謎の20分停車

2月10日のダイヤ改正は、平日ダイヤは地元の学生さんが利用しやすいように、学校からの要望を受けてある程度ダイヤを修正した形になっていますが、土休日の列車は、観光需要がほとんどですから、観光客の皆様方を対象にしたダイヤになっています。

 

通常、鉄道会社がダイヤ改正をするということは、スピードアップをして所要時間が短くなりましたとか、接続がよくなりましたなど、お客様の利便性を重視していると思いますが、観光需要を考えた場合、その利便性というのは、早く到着することでもなければ、1分で接続するようなことでもありません。

それは、ふつうの鉄道というのが「目的地へ行く」ために乗るのに対して、観光鉄道は「乗ることそのものが目的」でありますから、いすみ鉄道のようなローカル線は、のんびり、ゆったりとご利用いただくことが、観光のお客様への利便性につながるからです。

 

今回のダイヤ改正では、今まで、午前9時台の次は13時まで国吉駅に急行列車は行かなかったのですが、ちょうどお昼前後に上下それぞれの列車が10分程度の停車をします。その理由はもちろん駅弁が売れるように。国吉駅ではカケス団長をはじめとする応援団の皆様方が駅弁の立ち売りをしてくれていますので、昭和の列車で窓を開けて駅弁を買うという体験を乗客の皆様方にしていただきたいのです。

他にも、終点の上総中野駅では今までキハの列車が小湊鉄道の列車に接続していましたが、今回の改正ではキハと小湊鉄道の列車が出会うのが夕方16時台のみ。その理由はもちろん夕方まで皆様方に滞在していただきたいからです。

そして、日中時間帯は上総中野駅で小湊鉄道からいすみ鉄道への接続時間が30分から40分以上と、実に待ち時間が長くなりました。今まで数分で接続する列車が多かったのですが、待ち時間を長くすることで、お客様が駅前を散策しやすくなりますし、最近は上総中野の地元の皆様方が駅前でイベントを開催していただけるようにもなりましたので、お客様の滞留時間を長くすることで、地元にお金が落ちやすくなるという効果を狙っております。

 

そして、極めつけは急行5号の大多喜20分停車。

列車番号105Dの急行5号は14:40に大原を発車して国吉駅で14:56から15:11まで15分停車。その後、大多喜に15:23に到着して15:43まで、何と20分間の停車です。そして終着の上総中野到着は16:07。通常50分で走る大原ー上総中野間を1時間半かけて走る実に鈍足な急行列車で、「お前、これで急行料金を取るなんてけしからん。」と言われるかもしれませんが、いすみ鉄道のキハは「乗ることそのものが目的の観光急行列車」ですから、高い料金を払ってすぐ着いてしまうのではなくて、高い料金を払ったらその分長く乗っていられる乗り得な列車。乗り鉄の師である宮脇俊三先生のお言葉に従った昭和の急行列車なのであります。

そして、この15時台の大多喜での20分停車の目的は何かというと、お土産を買っていただくこと。

大多喜駅の売店で、お土産を買っていただき、その後、小湊鉄道へお乗り継ぎいただいて東京方面へお帰りいただくという設定の列車なのです。

 

実に実に、いすみ鉄道の急行5号は、お土産を買っていただくために20分も停車するという前代未聞の定期急行列車なのでありますが、国吉で15分、大多喜で20分間停車するという連続長時間停車を味わえるような汽車旅は、今の日本ではなかなか味わえませんから、昭和の急行列車の汽車旅を再現するいすみ鉄道にはぴったりの列車なのです。

 

そして、こういうゆったりとしたダイヤを組んでみると、乗務員も精神的なゆとりができますから、自然と笑顔が生まれます。

 

お客さんも職員も、みんな笑顔になれるローカル線の観光列車なのであります。

 

どうですか。乗って見たくなったでしょう。

乗車券のほかに料金をいただいているにもかかわらず、これだけ表定速度の低い急行列車は、たぶん日本には他にはないでしょう。そう、この急行5号は日本一遅い急行列車。実は貴重な体験ができる列車なのであります。

 

 

 

窓を開けて駅弁を買うどころか、停車時間があると駅弁売りのおじさんはこのように列車に乗り込んできます。

これは楽しい体験ですよね。