車内販売について考える その2

特急列車の車内販売は、商品価値が割高で、品ぞろえが少なく、販売としての魅力に欠けます。

だとしたら、お客様は列車に乗る以前に、いや、改札口に入る以前に、コンビニなどで車内用の飲食物を仕入れて事前準備して乗る方がはるかに利にかなっています。

だから、利用者は自衛手段として鉄道で旅行する場合は、自分で食料を調達して列車に乗るようになるわけで、特に頻繁に利用する出張のサラリーマンなどは、勝手知ったるJRの特急列車に乗る時には、そうすることが当たり前になっています。

 

では、年末年始やゴールデンウィークなど、非日常として特急列車を利用する旅行者はどうでしょうか。

昔から鉄道旅行といえば車内販売やホームでの駅弁売りが当たり前でしたから、めったに特急列車に乗らない彼らの多くは、特急列車に乗れば車内販売が来ると思っています。まして3時間も4時間も乗る列車で、お昼の時間帯や夕方の食事時間帯を走る特急列車であれば、当然、駅弁も車内で買えると思っているし、ビールだって、駅で買って乗るとさめてしまうけど、車内販売で買えば冷えたのが買える。そう思って特急列車に乗るわけです。

でもって、その列車の中では車内販売は乗っていませんから、結果として飲まず食わずの旅を強いられる飢餓状態が続くことになります。

これって、お客様にとって見たら最悪の移動手段ですよね。

 

新幹線の「こだま」ならば、途中駅で5分とか7分とかの停車があって、駅のホームでその停車中に駅弁や飲み物を仕入れることができるかもしれませんが、在来線の特急列車といえば、そんな時間的余裕はありません。

乗り込んだ列車の発車間際になって、「車内販売はありません。」と言われても、準備するのはお客様の自己責任なんでしょうか。

列車によっては発車した後の車内アナウンスで「この列車には車内販売はございません。どうぞご了承ください。」というのまであって、お客様はどう了承しろというのかと逆に聞きたくなる時もあるほどです。

 

昨年の夏、高山へ出かけたときのこと。私はどうしてもその日のうちに東京へ戻らなければなりませんでしたので、高山を18時45分に出る特急「ひだ」で名古屋へ向かいました。その日の最終の特急です。

18時台に出発して、名古屋に着くのは21時過ぎ。つまり夕食の時間帯です。でも、この会社の特急列車には車内販売が乗っていないのは知っていましたので、私は高山駅で乗車前に売店をのぞきました。そして、驚いたんです。

何に驚いたかって、売店はすでに終了していて、駅弁を仕入れることができなかったのです。

夕食時間帯の特急列車の車内に車内販売がない。でも、駅の売店も終わっている。

これではお客様はどうしたらよいのでしょうか。

幸い、私は、仕事先のお客様が、そういうJRの食糧事情を知っていましたので、別れ際にお料理屋さんに注文したお弁当を持たせてくれましたから飢餓難民にはなりませんでしたが、何も知らずに改札口を通っていたとしたら、3時間以上ひもじい思いをするところでした。

そして乗り込んだ「ひだ」で座った座席はグリーン車。

そうなんです。その特急列車にはちゃんとグリーン車が付いている。つまり、格式のある列車なんです。そして、その格式ある列車に何もサービスを提供する設備や人員がいない。年配の車掌が車内をまわってきて、申し訳なさそうに謝って回っているのがJRの特急列車の現状なんですね。

でもって、停車駅での時間はどこも1分ぐらいで、自動販売機で飲み物すら調達できない。でも、その割には関係ないところで列車交換のために5分止まりますなんてやっていて、ドアも開けない。

車内販売を乗せないのなら、どの列車も途中の決められた駅で数分間停車して、地元の事業者の協力を得ながら飲み物や食べ物を買えるようにするのがお客様への最低限のサービスだと思うのですが、「自分たちの敷地内で許可なく商売をすることはまかりならん。」という会社ですから、地元の人が鉄道会社に相談する窓口すらはっきりしていないのです。

 

で、私の頭に一つの疑問が浮かんだのです。

「特急列車って何だろうか?」「グリーン車って何だろうか?」ということです。

この間も書きましたが、特急列車に乗車するためには乗車券のほかに特急券が必要です。

グリーン車に乗るためにはグリーン券が必要です。

本来であれば、目的地へ向かうために必要なのは乗車券だけなんですが、昔と違って今の時代は普通列車に乗りたくても普通列車では現実的に無理がありますから特急列車に乗る。すると、「速達料金」として特急料金が加算される。

では、特急列車って、本当に速いのでしょうか。

JRの管理下に於いては、普通列車に比べれば確かに速いかもしれません。

でも、お客様にとっては、交通手段はJRだけではありませんよね。

高速バスだって、飛行機だってあるわけで、飛行機が速いのはもちろんですが、区間によっては高速バスの方がJRの特急列車より速いところも多い。百年も前に作られたくねくね曲がった線路よりも、山をトンネルでぶち抜いた高速道路の方がどう考えたって速いけど、鉄道はそのくねくね曲がった線路の距離で運賃計算するからお客様から見たら理不尽に高くなる。

だとすればその高い乗車券にプラスして払う特急料金って、お客様にとっては意味がないお金を払わされていることになると私は思います。

 

グリーン料金も同じです。

座席がゆったりしている「特別車両」というのがJRの考え方ですが、本当に座席がゆったりしているだけの座席料金としてならかなり割高です。「特別車両」というのは何かといえば、特別なサービスがある車両と考えるのが一般的なお客様です。簡単に言えば、お姉さんがおしぼりやコーヒーを持ってきてくれたり、食事の注文を聞いてくれたり。こういうホスピタリティーがあるのが特別車両だと考えているのがほとんどの利用者ではないでしょうか。

ところがJRはそういうホスピタリティーを全部やめてしまって、グリーン料金だけはそのままにしているわけで、つまり、その車両に一歩でも立ち入ったら、サービスは何もなくてもグリーン料金が必要なのが特別車両であって、座席のゆったり感だけがあくまでも普通車両と比べたらというだけの点での特別サービスなのです。でも、その座席に何か特別な設備があるわけではなくて、モニターもなければwifiもない。擦り切れたカバーにくたびれた足載せと、普通車よりも角度が大きいだけのリクライニングだけの座席の料金なんですね。

 

こういうことが「サービス」として長年行われてきているのがJRの特急列車であり、簡単に言えば、高いお金を払って、苦痛を味わいながら、わざわざ遠回りをして、長時間かけて、目的地へ行くだけのためにただ乗っているだけの移動手段、ということなのです。

それで、その結果として利用客が減って、採算が合わないから車内販売をやめるし、アテンダントも乗せない。

というデフレスパイラルに入っているのは誰の目にも明らかなんですが、その原因はすべてお客様の責任ですよ。と言っているわけで、これが、JRが車内販売をやめますという諸悪の根源の考え方なのであります。

 

(つづく)