いすみ鉄道沿線地域の皆様へ

いすみ鉄道沿線にお住いの皆様へ
ゴールデンウィークからいよいよキハ52型が走り始めましたが、もうご覧になられましたか?
旧国鉄木原線で昭和40~50年代に走っていたのと同系列の車両ですから、懐かしく思い出される皆様も多いと思います。
沿線には鉄道ファンもたくさん訪れるようになりました。
今まで来ることがなかったタイプの人たちが沿線に列をなして鉄道の写真を撮り始めたのですから、地元の皆様方の中にはビックリされている方もいらっしゃるでしょうが、鉄道ファンの人たちは、きちんとした人がほとんどで、人間的にもまじめな人種ですから、どうぞご安心ください。
田んぼや畑に入るようなことがあるかもしれませんが、その時は優しく教えてあげてください。
いすみ鉄道沿線には富士山が見えるところもありませんし、海岸沿いを走るところもありません。
特別景色が良いところはないと思われている地元の方々も多いと思いますが、
ちょうど田植えを終えた水田地帯に何十人ものカメラマンが列をなして列車を待ち構えている姿を見て、何かお気づきになりませんか?
そう、皆様方がふだん何気なく見ている田んぼや畑、里山の景色が、本当はとても素晴らしい景色であるということを、来訪者が教えてくれている。私はそう思っています。
いすみ鉄道沿線には、懐かしい日本の風景がたくさん残っている。
それが、地域の財産として、よそから来た人たちによって発見されだしたのです。
私が就任した当初、地元の人たちに 「いすみ鉄道が何やっているか、俺たちにちゃんと説明しろ!」とよく言われました。
そのたびに私は、「インターネットで会社がやっていることも、私が考えていることも全部公開していますよ。」と言い続けてきました。
お知らせを印刷物にして配布するような旧来のやり方では、コスト面でも速達性でも、いすみ鉄道のような会社がやることではないというのが私のポリシーですから、私はずっとインターネットで、ブログで情報を発信していますし、これからもそうしていきますが、最初は戸惑っていた地元の人たちも、最近ではすぐにブログの反響が返ってくるようになりましたから、ずいぶんと私のやり方を受け入れてくれるようになったのだと感謝しています。
今、YAHOOのブログ検索で 「いすみ鉄道」 と叩いてみてください。
全国各地からいすみ鉄道を目指して乗車に来たり、撮影に来たりする人たちが、それぞれの観点から情報を発信しているのがご覧いただけます。
それも数十人、数百人という数です。
いすみ鉄道は私なりにSEO対策(インターネットでより多くの人たちに見てもらえるようにすること)を行っていますが、昨年初めには1日200件程度だったアクセスが、今では1日4500~5000人もの人が、いすみ鉄道の私のブログを毎日ご覧いただけるようになりましたので、油断していると、地元の人が知らないことを日本全国津々浦々の人たちが知っているなんてことになりかねません。
それだけ、いすみ鉄道は全国の皆様から注目され、乗ってみたい鉄道の上位に入るような線路になったのです。
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「社長! お前さんの給料は俺たちの補助金で出してるんだぞ。」
以前は私に面と向かってそういうことを言う人たちがいました。
私は、そういう人たちに対して、いすみ鉄道に出している補助金(設備等の維持管理、修繕費)は地元の広告宣伝費だと考えてください。鉄道があれば地域が全国的に有名になり、全国からたくさんの人が来ますから、広告宣伝費だと考えてください。
そう説明して、実践してきました。
こういうことをコミットメントと言いますが、最初にお約束した通り、私はいすみ鉄道を全国区にして、いすみ鉄道目当てにたくさんのお客様が来るようなシステムを作り上げました。
それもシーズンに関係なく、通年型の集客が鉄道ならできるんだということも合わせて実現しました。
さあ、これからが地域の皆様の出番です。
いすみ鉄道に乗りに、またはいすみ鉄道の撮影のために沿線地域にやってきた観光客やカメラマンを、皆様方のご商売のお客様として取り込んでいくこと。
