景気が良くなるということ。 その2

景気が良くなるということを、若い人たちは経験したことがないという話をしました。
なぜならば、過去20数年間において日本は不景気の時代が続いていますから、30代以下の若い人たちにしてみれば、物心ついた時から不景気に慣れっ子になっているからなんですね。
そこで、実際に景気が良くなるということはどういうことで、その兆候はどういうところに現れるかということを知っておけば、30代以下の若い人たちにも世の中の動きがわかるのではないか。
そうすれば、少しは事前に対応できるし、20年ぶりのチャンスをつかめるのではないか。
事前に対応できないとしても、知っているのと知らないのとでは大違いですから、やっぱり知っていた方が良いのではないかと思うのです。
前回は「モノの値段が上がる前に、同じ値段でも商品が少しずつ小さくなっていく。」お話をしましたが、それ以外でも、例えば、景気が良くなると交通渋滞がひどくなるとか、羽田空港の駐車場がいつも満車で入れなくなるとか、いろいろな現象が現れます。
今年のお歳暮商戦や、おせち料理のカタログなどを見ても、去年から比べてずいぶん価格が上がっているというか、高級志向になっているのを見ても、景気は確実に良くなってきていることがわかります。
ところが、ここで注意しなければならないのは、景気というのはあくまでも「気」。つまり気持ちの問題であって、まだ、実際に懐具合が良くなったわけでもないのに、何となく財布のひもがゆるくなってしまう現象ですから、浪費は禁物なのですが、こういう「気」を「チャンス」ととらえることができなければ、いつまでたってもデフレ現象から抜け出すことができないということなんです。
日本では過去20年間不景気が続いてきましたから、人々の間に「しぶちん志向」が染みついています。
何でも安ければよいと思っている人が多くいますし、安くなければいけないという考え方も常識になっていますから、例えば公務員の給料は税金から出ているからと言われ、まるで公務員が給料をもらうことが罪悪であるかのように、どんどん下げさせられています。
そういう状況が当たり前になると、同じ人間でも安く使える人間が重宝がられますし、「自分は安く使えます。」ということを宣伝にして自分を売り込むような現象もふつうに見られるようになります。
でも、一旦景気が良くなり始めると、物の値段ばかりでなく、人の値段も上がりはじめます。
ということは、優秀な人材が高く売れるようになりますし、そういう優秀な人材が一番先に売れるようになるということですから、安いものを買うのが当たり前だと思っている人たちがいるところには、優秀な人材が来なくなります。
そして、それと同時進行で、それまで安く買えていた優秀な人材が出て行ってしまいます。手に入れることができないばかりか、今いる人たちまで出て行ってしまうわけですから、安いのが当たり前だと思っている人たちやそういう会社には「安い人材」しか残らなくなります。
そして、そういうところからはチャンスが逃げて行くことになるわけです。
チャンスを逃すということは、這い上がることができないということになります。
つまり、「人を安く使うのが当たり前」と思っている会社や組織、ある意味地域も含めてですが、そういうところには優秀な人材が居なくなりますから、他の会社や地域に先を越されるということになるわけです。
不景気の時代ならともかく、景気が良くなる兆候が見え始めた今の段階で、「私は年報いくらいくらで働きます。」と安さを売り物に自分をピーアールしている人たちは、結局、それだけの価値の人間ということになりますから、そういう人に過度な期待をする方が無理な相談ということになるんですね。
でも、これは優秀な人が安く使われている場合の話ですから、ふつうの人やふつう以下の能力しかない人たち、この場合、能力というのは仕事の効率ばかりでなく、仕事に対する取り組み姿勢やモラルも含めてのことですが、そういう人たちは、更に安く使われるようになりますから、これが格差につながっていく。
かつて、景気の良い時代には、どんどん格差が広がって行ったことを思い出すと、誰にでも平等にチャンスはやってくるけれど、そのチャンスを捕まえることができるのは全員ではないということで、機会は平等であっても結果は平等ではないということも覚えておかなければならないということなんです。
だから、私はいすみ鉄道というローカル線を決して安売りはしていませんし、いすみ鉄道沿線地域も、安売りをしなくても充分に勝負できますよ、ということを皆様方にわかるように展開しているわけです。
値段ばかり高くて、実は内容が伴っていなかったり、それだけの値段を払う価値がないものが世の中にはたくさんあります。
例えば、どこかのホテルのレストランのようなものです。
でも、不景気の時代には、値段は安いけれど、内容を考えたら実は超お買い得なものもたくさんあります。
これは、物が売れない時代が長く続いたため、本来の価値以下の値段で販売しているということです。
人材も同じです。
不景気の時代には、本来、そんなに安い値段で働く必要のない人が、意外に安く働いていたりしますし、一部の優秀な公務員の人たちのように、私に言わせれば不当に安い値段で働いていたりすることもあります。
そして、好景気が長く続いたバブルのような時代には、本来そんなに高い給料がもらえるはずのない人たちが、驚くような給料で働いていることもありました。
不景気のどん底から好景気に入る時期に来ていますから、私たちは安く使える優秀な人を、他に行かれないようにリーズナブルな待遇でもてなす必要があるということと、ふつうの能力でふつうの仕事をする人に、間違って高い給料を払わないようにということを、同時にやっていかなければならない時期に差し掛かっているのです。
例えば、「公務員の給料は俺たちの税金から払っているんだ。」と何かにつけて声を大きくしている人がいますが、そういう人に限って税金をほとんど払っていなかったりするのが不景気の時代でした。
景気が良くなって来ると、そういう人たちの意見や声を真に受けていると、そうでないところにどんどん先を越されるということなんです。
私が言っていることをお解りいただけますでしょうか?
今夜は難しかったかな。
(つづく)