おいもが2つ

70年代の韓国のお話し。

韓国人のいいなと思うのは電車やバスの中で他人の荷物を持ってあげること。
今はどうか知りませんが、70年代には座っている人が立っている人の荷物を持ってあげるという習慣が当たり前のようにありました。

これ、日本人は結構戸惑うんですよ。
電車の中で座っていると前に立っている人がポンと荷物を載せてくる。

えっ?

となるでしょう。

日本だと、お取り寄りや体の不自由な人に席を譲りましょうってのは当たり前ですが、座っている人が前に立っている人の荷物を持ってあげましょう、という習慣はないですから。

まして、自分もカバンがあるわけで、そのかばんは基本的には膝の上に置く。
そこにもう一つ前の人のカバンが載せられるのですから、両手で持たなければならないほどになってしまいます。

でも、韓国ではそんなことは当たり前で、相互扶助というのかどうかはわかりませんが、まぁ、座っていると知らない人が自分の膝の上に荷物を載せてくるのです。

さて、ここからはある1人の女子高生のお話しです。

彼女が学校に通うバスの中で、いつも同じバスに乗り合わせる憧れの男子生徒がいました。
その子にとって見たら、憧れの男子と同じバスに乗り合わすだけで毎朝ドキドキで、幸せな気分でした。

ある時、その憧れの男子が自分が座っている席のすぐ前に立ったんです。
彼女の膝の上には自分のカバンがあるんですが、自然な成り行きでその男子高校生のカバンも持ってあげた。

「ありがとう。」と彼。

こんなうれしいことはありません。

彼女はドキドキです。

するとどうでしょう。
彼女の膝の上に蒸かしたおいもがポロリ。

そう、彼女は毎日おやつ用にカバンの中においもを入れて来たのです。
そのおいもがこともあろうにこんな時にポロリと出てしまった。

恥ずかしい!

幸い、目の前の彼は気づいていない様子です。

彼女はそっとそのおいもをカバンの中にしまいました。

あぁ、良かった。
気付かれずに済みました。

やがて、学校の前について、憧れの彼にカバンを返すと、「じゃあね。」と言ってお互いの教室へと向かいました。

彼女は憧れの彼のカバンを持てたこと。二言三言会話できたことで幸せな気持ちで教室に入りました。

さて、今日も一日頑張るかな。

そう思ってカバンを開けて教科書を出そうとすると、なんと、彼女のカバンの中にはおいもが2つ入っていたのでした。

あぁ・・・・

バスの中でこぼれ出たおいもは彼のカバンからだったのです。
彼もおやつのおいもをカバンに入れてきていたんですね。

70年代の韓国での笑い話です。

どうです。
愛らしい人たちでしょ。

もう皆さん60過ぎているでしょうが、どうしているかなあと、昔の友達を思い出す今日この頃です。


▲東大邱駅 2013年

そろそろ行きたくなってきた。