おめでとう 東京!

7年後の2020年に東京でオリンピックが開催されることになりました。
皆さん、おめでとうございます。
4年前には盛り上がらなかった国民の機運が、今回は大きく盛り上がり、招致成功のきっかけになったと思います。
また、アスリートの皆様や政治家の皆様方が、一生懸命英語で意思を伝える努力をされたことにも感動を覚えました。
東京でのオリンピック開催は1964年ですから、2020年には56年ぶりにオリンピックが東京にやってくることになります。
東京生まれ、東京育ちの私は、とてもうれしい思いでいっぱいです。
1964年の東京オリンピックの時に4歳だった私は、アベベがスタスタ走っているのを近所の蕎麦屋のテレビで見ていた記憶がうっすらと残っていますが、56年ぶりというのは、その私が60歳になるわけですから、実に長いインターバルのような気がします。
2020年のオリンピックを私がこの目で見られるかどうかは神のみぞ知ることですが、東京、札幌、長野、そして東京と、人生で4回もオリンピックが自国で行われるのは、良い時代に生きているのかもしれません。
さて、オリンピック開催と聞いて、ひねくれ者の私としては、心の中で万歳している反面、両手放しで喜んではいられない気分でもあります。
それは、以前の会社に勤めていた時にロンドンオリンピックが決まってから、オリンピックに向けてイギリスがどのように変わっていったかということを聞いて、そして自分でも体験して知っているからです。
その中で一番心配なのは物価上昇です。
建設需要が高まるなど、景気が良くなる期待があちらこちらで聞かれますが、オリンピックが開催されることが決まってから、ロンドンでは公共料金が倍になったり、都心部への自動車の乗り入れ規制が行われたり(時間帯別通行料金の導入)、さまざまな物価の上昇が続きました。
日本では消費税が5%から8%、そして10%になるということで、いろいろ議論されていますが、イギリスでは私が勤めていた2009年の時点での消費税(付加価値税)は17.5%。この税率だけでもすごいのに、オリンピック開催の前年には20%になりました。
例えば首都高速道路など、老朽化対策が緊急の課題になっていますが、オリンピックを契機に一気に若返りを図るきっかけにはなるかもしれませんが、その分の負担は何らかの形でユーザーに返ってくるわけで、そういう値上げが、今はなかなか言い出しづらい雰囲気にあると思いますが、オリンピックをきっかけに、値上げを切り出しやすくなりますから、そういう流れに向かうことは、十分に考えられます。
景気を良くするということは、すなわちインフレに向かうということですから、それをどうやって国民が負担していくかという問題であるわけですが、できるだけ国民に負担感を感じさせないのがオリンピックなのかもしれません。
次に心配なのが、オリンピック景気の行く末です。
昔から名経営者と言われてきた人たちが口を酸っぱくして言われてきたことではありますが、オリンピックのような一過性の行事やブームに大きな設備投資をしてはいけないということです。
東京オリンピックが日本に高度経済成長をもたらすきっかけになったのは明らかですが、それは、当時、日本という国がまだ戦争からの復興途中であって、いろいろなものをつくならなければなりませんでしたから、オリンピックを契機に新幹線や、高速道路、空港などが整備されたことが、その後の国の発展につながったわけですし、札幌オリンピックの時にも市内交通の整備として地下鉄が建設され、雪国でも定時性を確保できる公共交通機関が登場しました。
そういう、オリンピックが終了した後でもその後の経済に有効利用できるものであれば、これは一過性の行事に対する設備投資とは言えないと思いますが、例えばオリンピック客を当て込んだホテル建設など、その後の需要を考えると賢明ではないようなことが行われるのもオリンピック景気なわけです。
そのようにいろいろな心配事が、「オリンピック開催」と聞いただけで、ひねくれ者の私の脳裏をよぎるわけではありますが、人々の気持ちに水を差すことはよくありませんので、良い面を見つけていく方が得策だと思います。
私は子供でしたので記憶がありませんが、ある人の言葉を借りると、昔の日本人は時間にルーズでマナー悪く、例えば整列乗車などもできなかったのが、オリンピックを契機に今のように時間に性格でマナーの良い国民になったようです。
今の日本人は、何でもネガティブに考える人が多く(私もそうですね。)、「そんなことをやって、もし何かあったらどうするんだ。」と、何もやらない方を選択することが安全だという雰囲気に満ちていて、そういう考え方がすべての閉塞感の原因の一つだと思いますが、そういう今の日本人に足りない前向きな考え方を学習するのも次のオリンピックで学習したいことだと思います。
総理大臣も東京都知事も、今回の招致活動で見事なリーダーシップを発揮されていますが、ああいうリーダーの行いを、若い人たちが見て、「何もしないのが自分の身にとって安全である。」という大人たちには早々に引退していただいて、「何もしないことは世の中にとって罪である。」という考え方の社会を作り上げていってくれれば、この国の突破口が見つかるのではないか。オリンピック招致運動を見ていてそう思ったのであります。
それは、何も東京だけのことではなくて、日本全国、津々浦々に存在する田舎の町でも同じことが言えます。
その地域の将来に対して何ら具体的なビジョンを示せないようなリーダーたちが、既得権益の上にアグラをかいているような、そんな地域には未来はないわけですから、オリンピックを契機に新しい日本人に活躍していただけるような土壌ができたら良いなあと考えます。
皆様の地域、皆様の会社には、適当な理由を付けて何もしないことを正当化している人はいませんか。
そういう人には、できるだけ早めに引退していただく。
オリンピックを迎えるということは、そういうことなのです。