現代版航空旅行用心集 「快適な空の旅」

航空会社の宣伝を見ていると、昔からよく「快適な空の旅」という言葉が出てきます。
皆さんはこの「快適な空の旅」という言葉から何を想像されますでしょうか。
ファーストクラスやビジネスクラスのゆったりとした座席で豪華な機内食をいただくのが快適という人もいるかもしれません。そういう上級クラスをご利用される方の場合、出発前のラウンジでウエルカムドリンクをいただくところから始まりますから、なおさらでしょうね。
エコノミークラスでも、空港に到着して手続きを終わった後、滑走路を見ながら出発前にゲートの近くでコーヒーを一杯飲むことが幸福感だと思われる方もいらっしゃるでしょう。
個人個人で求めるものが違いますから、快適さというものはいちがいに定義できるものではないと思います。
私は年間50回以上も飛行機に乗る生活を30年近く続けてきていますから、飛行場へはだいたいいつもぎりぎりに到着するようにしてますし、上級クラスに乗る場合でもラウンジでゆったりとくつろぐことはほとんどありません。
そういう私にとっての快適な空の旅ということで言えば、私は「隣の座席に誰もいないこと。」が最大の快適さだと考えています。
飛行機の座席は新幹線に比べれば窮屈です。飛行機のエコノミー座席と新幹線の普通席とを比較した場合ですが、飛行機の方が前の座席との間隔が明らかに狭い。最近の日本の航空会社は大手と言えどもわざと座席を狭くしていて、ボーイング社が機体設計の時点で横9席並びの機体を設計したにもかかわらず、国内線だからという理由で1席増やして横10席並びにしているわけで、座席の間隔だけでなく、横幅も新幹線に比べてはるかに窮屈で、これは日本人の体格向上とは逆の動きをしているのです。LCCならまだしも、大手航空会社がこのようなことをしているというのは、自らプロダクツの価値を下げていると思いますし、そういう会社が自社の宣伝で「快適な空の旅」をうたい文句にするということは、これは詐欺ではないかと思えるほど憤りを感じているわけですが、相手がそう出るのであれば、こちらとしても対策を考えなければなりません。
つまり、自衛手段なのですが、私はできるだけ隣に人が来ない席を探すことにしています。
人は人生の様々な時点でその時々の嗜好や習性が変わります。
航空旅行で言えば、20代のうちはいつかビジネスクラスやファーストクラスに乗ってみたいと思う。
30代になると、それがいよいよ手が届くようになって、ありがたさを実感する。
40代になると、人によってはビジネスクラスやファーストクラスが当たり前になる人も出てくる。
そして50代になると、何とかビジネスやファーストに乗れる状態、つまり現在の地位を維持しようと考える。
だいたいこんなものだと思いますが、30代40代にビジネス、ファーストに当たり前のように乗っていた人たちも50代というのは、次長さんでも部長さんでも会社から「そろそろお暇(いとま)を」と言われる年代ですから、「上級クラスに乗るのが当たり前だ」と思っている自分の気持ちを、できるだけ早い段階で、エコノミークラスの生活に戻していく必要があります。
私はもちろん経費でそんなクラスに乗れませんから、国内線のゆったり座席を含めて基本的には自分のポケットマネーで上級クラスに乗っていますし、世界中でどこで切符を買ったら上のクラスに安く潜り込めるか、さんざん研究して、そういう切符の買い方をしてきたのですが、そんな私も、50を半ば過ぎると原点回帰というか、航空会社のいろいろなカラクリを知っているからでしょうか、「エコノミー座席で十分だ。」と思うようになるわけです。

