石の気持ち

レールパークの入場券は大人一人1000円。
物の価値というのは人によって違いますから、ちょっと高いかなあと思う人もいるかと思いますが、実は500円分のエンジョイチケットというのが付いていて、ゲームをやったり、体験をしたりすることができます。
その体験の中で人気なのが線路の石の缶詰づくり。
昨年の発売以来、線路の石の缶詰は大人気で、8000個ぐらいは売れていると思いますが、レールパークでも1日50名様以上が、この線路の石の缶詰づくりを体験してくれています。つまり、1日50個、500円で線路の石が皆様のご家庭へと旅立っているのです。

1日50個、1週間に350個のペースで、線路の石が必要になるということで、線路の石を関山駅に採取に行ったお話は先日いたしましたが、それでも足りそうにないので、お天気の良い日を見計らって2回目の採取に出かけました。

今回は営業の山ちゃんがお供してくれました。

現場に到着して山ちゃんが開口一番、
「社長、どんな石が良いでしょうか?」

そうだな、
と私。

まず、缶に入る大きさの石であることが大前提。
山ちゃんは缶詰作りを手伝ってくれていますから、大きさは分かりますよね。

次に大事なのは丸い玉砂利であること。
玉砂利は昭和30年代以前に敷き詰められた石で、それ以降は砕石になっていますから、玉砂利はすでに半世紀以上も鉄路の安全を支えてきているありがたい石ですからそこに価値がある。

そして、一番大事なのは赤い石。
昔は貨物列車も旅客列車も長編成で、駅で止まるときにブレーキからわずかに金属片が飛び散っていました。ごくごく微量の、ほんのわずかなブレーキの金属片が線路の石の上に飛び散って、それが長年の風雪で錆びているから、線路の赤い石はそれだけの歴史がある。
だから、そういう石であれば、半世紀以上も鉄路の安全を支えてきていることが一目見ただけでわかるのです。

そういうと、山ちゃんは黙々と石を拾い始めました。

「玉砂利って、河原の石ですよね。」
と、山ちゃん。

そう、昔は河原の石を使っていたようですが、昭和30年代に入り、高度経済成長時代になって、河原の石もそんなに簡単に使えなくなったのでしょう。だから砕石に変わったと以前に線路のプロから聞いたことがあります。

「河原の石だから、丸いんですよね。」

いいこと言うね、山ちゃん。
河原の石は山奥から何百年、いや、何千年もかかって、大雨が降るたびにゴロゴロと流されて、角が取れて、丸くなって、下流に流れ着いたのです。
その河原の石が、線路の石となって、何十年、もしかしたら百年ぐらいこの場所で鉄路を支えてきているのです。

石はもともと何億年もかかって堆積したり地中から吹き出したりしているわけですから、つまりはココにある石たちは地球の壮大な歴史を背負ってる石たちであって、今日、山ちゃんがココに来て、石を拾うことで、缶詰になって、それぞれ大切にしてくれる人の元へ行くことができるのです。

山ちゃんに拾ってもらうことで、何億年前からの石が日の目を見ることができる。
でも、すべての石を拾うわけではありません。
ちょうどいい大きさで、山ちゃんのお目にかなった石だけが日の目を見るのです。

隣の石は拾ってもらえたけど、自分は拾ってもらえなかった。
そういう石もありますよね。
拾ってもらえる石の方がはるかに少ないわけですからね。

何億年かかって丸くなって、線路の石になって数十年。
山ちゃんに拾ってもらった石は「ありがとう。」って言うだろうね。
拾ってもらえなかった石は、拾ってもらった石に「おめでとう。がんばれよ。」って言うかな。
「缶詰になって、しっかり可愛がってもらえよ。」って。

何しろ、何億年かかかって石になって、それから何千年も河原をゴロゴロ下ってきたのですから。そして線路の石になって数十年。

拾ってもらえなかった石は、多分もうチャンスはない。
これから何十年、何百年も、ただただじっと、無口にそこにたたずむしかないんだよね。

山ちゃんのお目に止まらずに、山ちゃんが目の前を素通りしてしまった石は、拾ってもらった石に「おめでとう」とエールを送りながら、自分はひっそりと、また深い眠りにつくのです。

山ちゃんは、石たちにとってみれば何千年に一度の待ちに待ったチャンスを運んできているんだよ。
石たちにとってみれば、山ちゃんは神様のような存在だね。
いい仕事してるんだよね。

「社長、責任重大ですね。慎重に選んであげないと。」

そうだ、山ちゃん。
それが仕事というものだ。

石が問いかけてくるだろう。
「俺はここにいるよ。」って。

「はい、なんだか、聞こえてくるようです。」

山ちゃん、石の気持ちがわかるようになれば、男の仕事としては最高だよ。
商品というのはそうやって作るものなんだ。
心を込めて、石の気持ちになって作れば、商品に愛着が持てるだろう。
それがわかれば君は出世するぞ。
社長の私が言うのだから間違いない。

山ちゃん、いい仕事したね。

そして、山ちゃんに選んでもらった石たちも輝いて見えるだろう。
この石たちが、これからいい仕事をしてくれるのだ。

山ちゃん、こんな仕事に付き合ってくれてありがとうね。

とりあえずご褒美だ。

明日も、明後日も、頑張ってくれ。