結局最後は「徳政令」だろうなあ。

正社員とか契約社員とかに係わらず給与所得者というのは給料で生活しています。

給料がもらえなくなったら生活ができません。
いま、非正規と呼ばれるような弱い立場の人たちから仕事を失っています。
フリーランスと呼ばれる個人事業主もそうですね。
コロナ禍がこのまま続くと、やがて正社員と呼ばれる人たちも仕事を失っていきます。
どうしてかというと会社が無くなるからです。
すでに小さな個人商店のような会社は、社員の皆さんに休暇を与えて自宅待機にしているところもたくさんあります。

では、なぜ会社が無くなるかというと経済活動が止まってしまうと売り上げが無くなるからです。
商品が売れない、サービスが展開できないなど、会社の営業活動ができなくなると会社に入ってくるお金が無くなります。
そうすると、会社は従業員に給料を払うことができなくなります。
まあ、当然ですね。

会社から出ていくお金を費用と言いますが、費用には大きく2つあって、売り上げが上がると大きくなる費用と、売り上げに係わらず出ていく費用があります。

売り上げが上がると大きくなる費用というのは、商品を仕入れる代金であったり、お店の光熱費であったり、販売管理に係わるお金です。
売り上げに関係なく出ていく費用は固定費と言って、家賃であったり、人件費であったり、機械や建物などを導入するときに銀行から借りた借入金の返済やリース料などです。

この固定費というのは売り上げがゼロになっても、お店をお休みにしたとしても支払いをしなければなりません。
固定費の中で、本当は支払わなければならないのですが、支払わなくても良いものとしてあげられるのが人件費です。
本当は支払わなければならない人件費というのは既に働いてもらった分の人件費で、払わなくても良い人件費というのはこれから働いてもらう分の人件費です。
だから、会社から極端な話、「明日から来なくても良いです。」と言われたら、会社は今日までの賃金は払わなければなりませんが、明日からの賃金は支払わなくても良いことになります。

支払わなくても良いというとちょっと乱暴に聞こえるかもしれませんが、労働者である従業員は失業保険をもらったり、あるいは政府が言う雇用調整助成金から支払いを受けることになりますから、時給のアルバイトでもなければしばらくの間は過去の賃金の6割程度は手にすることができるでしょう。

固定費の中でも人件費はそうやって削減することができますが、削減できないのが地代、家賃であり、銀行からの借入金やリース料です。
飲食店の経営者の人が国や県などの自粛要請を受けてお店を休業したとします。
でも、地代家賃は払わなければなりません。

例えばホテルや工場など銀行からお金を借りてビジネスをしている場合、ホテルなら宿泊客が平均6割などと言うビジネスプランがあって、その中で払うことができる金額を銀行から借りてホテルを建てて、何年もかけてすこしずつ銀行に返済しています。

工場も設備投資をするときには何年も先までの注文が継続して見込まれることを前提にビジネスプランを立てて、銀行からお金を借りて設備投資をして、そのビジネスプランに従った営業活動の結果として入ってくる売り上げの中から借りたお金を返済します。

ということは、今のように売り上げが対前年比9割減というようなことが続くと、当然ですが借りたお金を返すことができなくなります。
借りたお金を返すことができなければ、簡単に言うと倒産ということになります。

航空会社も同じです。
飛行機は1機何百億円もしますから自己資金ではなかなか揃えることができません。
通常はリースです。
ということは毎月多くの金額のリース料の支払いがあります。
でも、乗客がいなくなって飛行機が飛ぶことができなくなれば売り上げが上がりませんからリース料を支払うことができなくなります。

航空会社もホテルも工場も、居酒屋さんやレストランなどの個人商店もビジネスの規模は違いますが基本的には商売の構造は同じです。

では、こういう時に経営者はどうするかというと、銀行やリース会社の担当者にお願いをして何とか支払いを待ってもらおうとします。あるいは毎月の返済額を減額して、その分返済期間を長くしてもらえませんかというお願いをします。

銀行やリース会社の担当者は、相手が倒産してしまっては貸したお金や提供した機械類などの代金が返してもらえなくなりますから何とかしてあげなければなりません。

そういう時に、銀行やリース会社の担当者が必ず言うのは、
「いつになったら売り上げが回復しますか?」
「いつまで辛抱すれば大丈夫ですか?」

でも、経営者は今の状況からは返答のしようがありません。
「さあ?」

社長が「さあ?」と言ってしまえば銀行は「うん!」とは言いませんよね。

今、国は休業要請に応じてくれた会社やお店に対しては家賃の支払いを免除してもらえるように要請を出しています。
居酒屋さんやレストランなどお客様がいなくなってしまったところは、売り上げがないのですから家賃が払えません。
固定費の中で大きなウエイトを占める家賃の支払いがなければ、何とかなるかもしれないという光が見えてくるかもしれません。だから、国から家賃の支払いを免除してほしいと大家さんにお願いしてもらえれば、お店や事務所を構えている人にとってはとても助かります。

