自分の身は自分で守れ、は可能か?

ゴールデンウィークが始まったと思ったら、新幹線が止まる事態が発生しました。
日中時間帯に5時間近くにわたって止まったのですから、ほぼ半日動かなかったようなものですね。子どもやお年寄りなどの家族連れで賑わう電車が、天候などある程度予測できる事態ならまだしも、何の前触れもなく突然停車して動かなくなってしまうのですから、お客様としては対応のしようがありません。
私は、いつ何時電車が止まっても良いように、新幹線に乗るときなどはある程度水や食料を確保して乗ることにしていますが、これは航空会社に勤務していた時の知恵であり、自分自身のことは基本的には自分でやる覚悟がないと、こういう時は会社を恨んでも、目の前にいる職員に食って掛かっても、どうにもならないということを知っているからです。
しかし、今回に限らず新幹線や電車のストップ劇を見ていて思うのは、昔と違って、今のシステムでは、お客様ご自身では対応できなくなっているということを感じます。今回のように送電が停止すると、その瞬間から空調は停止してしまいます。また、トイレなどの車内設備も全く利用できなくなります。新幹線や最近の電車は、基本的にはこういう事態を想定していないようで、ホームを外れたり駅間で停車した電車から乗客を降ろして一番近い駅などへ移動してもらう以外に方法がないようです。
今回は、春ですから外気温がある程度ありましたし、外のお天気も良かったから何とかなりましたが、吹雪だったり、台風だったりした場合には列車から降りて避難させることは困難でしょうし、ディーゼルカーと違って自車に発電装置を搭載していない電車なら、空調がきかない車内は灼熱地獄か極寒地獄になるでしょうから、生存そのものが脅かされる事態になります。
昔のことを言うと笑われるかもしれませんが、昔の列車は窓が開きましたから、電気が止まったとしても対して大きな問題にはなりませんでしたし、SLやディーゼルカーであれば、客車への暖房供給は絶やすことなく続けられましたから、大雪で足止めを食らっても、生存が脅かされるなどということもありませんでした。
新幹線に窓を開けろというつもりはありませんが、軽量化、高速化に突き進んできた鉄道技術が、実は何かあった時に対応できないということは、本当に人間は進化してきたのかどうか怪しい気がします。
今回の新幹線ストップ事件で私はもう一つ気になることがあります。
それは、並行して走る東北本線が代替輸送機関として全く機能しないということです。新幹線ができると在来線は不要のものになる。だから地元に押し付けるという構造がこの国にはありますが、これはインフラの大いなる無駄遣いといいますか、まったく有効活用できていないということだと私は考えています。
複線電化で最良のコンディションの鉄道幹線を、無用の長物にしてしまうような国は、本当に豊かな国なのでしょうか。
お隣の台湾では、新幹線と在来線が並行して走っていて、新幹線開業後もその在来線に多くの特急、急行列車があって、たくさんのお客様で賑わっています。もし、台湾で新幹線が止まってしまっても、在来線が混雑することにはなりますが、輸送という基本的な役割は確保されています。このようなバックアップ機能が全くないというか、鉄道会社も国家機関もバックアップを想定していないような国は、総理大臣が外国からの侵略に備えた安全保障を声高に叫ぶ以前に、足元がぐらついているように思います。
また、利用者目線で見れば、新幹線は高くて乗れないという人もいるわけで、そういう利用者は現状では高速バスかLCCへ逃げてしまっていますが、たとえ時間がかかっても、高速バス並みの金額で乗り換えなしで移動できる在来線の特急列車が走っていれば、鉄道としてお客様を囲い込みできるはずなのに、それをやらないというのは、将来に向けて不安要素が残るわけです。
何しろ、一度飛行機の便利さを味わってしまったり、バスの格安さを知ってしまうと、そういうお客様は鉄道が第一選択肢でなくなるわけですから、新幹線で目先の利益を上げることに集中しているようでは、将来が危ういということなのです。
