初夢 妄想特急 最終章

三が日もあけて、昨日今日から仕事始めの方もいらっしゃると思います。

 

いつまでも「初夢」を見ているんじゃないとおしかりを受けそうですので、本日は最終章です。

 

JR北海道の観光列車をできるだけ安価で作るためには動力を持たない客車列車にすることで、このビジネスに参加して、お金を出して車両を所有し、運営してくれる会社が出て来やすい環境になるというお話をしました。

 

7両編成の観光列車が1編成5億円程度でできるとすれば、参加しようという大きな会社にとってみればそれほど大きなお金ではありません。

その観光列車を引っ張る機関車はJR貨物にお願いして、制度の改正を国土交通省にやっていただくことで、北海道の大地を民間資本の観光列車が走ることは十分に可能になると私は考えています。

 

鉄道会社の列車の中でいろいろな事業者が商売をする話は、取り立てて新しい考え方ではなくて、国鉄時代には実際に行われていました。

最近では御存じの方も少なくなりましたが、国鉄時代の東海道新幹線「ひかり」には食堂車が連結されていて、その食堂車を国鉄の関連会社の日本食堂だけではなく、帝国ホテル、ビュッフェとうきょう、都ホテルといった事業者がそれぞれ運営していたのです。

 

▲当時の新幹線「ひかり」の食堂車メニュー(昭和50年代の時刻表から)

 

以前は国鉄の関連会社の日本食堂が独占していた食堂車の営業にこういう制度を取り入れたことで、それまで不味いと不評だった食堂車のクオリティーが向上したことを覚えています。他社を参入させることで切磋琢磨してサービスの質が向上したのです。

JRになってから、残念なことに食堂車そのものが無くなってしまいましたが、今の時代ですから食堂車だけでなく、列車そのものを丸ごと製造から請け負って、お客様に喜んでいただくだけではなく、そういう観光列車が走るだけで地域に人を呼びこむという、地域の輸送以外の部分で地域の役に立つ列車を作ることも、いくらだって可能だと考えています。

 

ということで、本日は札幌―釧路間を例に実際に観光列車の商品を考えてみましょう。

 

【札幌発 釧路行 妄想特急「からまつ号」】

 

・運転時刻

札幌9:30発ーー南千歳(10:10)ーートマム(11:30)ーー帯広(14:00)ーー釧路17:30到着

 

こういう列車を考える時には、いきなりインバウンド対象ではなくて、まず日本人にどうやって乗っていただくかを考えなければなりません。北海道の中で一番人口が多い札幌発とすることと、南千歳で飛行機からのお客様を拾えれば、東京や大阪を朝出てきた人も乗れる列車になります。

インバウンドの外国人は前の日までに札幌に入っているのが常ですから、札幌からトマムまで乗るなどという区間乗車もありだと思います。

トマムの停車は外国人観光客が多いための停車です。トマムのホテルをチェックアウトして、さらに道東方面を目指していただくためにはこのぐらいの時間帯の列車が必要です。

 

この他に、追分、新得や池田に停車して駅弁やお土産を買える時間を設けてもよいですね。

事前予約が前提の観光列車ですから、お弁当だって予約制にすればロスが出ませんから地元事業者の方には参入しやすくなるでしょう。停車時間を10分程度とれば十分受け取りも可能ですし、観光列車ですから時間調整を兼ねてそのぐらい停車することも問題ありません。列車を予約するときにお弁当やお土産料金を込みにしてクーポン券を渡しておけば、駅での引換も楽になりますし、事業者にはすでにお金が入る計算になりますからリスクはゼロになります。

こういう商売を考える時に、地域の小さな事業者さんにリスクを負わせるようなことをすると協力を得られにくくなりますが、このシステムなら大丈夫でしょう。あとは地元の皆さんのやる気が問われることになりますが、それが地方創生というものですからね。

 

旅行商品としては、札幌・南千歳-帯広までのレストラン+カラオケ、またはカラオケ+レストランの入れ替え制で100名。

定員70名の食堂車で50名×2回ですから、それほど無理な計算ではないと思います。

カラオケルームの定員は、1両5室で各部屋の定員は6名とすると2両で60名。

10時~12時:レストラン+12時~14時:カラオケ

10時~12時:カラオケ+12時~14時:レストラン

札幌-帯広間で入れ替え制で2回転。

お一人様の料金は35000円でいかがでしょうか。

 

観光列車というのは一般の人にしてみたらせいぜい2時間。長くても3時間が限度でしょう。でも北海道の場合はどうしてもそれを超える区間が出てきます。その時のためにはレストラン+カラオケであれば耐えられるコースになるでしょう。