そうすることによって、地域に経済を呼び込むことをする時期なのです。
広告宣伝費をかけて、鉄道という媒体で地域を宣伝しているのですから、その宣伝効果としてやってきた観光客を自分たちのビジネスに取り込んで、自分たちのビジネスを上向きにさせなければ、広告宣伝をしている意味がないのです。
以前に海岸沿いの町の商工会でお話をさせていただいたときに、地元の商店の経営者の方が、「サーファーはたくさん来るけれど、経済効果がないからなあ。」とこぼしておられました。
確かにサーファーは車で来て、コンビニでおにぎり買って、お土産も買わずに帰ってしまいますから、経済効果がないというのもよくわかります。
ただ、それは、裏を返せば、自分たちの旧態依然とした商売のやり方では、新しいお客様を取り込めていないということなのです。
その商店主の方には申し上げましたが、目の前にいるお客様を自分の商売に取り込めるようにすることは、ご自身のお仕事なのです。
今、いすみ鉄道をお目当てにいらしていただくお客様は、渓谷を見に来たわけでもなく、お城や城下町でもなく、お寺でも、海水浴に来た人たちでもありません。
ムーミン列車の若い女性、小さな子供を連れた家族連れ、汽車旅を楽しむ鉄道ファン、撮影専門の鉄道ファンなど、今まで見たこともなかった方々がいらしているのです。
そういう、今まで来ることがなかった、全く新しいタイプのお客様がたくさんいらしていただくようになったのですから、迎える側も、新しいお客様に合わせたおもてなしをしなければ、海辺の商店主のように 「いすみ鉄道のお客は経済効果がないからなあ」ということになりかねません。
ゴールデンウィーク中、いすみ鉄道の売店は多い日で1日100万円近く売り上げる日もありました。
鉄道運賃収入ではなく、大原、大多喜、国吉の駅構内の売店3店舗で1日100万円ですよ。
私は、こういう観光のお客様が使われていくお金を、いすみ鉄道が独り占めするのではなく、少しでも地域でご商売をされていらっしゃる皆様方が、一緒になってご自身のビジネスに取り入れて行くことが、ローカル線での鉄道と地域との関係だと考えています。
いすみ鉄道を応援してくれている商店主の方が私の顔を見るたびに
「社長は、就任した時にこの沿線にはたくさんお金が落ちている、と言われましたね。 今、私はいすみ鉄道がやってきたことを見て、本当にお金が落ちているということがわかりました。」
そうおっしゃられます。
そうです。
私が皆様方に「お金が落ちている」ということをお伝えしているわけですから、皆様方も、ぜひ一緒にそのお金を拾っていただいて、地域の経済に役立てていただきたいと、本当にそう思います。
私は、地元の人に、「いすみ鉄道に乗ってください。」ということは1回も言ったことはありません。
すでに車社会が浸透している中で、無理して乗ってもらうことは合理的ではありません。
私がいつも申し上げているのは、いすみ鉄道がお客様を運んできますから、駅を降りたお客様を、おもてなしをして、自分たちのビジネスにつなげてください。
そう申し上げています。
そうやっていすみ鉄道を「利用する」ことも、乗る以外にローカル線を使う一つの手であるというのが私の考えなのです。
今、いすみ鉄道が連れてくるお客様は、お城でも、お寺でも、温泉でも、海でもないお客様ですから、皆様方も今までのスタイルを変えることを求められるかもしれません。
でも、それが時代の流れであり、今までも、これからも、時代の流れにうまく合わせることができた商売だけが生き残れるということは、自然の摂理ですから、その点だけは皆様方のフレキシビリティーにかかっているのですが。
あす、あさってと、週末のキハ52観光列車が走ります。
また、たくさんのお客様がいらっしゃいます。
どうぞ、いらしていただいたお客様に、少しでも楽しんでいただけるような仕組みづくりをしていただきたいと思います。
そうすることで、地域の中に経済を呼び込むことができれば、結果として活性化といえるのだと思います。
長くなりましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございました。