隣の座席は売りません。

コロナの影響で日本航空が当分の間隣の座席をブロックして売らないようにするようです。

社会的な距離を取るということです。

予約を入れると事前座席指定ができるシートマップが出てくるのですが、こんな感じです。

これがB737の座席図。
緑色の座席が指定可能な空席。
真ん中が全部塞がっていますね。
真ん中の席にはお客様は誰もいないのですが、座席指定対象から外されています。
ということは、窓側、通路側に座ると、隣は誰も来ないということになります。

B767の場合はこんな感じ。
窓側が指定できますが、その隣の通路側は指定不可。
中央の3席並びは両端の通路側が指定可能で、真ん中は指定不可となっています。

機内で新型コロナウイルスに感染しないようにとのことのようですが、私はあまり感心しませんね。
なぜこういうことをするのかという理由としては、「今の時期はご予約のお客様が少ないので、機内でゆったりとお過ごしください。」でよいと思います。

というのも、今後も新型コロナ以外にもインフルエンザやほかの病気が流行ることも考えられるわけで、そうなった時に同じことができるのかという問題があるからです。

かつて、エコノミークラス症候群という病気が話題になったことがありました。
エコノミークラスのような狭い座席に座っていると足の静脈に血栓ができて、それが何かの拍子に肺や脳に飛んでしまうと梗塞を起こし、命に係わるというシンドロームです。
当時私は航空の現場にいましたが、散々お客に詰め寄られました。

「ちょっとあんた。私たちを殺す気? こんな狭い座席で。向こうのビジネスクラスが空いてるんでしょ。空いてるんだったら座らせなさいよ。」

とまあ、こんな感じです。

おばあさんの入口の年齢にある血気盛んなおばさまたちがほとんどでしたが、「向こうはビジネスクラスですから、それなりの料金をお支払いいただかないとお座りいただくことはできません。」とでも言おうものなら、「あなたはお客を差別するの? エコノミーのお客なら死んでも構わないの?」と猛反発です。
完全な言いがかりと言いますか、難癖をつけるのです。

そういう時に、私は、じっとその人の目を見つめながら、
「差別ではありません。区別です。お支払いいただいた料金によって座席を区別しているのです。お客様はご自身でエコノミークラスを選択されたのですよね。」
とこう申し上げました。

ぐうの音も出ないお客は、言うに事欠いて「責任者を出せ。」となりますから、「はい、私が責任者です。」と言うと、「あなたじゃだめだから社長を出しなさい。」となりますから、
「お客様、社長が出てくることはありませんよ。お乗りになるか、お乗りにならないかはお客様がお決めください。」と言って、それでおしまいです。

もちろん機内の責任者にも「47C、うるさいから気を付けてね。」と申し送り。
責任者の方は「何かあったのか?」と聞きますから事の経緯をお話しすると大笑い。
「OK,わかった。」と言ってあとはお任せです。

特に外人はこういう難癖をつける客は基本的に無視しますし、「これ以上文句を言うと地上に着いた時に警察に引き渡すぞ。」と平気で言います。そもそも会社自体がそういう会社ですから、私も「差別じゃなくて区別です。」「お乗りになられますか? どうされます?」なんて平気で言っていましたが、日本航空さんの職員がお客様に向かってそういうことが言えるのかどうかと考えた場合に、ちょっと無理なような気がしますから、「新型コロナウイルスの感染予防のために」などと言わず、「空いてる時期ですからゆったりとご利用ください。」程度にしておいた方が良いのではないかと思うのです。

では、3列並びの座席の真ん中をふさぐというのはどういうことなのか。
あるいは、2席並びの通路側をふさぐとはどういうことなのかと言うと、これってビジネスクラスなんです。

ヨーロッパ内では短距離路線では一般的にエコノミークラスとビジネスクラスに座席の違いがない会社が多く、国際線といっても2~3時間程度の路線が多いですから、エコノミークラスは全座席使用しますが、ビジネスクラスは基本的にはエコノミークラスと同じ座席、同じシートピッチで、隣の座席をふさいでいるのです。


BAの短距離国際線ビジネスクラス。
長距離路線ではビジネスクラスはフルフラット座席ですが、短距離用の機材では座席はエコノミーと同じで、真ん中の席が塞がれています。


2時間ぐらいのフライトですが、もちろん機内食は出ますが、座席はエコノミーと同じです。


こちらはポーランド航空。
赤いカバーの座席がビジネスクラスで、後ろの方の青いカバーの座席がエコノミー。
座席自体はビジネスもエコノミーも同じです。

ビジネスクラスの座席には通路側のカバーに「This seat is blocked for your comfort」と書かれているのがおわかりいただけると思います。
「あなたのためにこの座席は誰も来ないように塞いであります。」ということです。
エコノミーでは出ない機内食はサービスされますが、短距離路線ではこの程度です。

つまり、ヨーロッパではビジネスもエコノミーも座席には差がないということ。
なぜこういう商売が成り立つかというお話は別の機会にさせていただくとして、同じ座席で、ただ、隣に誰も来ないようにしてありますよというのがビジネスクラスなのです。

ということは、これからしばらくの間、日本航空の国内線は普通席に乗ってもビジネスクラスと同じことになると思いませんか?

空弁じゃなくて、ちょっと素敵なおつまみデリカテッセンとワインの小瓶でも持ち込めば、気分はビジネスクラスなのであります。

こんな時期でも出張で移動しなければならない皆様、つかの間の空の旅をゆったりとおくつろぎください。