交直切換

電化区間には交流電化区間と直流電化区間があります。

昭和の時代の電車のモーターというのは直流で動くものが一般的でした。

一般的には発電所から出される電気は交流でオンとオフが繰り返される波長になっていて、1秒間に50回、60回点滅を繰り返します。
これが周波数で、富士川を境に東日本は50回、西日本は60回点滅を繰り返しています。

学校で習いましたが、白熱灯なども人間の目では見えませんが、実は点滅を繰り返している。
文系男子としてはウソだか本当だか知りませんが、先生からはそういわれた記憶があります。

ところが電車のモーターは昭和の時代は基本的には直流で動くようになっていて、なぜなら1秒間に50回も60回もオンとオフが繰り返されていては出力が出ないから、一定電圧を維持できる直流で動く。Nゲージの鉄道模型などもモーターは直流です。

つまり、鉄道を電化するためには直流の電気を流すための設備が必要なのです。

でも、もともと発電所から送り出される電気というのは交流ですから、それを電車を走らせる直流に変えるためには特殊な設備が必要で、これを整流器というのですが、直流電化の場合は発電所からの何万ボルトの高圧電気を線路の横の変電所で電車に必要な1500ボルトに下げるとともに、整流器を使って交流から直流に変換する必要があるのです。

これに対して交流電化というのは発電所から送られてくる交流電気をそのまま架線に流せばよく、架線電圧も2万ボルトですから降圧もそれほど大きな仕事ではありません。
また、2万ボルトを流すのですから1500ボルトよりも遠くへ届く。
つまり、変電所の数も交流電化の方が少なくて済むのです。

ということは、交流電化と直流電化を比べると、交流電化の方が電化工事のための建設費が少なくて済むという利点があります。

ところが、最初から申し上げておりますように電車のモーターというのは直流で動きますから架線に交流を流した場合、パンタグラフから取り込んだ電気をそのままモーターに入れることはできません。
パンタグラフから取り込んだ電気を電車の側で降圧して整流して直流に変えてからモーターに入れることが必要で、1両1両の電車にそういう装置を積まなければなりません。

これに対して直流電化区間では架線に1500ボルトの直流電気が流れていますからパンタグラフから取り込んだ電気を直接モーターに入れることができる。

どういうことかと言うと、交流電化は建設費が安いけれど車両にお金がかかる。
直流電化は建設費は高いけど車両にお金がかからない。
こういう利点と欠点があるのです。

こういう理由で昭和の時代は大都市近郊区間の直流電化から始まりました。
直流電化であれば車両側が安価にできます。大都市のように8両、10両、15両といった長編成の電車がたくさん走る区間では、多少建設費がかかっても車両が安い方がメリットがあるのです。

ところが、電化が地方へ進展していくにつれ、交流電化区間が増え始めました。
地方路線は列車の運行本数が少ないために車両数はそれほど必要としません。
だから、建設費が安上がりな交流電化が選ばれました。

これが昭和40年代の話。
昭和43年に東北本線の青森まで電化完成。
昭和44年に北陸本線直江津電化完成。
昭和47年に羽越本線電化完成。
すべて交流電化です。

このように50年前の日本は電化の進捗が交流電化で進められました。
その理由は建設費が安いこと。
車両製造費は高くなりますが、もともと地方路線ですから都会のように過密ダイヤではありません。必要とする車両数が少ないからですが、そこにもう一つ大きな理由がありました。

それは、機関車が1両あれば旅客列車も貨物列車もけん引することができるということで、交流電化というのは機関車が列車をけん引することが前提で進められていたのです。

このように日本の鉄道は技術の発展とともに電化区間が延伸してきたのですが、客車も貨車も機関車が引く前提の時代に建設されたのです。

では、今はどうでしょうか?

JRになったと同時に旅客鉄道と貨物鉄道が完全に分離されました。
そして、短い編成の電車が本数多く走るようになった。
そのためにはたくさんの車両を揃えなければならない。

つまり、この時点で交流電化の本来の意義が消えてしまったのです。

さてさて、トキめき鉄道のひすいラインが走る旧北陸本線には糸魚川付近にデッドセクションと言って直流電化と交流電化が切り替わる区間があります。
ということは交流と直流の両方の電気に対応できる電車しか走ることができません。
もともと北陸本線で直江津から富山県境の市振付近までは一番輸送密度が低いところでしたし、その証拠に一番最後に電化が完成したところです。

そういうところに高額な交直両用電車を走らせるのは利点がありませんから、トキめき鉄道は開業時からひすいラインは電気の種類に関係なく走ることができて、さらに1両で走ることができるディーゼルカーが採用されているのでありまして、今走っている唯一の電車である観光急行は国鉄時代の長距離電車として活躍してきた交直両用型電車なのであります。


▲交直切換区間を走る観光急行列車。
左上のストライプの標識が電源切換を示しています。
運転士さんはこの標識を見ると、指差し確認して「交直切換!」と喚呼して車両側で電気を切り替えるのであります。


ということで、この標識をデザインしたTシャツを作りました。

「交直切換!」

先日の大阪イベントで限定販売しましたところ、ご購入いただきました皆様がすぐにその場で着てくれました。

どうです?
3セク鉄道で唯一電源切換があるトキ鉄ならではのオリジナル商品。

1枚3000円。

あっ、限定販売品でしたので通販で売る前にイベントだけで在庫がなくなりました。
それだけの人気商品ですが、欲しいという方いらっしゃいますか?

オンラインで受注生産できるかどうか、ちょっと検討してみましょうか?

オミクロンが1日に5万人を超える状況になり、今後どうなるか不安ですが、こういう時こそ頭の中を切り換えていきたいものですね。

ご購入いただきました皆様、ありがとうございました。