カラオケに興味がない人のために、列車の進行に合わせてモニター画面で観光案内を流すモードやテレビ番組や映画も多言語化して機械に組み込んでおきましょう。

 

この他に上記の食堂車カラオケ商品のお客様には帯広までのコースとして、帯広-釧路間でお客様を入れ替えて、軽食、バータイムとしてみましょう。

こちらの旅行商品は2万円で50名。

どちらも観光バスとのセット商品にすることで札幌-帯広-釧路間で3組のお客様を回転させる方法です。

 

観光列車ですから帯広駅に20~30分も停車すればお客様の入れ替えも十分可能ですし、札幌-帯広間と帯広-釧路間でそれぞれ別の商品にすることで回転があがります。また、食堂車とカラオケ室は帯広-釧路間は普通車やグリーン車などの一般のお客様のご利用も受け付けることにしましょう。カレーライスやビーフシチューなどレトルトやバルクで対応できるメニューを用意して、帯広から釧路までの区間は予約がなくてもご利用できるようにするとともに、もちろん予約を受け付けてちょっと豪華なお料理を召し上がることも、家族やグループでカラオケを楽しんでいただくこともできるようにします。客単価はおひとり3000円程度で一般座席の5~7号車のお客様の中から20名様にご利用いただく計算です。

ここまでで、列車の売り上げとしては約460万円です。

 

この他に一般のお客様がご乗車になる1両20名のグリーン車のお客様が全区間通してお乗りいただくとしてお一人2万円で40万円。

1両60名の普通列車が2両で120名様。お一人1万円として120万円。

売店の売り上げも入れると札幌から釧路まで片道で約600万円の売り上げになります。

 

JRに運賃分の6300円の半額をお支払いするとして約100万円。JR北海道からは保安要員として車掌が1名、機関車は貨物から借りることになりますが、客車もスタッフも運行会社が提供するわけですから、JRへの支払いは運賃分の半額程度で十分でしょう。それを貨物と分け合っていただくことになりますが、JR北海道にしてみたら自社の線路の上を通過させるだけでこれだけのお金が入ってくるのですから悪くないと思います。制度を作るときの取り決めで、他社が参入しやすいお約束を作るだけです。

ということで、その分を差し引いて札幌―釧路間で500万円の売り上げになりますね。

 

もちろんこれは満席に乗った場合の話ですが、乗車率6割と考えても片道300万円の売り上げになるでしょう。

食堂従業員と案内係を入れて6名のクルーを乗務させても十分コストはカバーできるでしょうし、食堂車や売店、車内販売の食材や商品、JR北海道への運賃分の支払いなどの費用は固定費ではなく、売り上げに伴って発生する費用ですからそれほど経営を圧迫することにはならないでしょう。

5億円の投資で1日300万円の売り上げが見込めるとなれば、それほどリスクがある商売ではないと思います。

客車ですから定期検査などの修繕費も動力付き車両とは比べ物にならないほど安価になりますから、ビジネスとしては十分に成り立ちます。

 

ただし、私の場合は、それにどれだけ売り上げをTOP UPできるかを考えるものですから、1日当りもう50万円ぐらい欲しいと思いますので、以下は追加のプランです。

 

【夜行列車として折り返し】

 

17:30に札幌から釧路に到着した車両ですが、そのまま翌日までお休みするのはあまりにももったいないことです。釧路到着後はいったん車両基地へ引き上げて車内の清掃等を行ってクルーも4時間ほど休憩させます。

そして22時過ぎにもう一度出区してきて、釧路22時半ごろに出る札幌行夜行列車「まりも」として運転するのです。

 

編成はこうです。

1号車:B寝台車(昼間はカラオケルームとして使用) 定員20名 1人12000円

2号車:B寝台車(昼間はカラオケルームとして使用) 同上

3号車:食堂車 (パブタイムとして24時まで営業)

4号車:食堂車 (食堂、売店は営業せず談話室として使用)

5号車:特別グリーン車 定員14名 1人15000円

6号車:簡易寝台車 定員15名 1人6000円

7号車:簡易寝台車 定員15名 1人6000円

こんな感じでいかがでしょうか。

この金額は料金分のみで、この他に乗車券が必要になるというみどりの窓口商品です。

もちろんこの夜行列車は企画乗車券や青春18きっぷでも上記料金さえお支払いいただければ乗車できるものとします。

個人客だけで埋めることは難しい場合は、旅行会社が商品展開して営業していくことで乗車率を高めていきます。

今や夜行列車というものは「乗ることそのものが目的となる存在」ですから、旅行会社の企画者にしてみたら飛行機と周辺観光を組み合わせて高額商品を作ることなどいとも簡単な作業です。