でも、家賃の支払いを免除する側の大家さんはどうしたらよいでしょう。
大家さんといったって昔のような資産家ばかりとは限りません。
銀行からお金を借りてビルを建てて、家賃収入で返済している人もたくさんいます。
会社形式にしているところでも、結局は土地を担保に入れたりして銀行からお金を借りて建物を建てて、それを貸して家賃収入を得ていますから、家賃収入が無くなれば銀行から借りたお金を返済することができなくなります。

社会にはこういう構造があるんですね。

つまり、経済が落ち込んで売り上げが上がらなくなると2つの行き詰まりがある。
1つは労働者にとって給料をもらえなくなって生活ができないという壁。
もう1つは経営者にとって借入金の返済ができなくなるという壁。
この2つの壁を何とかしなくてはならないのです。

この2つの壁を乗り越えるために政府が今言ってるのが、
労働者が給料をもらえなくなって生活ができないことを救済するために、国民一人当たり10万円を支払いますという話。
もう一つは中小企業などの会社や個人事業主に対しては会社を存続させるためのお金として100万円から200万円を支払いするという話です。

では生活のためのお金が10万円で足りるのかというと、誰が考えたって足りませんよね。
何カ月続くかわからないコロナ戦争ですから、今後多分10万円の給付を何回もやらなければならなくなるでしょう。
それと同じように、中小企業に200万円払ったとしても、もらえないよりは良いかもしれませんが、おそらくその程度では焼け石に水でしょう。

結局、根本を考えると、労働者の場合は生活費であり、会社の場合は借入金の返済。
これが何とかなれば生き延びられるのです。
労働者に対しては、コロナが終息するまで、国はおそらく何度も10万円、あるいはそれ以上の給付をしなければなりません。
では、会社に対してはどうするかというと、何回も200万円を払うことは不可能になるでしょう。
だとしたら、あと考えられるのは借入金の返済を免除することしかありません。

猶予するとなると、いつ終息するかわからないコロナに対しては猶予期間を設けることはできませんし、結局は後々に支払わなければなりませんから、回復期に入ったとしてもいきなりV字なんてありえませんから、やはり回復のための大きな足かせになるでしょう。事業を立て直すためにお金が必要になっても残債があれば新たに借り入れることはできませんから再スタートができないのです。

ということは、国民に対して現金を給付するのと同じように、企業に対しては借金の返済免除。つまり、借金をチャラにするしかないのではないか。
こういう借金の棒引きを「徳政令」と言いますが、こうなってくると、やっぱりそれしかないんじゃないかなあと、今回の全国規模の緊急事態宣言を見てそう思うのであります。

私は自分で会社をやっていますが、銀行からの借入金はありません。
借金は住んでいる自宅の住宅ローンが少し残っているだけです。
トキめき鉄道も銀行などからの借入金はありません。

だから、徳政令が出たとしても残念ながら恩恵にあずかることはできないのですが、航空会社から始まって、ホテルも工場も街中の飲食店など、会社という会社が売り上げが入ることを前提に銀行からお金を借りていますから、徳政令が出れば基本的には倒産ということが無くなりますし、残債が無くなればコロナの終息と同時に新たに設備投資をしてビジネスチャンスをつかむ事が可能になりますから、V字回復も可能になるというものです。

でも、そんなことをしたら銀行などの金融機関はどうなるのでしょうか。

そうなんです。
今度は銀行がつぶれますね。
貸していたお金が返ってこなくなるのですから。

そうしたら政府はその銀行を支援してあげればよいと思います。

もともと金融機関は国の監督下なのですから、内部事情まで全部わかっているでしょう。
会社の数に比べたら金融機関の数などたかが知れています。
一つ一つの会社に自己申告させて補填していくことを考えたら、会社の借金を全部棒引きにして、損失が出た金融機関を支援する方が無駄金を払う必要もなく、実にスムーズに行くのではないでしょうか。

もちろん、金融機関の中には統合されたり淘汰されたりするところも出てくるかもしれませんが、そうなるとそういう金融機関にたくさん預金しているお金持ちの皆様方が大きな損をするかもしれません。
でもまあ、お金持ちの皆様方は生活には必要のないお金をたくさん持っているわけですから、多少損したとしても死ぬことはありません。

結局は「金は天下の廻りもの」ということになるのではないかと思うのであります。

ということで今週もいろいろなことがありましたが、皆様どうぞよい週末を「ご自宅で」お過ごしください。

※今日のどこかのネット記事の「二回感じちゃう」・・・は、二階幹事長の誤植だそうです。(爆笑)