1分遅れの謝罪。

「この電車は、途中駅でお客様の乗降に時間がかかりました関係で、ただいま1分遅れで運転しております。お客様には列車が遅れまして大変申し訳ございません。」

 

終点まぢかの電車の中で、このようなアナウンスが流れました。

自動アナウンスを補完する形で、運転士さんが肉声でアナウンスを入れました。

ワンマン運転の電車です。

 

私は、「?????」と思いました。

1分遅れで謝罪する必要があるのか。

ましてその理由が乗客の乗降です。

田舎の感覚に慣れ親しんでいるから、1分ぐらいどうってことない、ということではありません。

何でもかんでも馬鹿丁寧に「お客様至上主義」を貫くことは、かえって慇懃無礼な印象を与えかねないからです。

でも、その後がありました。

 

「終点、浜松町駅では、左側のドアが先に開きます。次に右側のドアが開きますが、右側はご乗車のお客様がお乗りになられます。お降りのお客様は、左側のドアから、前の方に続いてご順にお降りください。」

 

つまり、もたもたしないでさっさと降りてください。ということをさりげなく言うための前置きだったんです。

 

で、もともとこの電車が遅れたのがお客様の乗降に時間がかかったからですが、路線が路線ですから、大きな荷物をガラガラ引いた外国人の団体がたまたま乗ってきたりすると、当然そうなります。

日本の鉄道システムに不慣れなばかりではなく、自分の国では都市鉄道などを利用したことがない人たちだっているわけで、そういう人たちは、日本人なら団体旅行でバスに乗るでしょうが、外人は違います。みんな個人で移動を始めますから、日本に降り立って最初に乗る交通機関がこの電車なのです。

だから、戸惑うのは当たり前で、都市鉄道でありながら、そういう不慣れなお客様を乗せて、しかも定刻に運転しなければならない。

なぜなら、終点の浜松町は駅の構造上線路が1線で、着いた電車が折り返さないと次の電車が入ってこれないからです。

その1線の駅で日中4分、最短3分間隔で電車を運転しないと、羽田空港のアクセス路線としての需要に応えられない、お客様をさばききれないという現実があって、それをきちんとオペレーションしているのです。

4分間隔というと、出て行った電車の後に次の電車が入ってくるまでに1分半ほど時間がありますから、2分半で折り返しているということになります。

その2分半で折り返すのに、到着時にすでに1分遅れているわけですから、運転士さんとしては、それはそれは気になると思います。

 

そういう時に、運転士さんはきちんとお客様に遅れの謝罪をした後に、その遅れを引きずらないように、お客様のスムーズな下車を促す対応をしている。

こういうのを現場力というのでしょうか。

6両編成の電車を2分で折り返すということは、素人から見たら神業のようですが、決して神業ではなくて、きちんとシステムとして稼働している。そのうえで、1分の遅れをフレキシブルに対応しているのですから、プロの仕事ということを感じました。

 

そしてそれは何もこの鉄道だけの話ではなくて、どこの鉄道会社の職員の皆さんも、きちんとやっているのです。

西武も東武も京浜急行も東急も京成もメトロも、もちろんJR各路線だって、ギリギリの時間と闘いながら、お客様へスムーズでより良いサービスを提供しているというのが鉄道会社の現場の仕事です。

観光鉄道として有名な江ノ電だって、ぎりぎりの時間配分の中、観光客という不慣れなお客様を乗せて実にスムーズに折り返し運転を行っています。

 

私はこういう鉄道会社の皆様方の現場力というのは、日本が誇る素晴らしい仕事の姿だと思います。

もっともっと国民から評価されてよいと思っています。

 

だから、利用するお客様の方も、鉄道会社に迷惑をかけないようにしましょうね。

ポケモン探しながらホームを歩いては駄目ですよ。

ドアに挟まったりするだけじゃなくて、線路に落っこちるようなことがあったら、それこそ、1分の遅れどころじゃ済まなくなりますから。

自分の命が無くなるだけじゃなくて、自分の不注意でたくさんのお客様にご迷惑をおかけすることになりますから。

 

皆さん、十分に気を付けてください。

 

久しぶりに東京で電車に乗ると、いろいろな発見があるものです。

モノレールの運転士さん、ありがとうございました。