある。

皆さん、おそらくあとあとになればわかると思いますが、今の時期、世の中が大きく変わる変革期の真っただ中にいるはずです。
だったら時代の流れから目が離せませんね。

生活や経営は大変ですが、面白い時代だと私は考えます。

さて、新しい一週間が始まります。

どんなことが起きるか、わくわくですね。