今夜の「おかえり上越」

今日はお釈迦様のお誕生日。

上越でもやっと桜が咲き始めました。

「お釈迦になる。」という言葉をご存じの方もいらっしゃると思いますが、「出来損ないで使い物にならなくなる」という意味ですね。

これは、私の記憶だと、(ていうか、東京の言葉だと)「ひ」と「し」の区別がありませんから、「しがつようか」は「ひがつようか」つまり、「火が強うか」を「しがつようか」と言ったことから、鋳物工場などで出来損ないの品物ができることを、「火が強すぎで出来損ないになる」⇒使い物にならない⇒お釈迦になるという、江戸っ子が使う言葉であります。

さて、そのお誕生日に私はお江戸に日帰り出張をして、夕方18:04に東京駅を出る「はくたか573」で上越に戻ってきました。
この「はくたか573」は、20分後に東京駅を出る「かがやき」を長野駅で待ち合わせるダイヤですから、長野駅で「かがやき」から「はくたか」に乗り継ぐお客様が多くて、上越の人にとって見たら東京出張の帰りに利用するには大変便利な列車です。

まして今夜は金曜日ですから、20:13に上越妙高に到着した「はくたか」からはいつもより多い100人以上のお客様が下車されました。

単身赴任の身としては、金曜日に東京に出張すれば、そのまま千葉の自宅に帰るのがふつうなんですが、お釈迦様のお誕生日でもあるので、能生の桜がどうも気になりまして、千葉へ帰らずに上越に戻ってきたのであります。

新幹線から降りた100人以上のお客様は三々五々左右に分かれて消えていくのでありますが、トキめき鉄道の切符売り場にも人が並んでいまして、どうやら皆さん20:28発の「おかえり上越」に乗っていただけるご様子です。

この「おかえり上越」は臨時列車として設定していますので、新幹線の電車が到着した時にはすでにホームに入っております。
ということは、連絡時間は15分ほどあるのですが、お客様は寒いホームでお待ちいただくことなく、車内に入って発車の時刻までお過ごしいただけるわけでして、今の皆様方は座ってスマホを見ていれば、あっという間に発車時刻になるという仕組みでございます。

本日のお客様は26名様でございました。

ありがたや、ありがたや、でございます。

この時間はもうバスは終わっていますし、コロナでタクシーも減車されて、夜間はつかまりにくくなってきていますので、やはり鉄道は頼りにしていただけるのではないでしょうかね。

私は、来年のダイヤ改正では新幹線接続を主体に考えるようにと指示を出しています。
その理由は、新幹線接続がうまく行けば、地元の人に乗っていただけるチャンスができるからです。

車社会の田舎ではふだんは電車には乗りません。
でも、新幹線で東京へ出かけるときなどは、接続が良ければ車で上越妙高の駅に行って駐車料金を払うよりも、高田、直江津の人にとってみれば、トキめき鉄道で行った方が便利ですから、ふだん乗らない地元の皆様にも乗っていただけるという大きなチャンスがあるからです。

まして、皆さん、東京からの帰り道、新幹線の中でビールやハイボールをちょっと引っ掛けたいでしょう。
駅に車を置いているとそれができませんからね。

だから、うまく接続するトキ鉄があれば、乗っていただける。
そこに隠れている需要があると考えているのです。

では、臨時列車を走らせて20名という数字をどう考えるか。

「たった20名のためにお前は臨時を走らせるのか?」

物事の尺度がお金だけの人はそう言われるでしょう。

でも、私は交通のプロですから。
田舎の交通がどうあるべきか。
インフラとしての交通がきちんと機能することで、地域そのものの価値が上がるのです。
列車を走らせることの効果は運賃収入だけではないということが交通の常識なのですが、この国では「赤字ならやめてしまえ」的な発言が正当化される傾向が強くあります。

田舎の駅で夜の8時半に20名以上の利用者がいるということが、地域の価値をどう高めるかということは、すでに走らせる意味があるということが実証されているのですが、まぁ、「赤字だからやめてしまえ」という理論を言うのであれば、何でもやめてしまえばよろしいのです。

図書館だって、公民館だって、診療所だって、田舎はみんな赤字でしょうし。

その程度の、小学生レベルの議論をするために私はここにいるのではありませんからね。

ということで、私はしつこくこの臨時列車の利用実態調査をしているのであります。
それも上がってくる数字の報告ではなくて、自分の目で見て、お客様の動向を確認しているのです。

「あっ、ちょうど良い時間に電車があった。」

おそらく何も知らないで新幹線から降りてきたご夫婦だと思いますが、新幹線が着いたら電車が待っているのが当たり前だと、そう思っていただけるところに価値があると私は考えているのですが。

「おかえり上越」の発車後、待合室に4名様が残りました。
14分後の二本木行のお客様だと思います。
ということは、26対4、6.5対1で高田、直江津方面に需要があるということですね。

そういうことも、自分の目で見て見ないとわからないのです。

そうそう、なぜ私が今日、お江戸へ出張したかと言うと、雪月花のお料理のリニューアルのためにこの町の星の付いたレストランへお邪魔したのであります。

思えば私がこの町でバーテンダーのアルバイトをしていたのもかれこれ40年前のことになるのですね。

40年か・・・

思えば遠く来たもんだ・・・
ハタチの冬のあの雑踏
思えば遠く来たもんだ・・・
今では女房子供持ち
おまけに孫までついてきた(笑)

私の人生も、ありがたや、ありがたや、であります。

「おかえり上越」、地元の皆様方のご利用をお待ちいたしております。