さて、快適な空の旅をするための自衛手段ですが、コツをお教えいたしましょう。
飛行機を予約するときは、航空会社のホームページからこうやって事前座席指定をすることはもちろんなんですが、この事前座席指定というヤツは実はカラクリがあって、予約した段階でその便の全部の座席を一般のお客様に開放しているわけではなくて、航空会社で押さえている座席がいくつかあるのです。電車の座席指定で言ったら「マルスに入っていない座席」と言えば分りやすいでしょう。
それは、例えば介護が必要な方が出てきた場合の座席だったりするわけで、空港で調整するためにある程度座席を確保しているわけで、そういう座席は、実は出発24時間前になると、解放されてシステムに上がってくるんですね。だから、事前座席指定をしていたとしても、出発前日や出発当日にもう一度インターネットで自分が搭乗する便の座席を確認すると、意外に希望する席が取れたりすることがあるのです。
予約のサイトで空席が多い便であれば、出発当日に隣が誰もいない窓側の座席に変更しておけば、3人掛けとして、通路側には別の人が来ることは多いですが、隣の真ん中の座席には誰もいないことがほとんどです。
もちろん、週末の伊丹―羽田やシーズン中の沖縄便のように満席の飛行機では隣に人がいない座席を確保することは無理ですが、それでも、自分なりに快適な座席を選択できるということで、ある程度納得できるところがありますよね。
ところが新幹線ではこれができない。ネット予約で購入時にシートマップから自分が希望する席を選ぶことはできるものの、その後、気が変わっても座席変更できない。(できるかもしれないけど、私の会員カードではできないのか、それともやり方を知らないのか。)
だから、たぶん誰も来ないだろうと思って3人掛けの窓側をアサインしておいても、「はやぶさ」や「のぞみ」では大抵隣に誰か来る。私は運がないのか、そういう時に来る人はいつも図体のでかいお兄ちゃんであって、可愛い子ちゃんには巡り会わないから、窮屈な座席で肩をすぼめながらの旅となるのですが、それでも飛行機なら45分か1時間我慢すればよいし、離陸着陸も楽しいけど、新幹線だと2時間とか3時間、あるいはそれ以上ですから、「なんだかな~」なわけです。
国際線の場合は、SEATGURUというサイトがあって、そこで自分が乗る航空会社の乗る便の機種を選択すれば、どういう座席なのか詳細にわかりますから、そこでチェックするのも一つの方法ですし、ネット予約の時にシートチャートを表示して、自分が乗る飛行機の空席状況を確認してから予約することも可能です。
英語のサイトですが、飛行機に興味のある方であれば問題なく理解できると思いますので、一度ご覧になってみてください。

▲わが町佐倉の印旛沼を見ながら成田空港から離陸上昇する。向こうに光は東京湾。
こういう景色が見られるのも快適な空の旅ならではです。

▲ガラガラのエコノミー座席。
こういう飛行機に乗ると、「ビジネスクラスにしなくて良かった。」と思いますね。
最近では1000円払ってゆったりしたお座席へという飛行機がありますが、1000円という値段からか、だいたいいつもそのゆったり座席から埋まっていく傾向にあります。つまり、後ろの座席はいくらでも空席があるのに、前の方のゆったり座席が満席ですから、私にしてみたら全然ゆったりしていない。
だから、エコノミークラスの普通座席で十分だということになります。
それともう一つ、奥の手ですが、私の場合は、友達の空港職員の女性に前もって連絡しておいて、いすみ鉄道もなかをお土産に持っていくという方法があります。
そうするとチェックインカウンターで美女が笑顔で待っているんです。
「鳥さん、良い座席用意しておきましたよ。」
そう言われて機内に入ると、だいたい、いつも非常口横の座席。
エコノミークラスでも足元が広くてゆったりできる快適な座席と言われているようですが、実はこの座席はひじ掛けの中にテーブルが格納されているために座面が狭く、引き出したテーブルがお腹につっかえるため、私にとっては快適な座席じゃないんですね。
ということで、快適な空の旅というのは、やはり個人個人、人それぞれさまざまということになりますので、自分で対策を練って自衛していただく以外に方法はないんですよね。
ひとつだけ言えることは、今の時代は、個人が航空会社や鉄道会社に対して、受け身じゃなくて積極的にサービスを選択できる時代になったということではないでしょうか。
だとすると、輸送事業者としても、うかうかしてられない時代だということなのです。