都市間輸送の主役が新幹線であるというためには、日常から鉄道に親しんでいただくことの上に成り立つわけで、ふだんから車やバスを利用している人たちは、都市間輸送に新幹線を利用しようという発想はなくなります。現に九州や北海道などの地方では、ふだん車で移動している人たちは、長距離都市間輸送では高速バスを選択していますし、東京や大阪への移動は飛行機というのが当たり前になっていて、その地域の事情を知らない不慣れな旅行者だけが特急列車に乗っているのです。
さて、では、飛行機はどうなのでしょうか、という問題が残ります。
ゴールデンウィークですから、長距離を移動するのはほとんど飛行機で、びゅーんと飛んで目的地に到着します。国内線の場合は、だいたい9割以上の人が、直行便を利用していて、飛行機を2つ以上乗り継いで旅行する人は、沖縄などの離島を除くと一般的ではありません。これは、航空利用者というのは、「飛行機が飛んでいる所を旅行の目的地とする」傾向があるからですが、あくまで国内線の場合であって、国際線となると飛行機を乗り継ぐことが一般的になってきます。
ハワイやグアムであれば一直線ですが、ヨーロッパや東南アジア、アメリカなどへは飛行機を乗り継ぐことが多くなります。そしてそういう乗継をする場合にトラブルに巻き込まれやすくなるのが飛行機を使った旅行です。
ということで、ゴールデンウィークでこれから飛行機を使って乗り継ぎ旅行をしようという皆様へのアドバイスです。
乗継にはMCTといって各空港ごとに最少乗継時間が設定されています。
これは、空港のターミナル配置や、同じ会社どうしか、別の会社への乗継かによって変わってくるのですが、旅行会社に航空券を頼んだり、自分でサイトを調べて格安チケットを予約したりするときに注意が必要なのがこのMCT(Minimum Connecting Time)です。なぜならばコンピューターが乗継便として選択するのは、通常このMCTぎりぎりの最少時間での接続便を予約する傾向があって、もし、到着便が遅れた場合、予定されていた接続便に間に合わなくなって、予定が狂ってしまうことがあるからです。
そして、そういう時って、ほとんどの場合、預けた荷物が予定通り目的地に到着しないのです。
例えばMCTが60分の空港で乗り継ぎを予定していたとして、到着便が15分遅れれば、乗継のための時間が45分しかなくなります。その45分間にセキュリティーを通過して、次の便のゲートへ向かうわけですが、最近では飛行機は10分前にドアが閉まります。ということは35分しか時間がありませんから、お客様はほとんど駆け足です。人間が走ってやっと間に合う乗継便に、荷物など間に合うはずがありませんから、当然日本で預けた荷物は同じ便には搭載されず、良くて次の便、次の便がなければ翌日便と、自分より荷物が遅れて届くことになるわけです。
これってごく一般的に発生することなのですが、日本人は最初の到着地に1泊しただけで次の日には別の目的地へ向かう人が多いですから、翌日届けられる荷物を受け取ることができない。人によっては日本に帰ってくるまで成田や羽田で預けた自分の荷物を受け取れないなんてことも往々にしてあるんです。
こういう時のサバイバル方法は2つあって、一番大事なのがこういう予約の取り方はしないことと、最初の滞在地では空港がある都市に必ず2泊すること。これでほとんどのトラブルが未然に防げるんですが、すでに予約を取って行程を作ってしまった人は、機内に最低限の着替えなどを準備しておくことと、手荷物未着の場合に有効な保険に入っておくこと。
とりあえず、これだけ準備しておくだけでも、いざという時のために役に立つと思います。
LCCの時代になって、最近の旅行者は「自分のことは自分でする。」という方が多くなってきていますが、いろいろなトラブルに遭遇したり、計画した行程通りにうまく事が運ばないのも「旅行」ですから、そういうことを楽しむ姿勢というのが、もしかしたら自分の身は自分で守ることにつながるのかもしれません。
チェックインカウンターのお姉さんや機内でCAさんたちがニコニコ笑っているのは、何か裏があるのかもしれませんよ。
ということで、ゴールデンウィークのご旅行をどうぞお楽しみくださいね。
「人を見たら○○と思え」の続きは明日以降にさせていただきます。
ボン・ボヤージュ!