 

1~2号車のB寝台車はコンパートメントとして日中はカラオケルームとして使用していたもの。コンパートメントの扉を使用しなければ開放式B寝台、扉を使用すればファミリーやグループ向けBコンパートメントになります。食堂車はパブタイムとして24時まで営業中ですから、軽く一杯やってからお休みいただくのもよいでしょう。B寝台のお客様にドリンク券を1枚付けるぐらいは大したコストになりません。

 

5号車の特別グリーン車は国際線のビジネスクラス並みのフルフラット座席ですから、夜間はベッドにして、モニター画面でAVODでお好きな映画でも見ながら旅をお楽しみいただけるシステム。食堂車では特別グリーン席のお客様には簡単なお料理とドリンクを無料でお楽しみいただけるようにして、その金額は料金の中に含まれるものとします。

 

6~7号車の簡易寝台車は、昼間は4人掛けテーブル付のゆったりしたボックス座席にしていましたが、テーブルを折りたたみ、かつての583系と同じように座席を引き出して繋げれば、1ボックスをゆっくりと横になって1人で使える桟敷席になる仕掛けです。ただし簡易寝台ですからカーテンや寝具等はありません。6000円の料金は特急券+桟敷席代と考えれば青春18きっぷでも乗れるのですから割安感があると思います。

 

こうすることで、この観光列車を誰もが気軽に利用できる列車にして、わざわざ乗りに来ていただく需要を掘り起こすとともに、JRがやめてしまった夜行需要にしっかりと応えられる列車とします。北海道という土地柄を考えると、そういう利用も必要ですからね。

 

釧路の出発時刻は22時半ですから、末広町あたりでおいしいものを召し上がってから列車に乗るということも十分に可能になります。今後、札幌だけではなく、地方都市でもホテル不足が懸念される中、遅い時間に発車する夜行列車が走ることによって、その地域の経済にも少しは貢献できると考えています。

 

さて、これで売り上げを計算すると、

1、2号車は12000円×40名で48万円

5号車は15000円×14名で21万円

6~7号車は8000円×30名で24万円

満席の場合、合計で93万円になります。

乗車率6割と考えて約56万円。

帰りは料金に軽食程度の仕入れしか発生しませんし、往路の食堂車の大きな経費でスケールメリットも出てきます。

企画乗車券や青春18きっぷでも料金さえお支払いいただければ乗れるということは、乗車券は別途お求めいただいていますからJRへの支払いも不要です。

ということで帰路でも50万円以上が収入になりますから、乗車率6割としても札幌-釧路往復で、1列車で300万円+50万円、1日350万円の売り上げは確保できる計算です。

 

列車は早朝6時に札幌へ戻ってきて、車庫へ引き上げたのち、再びリフレッシュして9時半発の釧路行になる。

24時間で一往復する行程ですが、車両が車庫で寝ている時間を極力少なくすることで車両の回転率を向上させることも客車列車の得意技です。道内の各都市間は夜行列車を走らせることも十分に可能な位置関係にありますからね。

一応帰路の特別グリーン車に6席分クルー用の仮眠用座席を確保したうえでの計算になっています。

 

折り返しの夜行列車ではクルー6名のうち4名は24時までのパブタイム担当。2名は早めに仮眠に入り、翌朝午前5時からのモーニングコーヒーのサービス要員とすることで、釧路折り返し時と深夜の仮眠で休息時間が取れる時間割にして、朝8時出社、翌朝8時退勤という鉄道の職員さんの標準的シフト勤務になります。この行路を1往復すると翌日休み。次に1往復すると2日休みというパターンにすれば3組18人ののクルーがいれば運営できる計算です。レストランスタッフを運営ホテルにお願いすれば1列車あたりのクルーの数は2~3名程度で収まりますから、要はオペレーションのやり方次第ということでしょう。

 

5億円の投資で1日350万円の売り上げとすれば1か月では1億円、1年間で12億円の売り上げを得られる商売の出来上がりです。

これはあくまでも乗車率60%での計算ですから、あとは事業者がどうやって営業をして乗車率を上げるか。民間事業者でしたらこの数字に1~2割積み上げることはそれほど難しいことではないでしょう。15億円コースは十分手が届く範囲です。

 

