香港がヘリコプター・マネー!!

こんなニュースが出ました。

香港政府 経済支援策で市民1人14万円支給へ(NHK NEWS WEB)

長期化するデモと新型コロナウイルスの打撃で経済が低迷しているため、その刺激策として香港市民1人当たり日本円換算で14万円を一律支給するそうです。

こういうのを経済では「ヘリコプター・マネー」と言いますね。

直接的景気刺激策です。

通常の景気対策は国債を追加発行して金融機関に引き受けてもらって、それをもとに政府がお金を印刷して市中に供給するのですが、それだとまず印刷されたお金を銀行を通じて融資を受けて、その融資を受けた企業が設備投資や生産といった行為に出るわけで、例えば設備投資に回ったとすると工作機械などの会社に仕事が行って、その下請けに仕事が行って、やっと給料として個人に印刷されたお金が回ってきますから、直接的な効果が実に薄いわけです。
そして、国債を発行するということは、さらに国の借金が増えることになりますから、どうしたって政府も及び腰になりますよね。

じゃあヘリコプター・マネーはどうかというと、その言葉通りにあたかもヘリコプターで上空からお金を地上にばらまくがごとく(実際にそんなことはしませんよ)、国民にお金をあげちゃうんです。
今回の香港政府が市民一人当たり14万円を一律支給というのがそれですね。

こうすれば皆HAPPYでしょう。

でも、そんなことをしたらどうなると思いますか?

実は、政府がお金をばらまくということは、つまりはそのばらまくためのお金を印刷するのです。
これ、政府にしかできない唯一の権限ですね。
私たちは金を印刷したら逮捕されますから。

でもって、通常は政府は上にも書いた通り、お金を印刷するためには国債を発行してそれを裏付けとするのですが、ヘリコプター・マネーはこの国債の裏付けがありません。つまり、国債を発行せずに政府がお金を印刷するのですから、国の財政にも影響が出ません。
じゃあ、本当にそんなことをして大丈夫なんだろうかとなりますが、経済の専門家の人たちはそんなことをしたら「ハイパー・インフレーション」になると警鐘を鳴らします。
ハイパー・インフレーションとは急激な悪性インフレのことで、南米やアフリカで見られたように、お金の価値がどんどん下がっていくことを言います。
昨日まで1本100円だったコーラが今日は500円になって、来月には1万円になる。

コーラが1本1万円になるということは、お昼の定食が10万円になるし、新幹線で大阪まで行くのが200万円になります。
新幹線の切符売り場に200万円持って東京から大阪までの切符を買うようになるということは、つまりお金が紙くずになるようなものですが、ハイパー・インフレになるとこういうことが起きるのです。
新幹線の切符が200万円になるということは給料だって3000万ぐらいになりますから、働いている人たちは何とかなりますが、困るのは預金生活者ですね。今、1億円貯金通帳にあっても給料が3000万円の時代になったら1億円がたった3か月分の賃金になってしまいますから。

では、こういうことがどうして起こるのかというと、経済の規模が変わらないのに通貨供給量が増えれば当然金余り(イコール物不足)になりますから急激な物価高になるというのですが、日本のような国がそう簡単にハイパーインフレになるとは思えません。

マネタリーベース(通貨供給量)がどのぐらい変化したらどの程度のインフレになるかということは計算できるのではないでしょうか。

日銀が目指す緩やかなインフレは年2%と言われていますが、実質はそこまで上がっていません。
今回の新型コロナによる自粛要請で景気が冷え込んだら、さらに低くなりますから、もしかしたらマイナスになるかもしれません。
そうしたら日銀は金融緩和を続けなくてはなりませんから、だったらヘリコプター・マネーをやるのと同じことだと私は考えるのです。

では、一人当たり一律いくら直接配布したら効果があるのでしょうか。
まあ、はっきり申し上げてこの際ですから思い切ってGDP2%分ぐらいは配ってしまってもかまわないと私は思いますよ。
こういうことはちびちびやっても効果がありません。
また、政府がお金を印刷してそれを国民に配ったとしても、そのまま銀行に預金しておく人も多いでしょうから直接的な経済効果に及ばない分も、額にもよりますが半分ぐらいはあるのではないでしょうか。

そうですねえ。
国民一人当たり100万円ぐらい印刷して配ってみてはいかがでしょうか。
半額の50万円が貯金通帳に眠ったとしても、残りの50万が市中に出ますから、飲食店などの小売業から元気になるんじゃないでしょうか。
旅行にも行くし、ホテルにも旅館にも泊まるでしょう。

みんな笑顔になるだろうなあ。

そして何より私が言いたいのは、半分を貯金に回した人たちが損する構造に転換することです。

日本は長年デフレに悩んできていますから、多分30代以上の人たちは消費税以外に物価が上がるという経験を実感していないのではないでしょうか。
私はよく海外へ出掛けますが、特にここ10年ほどですが、東南アジア諸国へ出掛けても物価が安いという感覚がなくなりました。
どこへ行っても「あれ? 値上がりしている。」ということばかりです。

中国や東南アジアの人たちがなぜこれほどまで日本にやってくるかというと、その第一の理由は「安いから。」
日本は今や東南アジアの人たちから見ても物価が安い国になってしまっているのです。
どうしてかというと、30年前とほとんど物価が変わっていないからです。

ということは、私が感じているのは、日本は失われた30年を取り戻すためには物価を上げるしかないのです。
そして、日本の経済規模であれば、ヘリコプター・マネーぐらいやったって、ハイパー・インフレにはならない。
むしろ好ましいインフレになるのではないかと私は考えるのであります。

こういうことは財務省のお役人さんじゃできないでしょうね。
頭が良すぎて先の先まで考えてしまいますから。

でも、このままで行ったら日本はどうにもならなくなりますから、このあたりで一つ、麻生さんが財務大臣のうちに思い切ってヘリコプター・マネーをやってみましょうよ。

物価が上がるということは、相対的に政府の借金が減るということになりますから。

物価が上がって一番困るのは預貯金で生活している人たちということになりますが、そういう人たちには定期的にヘリコプターマネーをやってあげたらいいんですよ。
どうせ皆様方、使わないで貯金するでしょうから結局は実質上のマネタリーベースに反映しませんし、物価が上がれば貯金しているだけだとどんどん目減りしていきますから、証券取引や土地取引も活発になるでしょう。

今の日本に必要なのは適度な物価の上昇です。

この辺りで思い切って国民一人当たり100万円ぐらい、印刷してばらまいてみてはいかがでしょうか。

今回の新型コロナが落ち着いた頃と、オリンピック後の落ち込み防止のために、2発ほどアベノミクスの最後っ屁を期待しております。

やるならケチケチしないで思い切ってお願いします。