人を見たら○○と思え その2

ゴールデンウィークのこの時期は、皆さんも飛行機や新幹線を利用される機会が多いと思います。
そういう時のための予備知識ではありませんが・・・
前回の続きです。
航空会社の職員は最初からお客様を疑ってかかります。
・機内に変なものを持ち込むんじゃないか。
・手荷物に危険品が入っているんじゃなかろうか。
・精神状態は大丈夫か。
・健康状態は大丈夫か。
・飛行機の中で他人に危害を加えるかもしれない。
・きちんと風呂に入っているだろうか。(密閉空間で周囲に不快なにおいを発しないか。)
・持っている航空券は本物だろうか。
・パスポートやビザはちゃんとしてるだろうか。
などなど、安全を阻害するあらゆる可能性についてチェックし、事故の芽を未然に摘み取らなければならないのが、航空会社の職員の仕事です。
つまり、お客様を最初から疑ってかかる嫌な仕事でもあります。
これは何も空港職員だけじゃなくて、機内でも同じで、パイロットやCAさんたちも、すべてお客様を疑ってかからなければなりませんし、そういう訓練を受けています。おそらく地上職員以上に乗務員の方が自分の身の安全に直結しますから、常に厳しくお客様をチェックし、監視し、疑ってかかっています。
最近では、乗務員同士でも「こいつ、大丈夫だろうか?」と疑ってかからなければならない、とても寂しい職業でもあると言えます。
でも、皆さんが飛行機に乗るときに、自分自身に対して地上職員や客室乗務員から、疑いの目で見られているという実感はありますか。
地上職員も、客室乗務員も、みんなニコニコ笑顔でサービスして、とてもナイスな印象を受けるのではないでしょうか。
彼女たちは、直感的に怪しい人間を見抜くスキルを身に着けていて、常に神経を研ぎ澄ませて、その直感を磨いているにもかかわらず、そんなことは全く表情に出さずに、ニコニコ、ナイスに接客している。
私はこれがプロフェッショナルだと考えています。
つまり、安全とサービスは切り離して考えることではなくて、一体だということです。
これに対して、鉄道会社ではどうでしょうか。
いつも感じることですが、鉄道会社の職員も、常にお客様を疑っています。
その疑っている内容というのは、航空会社のようなセキュリティーに関することはほとんどなくて、
・きちんと切符買っているだろうか。
・買った切符の席に座っているだろうか。
・自由席券で指定席にちゃっかり座ってないだろうか。
・勝手に乗る列車を変更してないだろうか。
まあ、だいたいこんなところでお客様を疑っています。
会社として、タダ乗りされてはかないませんから、ちゃんと切符を買っているかどうか調べるのは当然だろうと考える人も多いと思いますが、鉄道会社の面白いのは、「出札」「改札」「検札」「集札」などという言葉を今でも平気で使っていることで、「乗車券、特急券を拝見いたします。」などということを新幹線のグリーン車でもやっているから、私は不思議に思います。
つまり、どういうことかというと、「お前たちを信用していないぞ。」ということが、いたるところで態度に出ているんです。
出札というのは、「切符買ったか?」
改札というのは、「ここから先は通ることはまかりならん。」
検札というのは、「不正乗車してないだろうなあ。」
集札というのは、「ここまでの自分の身の潔白を証明しろ。」
こういうことをお客様に対して平気で言っているのが鉄道会社で、航空会社も同じようにお客様を疑ってはいますが、鉄道会社の場合は職員の立居振舞を通じて、それがすべて態度に出ているんですね。
これが航空会社と鉄道会社の大きな違いだと私は考えていますが、鉄道会社といっても厳しいのは日本の鉄道会社であって、発展途上国ならともかく、外国では警察官が身体チェックするかのように乗務員が切符を調べにやってきて、持ってなければ身の潔白を証明できないようなことはあまり聞きません。
何しろ、日本ではいくらちゃんと切符を買っていて、改札口を通っていたとしても、車内で乗務員がやってきたときに切符を提示できなければペナルティーを取られるし、車内の検札を通過しても、到着駅の出口で切符を見せることができなければ、やっぱりペナルティーですからね。こんな乗り物は鉄道だけじゃないでしょうか。
2年ほど前のことですが、韓国人の友人と韓国新幹線KTXに乗りました。
その時はプサンからデジョンまででしたが、「今からKTXの座席を予約しますね。」と言って友人はスマホを取り出しました。
韓国で新幹線に乗って目的地へ行くのは、具体的にはこんな感じです。
・友人が自分のスマホで空席状況をチェックします。
・空いている列車の座席表から希望の座席を指定します。
・スマホに登録しているカードで決済します。
・駅へ行くと改札口がありません。そのままホームへ直行です。
・乗車列車の指定された号車の席へ座ると列車が発車します。
・途中、車掌がニコニコしながら通り過ぎて行きましたが、検札はありません。
・デジョンに着いて、ホームに降りると、出口には改札口はなく、そのまま外に出られました。
これがすべてです。
出札も、改札も、検札も、集札も、何もありません。
帰りはKTXではなくて昔ながらの在来線の「セマウル」に乗りましたが、全く同じ。やはり出札も、改札も、検札も、集札もないまま、プサンに着いて、駅を出て駐車場に向かいました。
私が鉄道が好きで、切符に興味があるのを知っている友人は、「何か記念に残るようなものないかなあ。」という私に向かって、「残念ながら、そんなものないよ。」と笑っていましたし、記念に時刻表が欲しいと言って探してもらいましたが、そんなものは本屋にも駅の売店にもありませんでした。
今の時代に要らないんですよね。
その時私は不思議な気がしましたが、考えてみれば、国内線の飛行機に乗るときは、すでに日本でもまったくこれと同じことをしているのですから、日本での鉄道会社の接客サービスというのは、ガラパゴス系もいいところなんです。
でも、そのことにスーパードメスティックカンパニーは気が付かない。
いや、おそらく気づいてはいるんだろうけど、自分たちのやり方を変えようとはしないのだと思います。
どうしてか?
それは、お客様本位じゃないからなんですね。
自分たちのやり方で、自分たちがこれで良いと思っていることが、サービスだと考えているからなんです。
つまり、お客様を疑っているということが顔や態度に出ているわけで、そうすることがある意味抑止力となって、お客様がきちんと自分たち会社の規則に従って行動することにつながる、と考えているからなんです。
そう考えると、私が思っているプロフェッショナルなサービスからはほど遠いのが鉄道会社のサービスなんですが、いすみ鉄道も鉄道会社で、働いている人たちも鉄道会社のサービスを当然だと思っているかもしれませんから、もしかしたら、いすみ鉄道も、そのようなガラパゴス系のサービスポリシーを引きずっているんじゃないだろうかと、実は最近気になってきているんです。
(つづく)