もちろん売上ですから、すべてが収入になるわけではありませんが、食材のコストなどは予約前提にすればロスは最大限に防げますし、地元のホテル等にオペレーションをご協力いただければその受託費用に人件費を含めていただくことも可能ですから、オペレーションコストをさらに抑えることも可能となるでしょう。例えばの話ですが、札幌など地元のホテル事業者が観光列車を始めればもっともっと利益が出る仕組みが作れるということになりますね。大きな設備投資をして、何年もかかって回収するビジネスをされていらっしゃる事業者さんであれば、5億円の設備投資で年間12億円の売り上げというこの商売のうまみがよくご理解できると思います。

 

往路(札幌-釧路)は日中時間帯、復路(釧路ー札幌)夜行という一方通行のような運行ですが、これは双方向で同時に同じことをやることによる客割れを防ぐためと、いきなり地方都市の事業者にこの列車のオペレーションを担当させることには無理を感じるからですが、でも、例えば札幌帰着後、すぐの折り返しをやめて、その晩の夜行列車として釧路へ向かわせることで、今度は翌日釧路から札幌へ向かう日中時間帯走行のレストラン、カラオケ列車にすることも可能ですから、地域にやる気がある事業者さんが存在する場合は、地域発の列車として1か月交代で試してみるのも面白いかもしれません。

 

片道日中、片道夜行が前提ですが、5億円で7両編成の観光列車を1編成建造するだけで、札幌-釧路の毎日運行が可能になるのですから、あと3編成揃えれば札幌-稚内、札幌-網走、札幌-函館と全道をカバーする昼夜運行の観光列車が出来上がります。

 

20億円の投資で北海道の主要都市を結び、現行の特急列車を補完しつつ、わざわざ北海道へ行って乗ってみたいと思わせるような観光列車が全道的に走り始めることができるのです。

そして、これは、今、懸案になっている道内7空港民営化事業とタイアップして行うことで、さらなる観光のルートの開拓に貢献できるのですから、実にお安く簡単にできる実現可能な観光列車ということになります。

安価な客車編成ですから、普通車両を増備して需要に合わせて2~3両増結することで、季節波動にも対応できますね。

 

以上が客車列車で実現する営業的に持続可能な観光列車プランということになりますが、わたくし的には、ビジネスプランはもちろんですが、どんな客車を走らせようかなあということで、頭がいっぱいです。

 

札幌ー釧路間の「からまつ」は設計費用を安く抑えるために、新35系客車と同様の茶色い編成が良いですね。北海道ですから冬対策もありますので展望車両はやめておきましょう。その代わり、カラオケ車両(B寝台車)と食堂車にはかつての10系寝台車のデザインとして優等列車感を出しましょう。

 

札幌-稚内間は「天北」と命名しましょうか。

最果て行の旅情を掻き立てるのは、20系客車の再現で重厚な雰囲気を出すブルートレインにしましょう。

もちろん外観はかつての20系ですが、中身は全く新しいコンセプトの車両とすることは「からまつ」と同じです。

 

札幌-網走間は伝統の「おおとり」を復活させましょう。

こちらも最果て間の漂う列車ですから「天北」と同じ20系ブルトレで共通運用にしましょう。製造コストも抑えられます。

 

札幌-函館は倶知安経由ですから絶対に「ニセコ」で行きましょうね。

「からまつ」と同じタイプの旧型客車編成で製造コストを抑えて、ただし車体色はブルーで行きましょう。

この観光列車が軌道に乗れば当然今お休みいただいている「C62‐3」の復活の話も出てきますから、そうなることも見越して、観光列車は絶対に客車列車でなければならないのです。

 

豪華絢爛のクルーズトレインは、こういう列車を走らせて経験を積んでから始めても決して遅くはありません。

 

函館駅に到着する往年の急行「ニセコ」。

 

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ということで、そろそろお目覚めのお時間のようです。

 

いつまでも初夢の話ではありません。

目が覚めたら、この初夢をどうやって正夢にしていくか実際に行動していく。

 

それが私たちに課せられた使命なのです。

 

そして、その使命が全うできれば、鉄道に対する夢というものを、私たちの次の世代、その次の世代にもつないでいくことができますね。

それが、たくさんのことを学ばせていただいて、自分たちの人生に大きな収穫をもたらせてくれた北海道の鉄道に対して、私たちができる最大の恩返しなのではないでしょうか。

 

Boys, be ambitious!
Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame.
Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.

 

青年よ大志を持て。

それは金銭や我欲のためにではなく,また人呼んで名声 という空しいもののためであってはならない。

人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志を持て。

▲20系ブルトレの思い出。(1976年、同級生の柴山君、石川君といっしょに。右が15歳の私。)

 

Boys, be ambitious like this old man.

 

 

おしまい。