何だかなあ の謝罪会見

私がブログを休眠しているここひと月余りの間、日本中では至る所で、業種を問わず、企業の不祥事やトラブルが表面化し、テレビのニュースで報じられています。
私はテレビのニュースを見ながら、「なんだか日本の会社はおかしいなあ。」と思っていましたが、皆様方はどのようにお感じになられていらっしゃいますか?
企業が活動していると、生産活動やサービス活動などで、いろいろなトラブルが発生することがあります。
トラブルの原因は人為的なものであったり、不可抗力であったり、または未知の分野のことであったりさまざまですが、トラブルが発生するとお客様にご迷惑をおかけすることになります。
私は航空会社に長くいました。
航空会社では飛行機が遅れたり、欠航したり、あるいは予約されているお客様に座席が提供できなかったりと、様々なトラブルが毎日のように発生しますから、企業として、会社として、トラブルはできるだけ発生させないほうがよいに決まっているけれど、トラブルが発生すること自体はある程度許容範囲としてお客様にご理解いただく必要があると考えています。
でも、大切なのは、会社としてそういうトラブルに対して、また、トラブルに遭遇してしまったお客様に対して、どのように対応するかではないかと思います。
例えば、いすみ鉄道でいうと、列車が遅れたり運休したりすることがあります。
その原因が車両の故障であったり天候であったりするわけですが、お客様にご迷惑をおかけする以上、お客様に対して謝罪をしなければなりません。
食べ物を扱っている商売だと、(食品偽装は論外ですが)、いくら注意していても不良品が紛れ込んでいることだってゼロとは言えませんし、先日も、オンラインショップのシステムトラブルで限定商品をご購入いただけなかったお客様が何名様か発生し、担当者がお一人お一人に連絡をして謝罪することもありました。
謝罪の仕方は、お客様にご迷惑をおかけした程度、トラブルの発生原因、トラブルの規模などにもよりますが、例えば列車の遅れであれば駅での掲示であったり、車内アナウンスでのお詫びであったりと、それぞれの会社のポリシーに従って行われるわけですが、時として会社のトップが出ていくことが求められるような大きなトラブルが発生することがあります。
特に、このところの日本では、JR北海道の連続トラブルや、大銀行の暴力団との取引の発覚、そして高級ホテルのレストランや有名百貨店での食品偽装など、ここひと月ふた月だけでも、有名企業、大企業と言われる会社のトップが国民の前で謝罪する光景を皆さんも何度も目にしていると思います。
そういう謝罪の記者会見で私はいつも思うのは、日本企業ではトップの立ち居振る舞い、記者会見場の設定など、謝罪する場の雰囲気作りが全く考慮されていないということです。
例えば、JR北海道の記者会見では、おそらく本社の会議室が使われたんだと思いますが、マスコミのカメラを前にした壁に「社是」なんかが平気で掛かっていたりする。本来ならばトップが出てくる前に広報担当者などが記者会見場の設定をきちんとするわけですが、そういう配慮がされていないから、トップがマスコミに突っ込まれてしどろもどろになったりするわけで、謝罪会見でトップのああいうシーンは見せてはいけないわけです。
大銀行の頭取の記者会見も不思議な光景です。
頭取や幹部が記者会見しているその後ろにはパソコンや機械が無造作に置かれていて、背中を向けて仕事をしている人がいるんですから。
なぜ、ああいうところで大銀行のトップが記者会見を、それも謝罪会見をするんだか私には理解できない。
その会見場全体を見ていないので位置関係は分からないものの、なんだか「とりあえず謝ります。」みたいな雰囲気を視聴者が持つことになるし、そういうシーンがテレビで何回、何十回も放映されることで国民に植え付けられるその会社の印象というものを考慮していない。つまり、極端な言い方をすれば、自分たちは信用金庫じゃなくて大銀行だから、国民一人一人を意識してませんよ、という企業からのメッセージにとらえられなくもないわけです。
レストランで使用する食品の偽装についてはなおさらで、高級ビーフと称して実は霜降りに見せかけた油を注入した加工肉を使用していたとか、鮮魚が実は冷凍の魚だったとか、一つのレストランでいくつものメニューの食材の偽装が発覚して、それがチェーンホテルのいくつものレストランに広がっていくわけですから、炎が掛け算で燃え広がっていく状況だというのに、当初のトップの会見は「偽装ではない。」「お客様を騙す意図はなかった。」と言い訳が先行していました。
燃え広がる前に火を消すことが全く考慮されていなかったのです。
だいたい、高級ホテルを自認するホテルのシェフが、納入された食材の見分けがつかない。つまり高級な牛肉を使用したメニューに対して加工肉が納入されていることに気が付かないようであれば、そのホテルそのものの品位が問われるわけだし、気づいていてそれをそのまま使用していたとすれば、これは組織的犯罪であって、完全にお客様を欺いているわけですから、謝罪会見のシナリオそのものがどちらにも対応できていないことは明白で、さんざん偽装ではなくてミスだと言い張っていた社長が、最後になって「辞めます」では、謝罪会見の構成そのものができていないわけです。
このホテルチェーンは数年前に大手鉄道会社2社が合併して誕生した経緯がありますが、会見の内容によると、レストランでの食材の偽装は会社発足時から続いていたことになるし、どちらがどちらを買収したかは忘れましたが、こういう場合はたいてい買収した側の会社のポリシーが貫かれているわけですから、名経営者と言われた創業者が聞いたらなんて言うだろうなあと思わざるを得ません。
そして何と言っても極めつけは、実はそのホールディング会社の傘下に入っている最高級ホテルでも同じようなことが行われていたということ。
100円のコーラを1000円で飲ませて、世のSNOBたちをにんまりさせていたあの高級ホテルが、謝罪の記者会見で、何を言ってるかわからないような英語を話す変な外人がトップとして出てきて、両手を前にだらんと垂らしてお辞儀(謝罪ではなくお辞儀)をしているシーンを見せられて、このホテルは実はとんでもない張子の虎であったことが暴露されたわけです。
フルブレックファーストは最低でも4000円、最高では2人で10万円もする朝ごはんを食べさせるホテルで出すジュースが、果物を直接絞ったものじゃなくて実はパック詰めされて業者から納入された業務用のジュースで、その理由が「コスト」だというのですから、これぞ張子の虎以外の何物でもなく、私としてみたら三流居酒屋で出される「生絞りグレープフルーツサワー」の方がはるかに立派な企業理念に基づいていると思うのであります。
「お客様。あなたはコストなんです。」
世のSNOBの皆様、このホテルから、上から目線でそう言われていることに一刻も早く気づいて、物事の本質を見極める目を持ちましょうね。
それとも100円の業務用ジュースを4000円の朝食に出すホテル、いやいや、世間では1個200~300円も出せば買える烏骨鶏の卵で作ったオムレツを10万円で食べさせるホテルとして、今後も崇め奉り続けますか。
SNOBというのは、だからSNOBなのだということも一理ある。
ということが、今回も露呈したのが、事件の副産物ですかね。
いやいや、この知ったかぶりのSNOBがたくさんいる国民性。
これぞ一連の食品偽装がなぜこれほどまでに広範囲で行われていたかを示す、消費者側の理由なんですよ。
(つづく)