3800円の朝ごはん

好むと好まざるとにかかわらず、世の中にはランクというものがあります。

ホテルもそうですね。

一流ホテルからビジネスホテルまで。
中にはビジネスホテルなのに「リゾート」とか言ってるインチキ臭いところもありますが、じゃあ、何が一流かというと、これまた人の価値観次第ですから私がどうのこうのいう話ではありません。
ビジネスホテルに毛が生えた程度なのにリゾートと言っても、それはそのホテルに宿泊するお客様がそう思えばそれでよいのです。

では、皆様方に質問です。
一流ホテルの一番安い部屋と、ビジネスホテル級のホテルの一番高い部屋が同じ料金で泊まれるとしたら、あなたならどちらに泊まりますか?

高級感漂う一流ホテルの一番安い部屋に予約を入れて、フロントでチェックインするときになんとなく気が引けるという人もいるでしょう。
フロントのスタッフに「あぁ、このお客様は一番安い部屋の人ね。」
そう思われるかもしれません。

一方、安ホテルの最高料金の部屋であれば、フロントでチェックインするときに、「俺は一番いい部屋に泊まってる客だぞ。」と胸を張れるかもしれませんね。

だったら、安いホテルで一番高い部屋に泊まる方がいいな。

そう思う人もいるかもしれませんね。

でも、私はそうは思いません。

高級ホテルの一番安い部屋と、ビジネスホテルの一番高い部屋が同じ値段だったら、高級ホテルの一番安い部屋に泊まります。
なぜなら、入口からロビー、フロント、エレベーター、レストランなど、お部屋以外の施設が安い部屋でも同じように使えるからです。
もちろんスタッフの対応も一流ホテルとビジネスホテルでは違いますからね。

同様に、大手航空会社とLCCが同じ値段だったら、大手航空会社を選びます。
なぜなら、セキュリティゲート、待合室、搭乗口など、LCCとは分けられていて、大手航空会社であれば施設面でも有利だと考えるからです。

ということで、本日の表題のお話。
3800円の朝ごはんですが、実は昨日泊まったホテルの今朝のごはんは3800円でした。

朝ごはんは基本的にはどこで食べても内容的には変わりません。
私は和食派ですから、焼き魚に納豆、海苔、卵焼きにお新香があれば満足です。

私は年間、おそらく50泊以上いろいろなホテルに宿泊しますが、朝ごはんはたいてい同じようなもので、高級ホテルになると卵が烏骨鶏だったり、シェフが目の前でオムレツを焼いてくれたりするぐらいで、別に大した違いはありません。
(シェフが目の前でオムレツを焼いてくれるのが凄いという方を否定はしません。ロンドンのホテルだとアラブ人かインド人が焼いてくれますよね。)

正直に申し上げますが、今朝のホテルの朝ごはんも全く大したことはなくて、普通の人が見たら「えっ? これで3800円取るの?」と思うほどです。
私も、写真を撮るのも忘れるほどの内容でした。

つまり、一流ホテルでは一流ホテルだけあって、朝ごはんのお値段も一流なんです。
安いお部屋に泊まったとしてもね。

まぁ、実際に自分のお財布から3800円払ったわけではありませんので大した内容じゃなくても苛立つこともありませんが、では、私がなぜ一流ホテルに宿泊して3800円の朝ごはんを食べたのかというと、その理由はこちらです。

ホテルのレストランから見た景色です。
私はこの景色が見たかったんです。

この景色を見るために3800円を払う価値があると思ったのです。

ではなぜ、この景色が見たかったかというと、お気づきになられる方もいらっしゃると思います。
そう、この景色はこの作品と同じ視点なんです。


東山魁夷 「年暮る」

魁夷が見たのはこの景色なんだろうなあ。

そんな風に感慨深く思いを馳せることができるなら、3800円払う価値があると独断と偏見でそう思います。

だからと言って、正規のお値段で泊まることは致しませんが、今回は特別にご用意いただきましたので、ありがたく宿泊させていただきました。

京都へ来たらここに泊まる。

何年かに一度ですが、私にとってそういう場所があってもいいのではないかと自分で思います。

また、次からはビジネスホテルですが。

ゆったりとしたホテルのロビーには、日本人はほとんど見当たりませんでした。