祝! 四季島運転開始。

本日はトランスイート四季島の運転開始のニュースでテレビ各局とももちきりですね。

 

関係者の皆様、おめでとうございます。

 

他人事ですが我が事のようにうれしいです。

 

まあ、利用できる人は限られていますから、公共交通機関としてではなくて、新しい鉄道の使い方の提案だと思いますが、それでも、ある程度ピンポイントのマーケットを狙いに行くという点では、ビジネスチャンスを的確にとらえていると思います。

そして、10両編成でも全席34席という定員を考えれば、50万円でも100万円でも予約が取れないぐらい埋まると思いますから、ビジネスとしては十分に成り立ちます。

そういうことを企画実現できるというのは、やはり大きな会社には優秀な人材がたくさんいらっしゃるんだということがわかります。

そして、この国には行列を作って、つまり数十倍もの倍率をくぐり抜けて、さらに大金を払ってこの列車に乗られる人がいらっしゃるわけですから、その方々の人生に成功をもたらした幸運に対しても心から「おめでとうございます。」と申し上げます。

 

だって、私には無理ですから。乗れませんから。

 

お金がないから乗れないというのはもちろんですが、くじ運がないのも事実。

でも、もしお金があったとしたら、私ならきっと別の使い方をしますから、お金があったとしても乗りません。

ということはお金がないということと同じで、なぜならば、今夜の列車にご乗車の方だって、お金があったら、まずは他のものを買ったり、他に使うわけで、でもこの列車に乗っているということは、欲しいものを手にいてれ、払うべきものもすべて払って、そういういろいろ他の使い方もしたうえで乗られているということですから、やっぱりその方の人生の金銭的成功に対しては、素直に「おめでとうございます」と申し上げる私なのです。

なぜならば経営者ですからね。金銭的成功を目指すべく奮闘努力している経営者として、私にできないことをされた方がご乗車されているという点で、素直に尊敬するわけです。

 

さて、このような超豪華列車というのは、私の中のビジネス論的に考えると、最高の列車、つまり頂点を極める列車ということになります。

その頂点がどれだけ高いかというのは、経験しない人間にとって見たら、価格の高さでしか慮(おもんぱか)ることができないのでありますが、それでも私のビジネス論的に考える時、最高峰の頂点というのは、それが高ければ高いほど、その頂から延びるすそ野も広いはずです。

逆に言えば、高い山はすそ野の広さから測ることができるということなのです。

そう考えると、このような豪華列車というものに対して、私は大変興味深いことがあるのです。

それは、このような最高のサービスを売り物にする会社が、この列車以外のすそ野に当たるサービスを展開していないことです。

 

列車の中でお客様のお世話をして、おもてなしをする。お食事を提供し、お飲み物をお客様のお座席へお届けする。つまりこのような豪華列車のサービスは最高峰のサービスのはずなんですが、その最高峰のサービスを提供する会社のすそ野がどれだけ広いかを考えたときに、食堂車も寝台車も車内販売も、片っ端から廃止して、夜通し列車を運行してお客様に各種サービスを提供するということをやっていないんです。

寒いプラットホームや待合室でお客様をお待たせしないようなサービスもしていない。グリーン車のお客様に対して特別待合室もない。そういう会社が最高級の列車の出発前に特別なお客様だけにおくつろぎいただくための最高級の待合室を作って、どのような最高級のおもてなしをするのでしょうか。

最高級のサービスを商品として提供するということは、頂の高い山ほどすそ野が広いという、私のビジネスの常識では理解できないシステムがあるのでしょうかね。

 

100億かけて100万円のお客様を乗せるというビジネススタイルに私は何の異論もありません。

そういうマーケットがあって、それを取りに行くということはビジネスとして当然のことです。

まして、100万円のお客様を乗せた列車がどこを走るのかと考えた場合、やっぱり「ローカル線の横綱」である只見線だって治さなければならないということに気づくはずですから、100万円のお客様を乗せる商品を走らせるために只見線が治るのであれば、これは、新しいローカル線の時代の始まりですから、大歓迎だと思います。

まして私たちの仲間の並行在来線にも通過するだけでお金が入るのですからプラスになりますよね。

 

ただ、不思議なのは、サービスというソフトの最高峰を目指す列車を運転する会社が、安全輸送という基本的な輸送サービス以外のサービスを日常の商品として提供していないということで、なぜなら、サービスというのは経験の蓄積であって、例えば、ワイングラスがどうしたら倒れないか、揺れる列車の中で、シェフがどうやって車酔いしないでお料理を盛り付けるか、とか、そのお料理は、どのようなレシピと経験の積み重ねの上にあるのかどうか、ということを考えると、基礎的なサービスを提供していない、あるいはここ数年でやめてしまった会社が、超豪華な最高峰のサービスをどうやって展開するのか。そのサービスはどこから来ているのか。わずか数回の試運転で、それができるというのは、いったいどういうシステムになっているのか、大変興味があるのであります。

 

まあ、あんまりいうと、ネットを単にスルーできない性格の人から同業者を批判するのか、というようなご意見を頂戴することになりそうですが、たぶん向こうもそう思っていると思いますが、私は同業者だと思っておりません。

 

ネコとネズミなんです。

大きな会社がネコで、うちがネズミ。

 

今の世の中、ネコがネズミに噛みついたら非難されるんです。

でも、ネズミがネコに噛みついたら称賛されるんです。

今の時代は、ネコがネズミの面倒を見てこそ、美談になるし、ネコも称賛されるというものです。

 

だから、不思議だなあと、思ったこと、感じたことを述べさせていただいているのです。

 

ちなみにJRは100億円かけて100万円のお客様をお迎えするビジネスのようですが、うちは1万円のレストランを開店するために1億円かけたかと言えば、答えはNO!

いすみ鉄道のレストランは初期投資100万円なんです。

車両設備や備品に約50万。

残りの50万は、何十人ものお客様をご招待して(つまり実験台になってもらって)、実際にお料理をサービスするオペレーションを何度もやって、最初は臨時運行で失敗を克服して、定期列車化して軌道に乗せるまで1年かけました。

私の古巣はご存知航空会社ですから、最高のサービスというのがどこから来ているかということを理解しているつもりなので、そういうやり方をしたのですが、いきなり最高の列車を走らせて提供する最高のサービスというのは、私としては本当に興味があるのです。

 

まあ、外注事業者への丸投げならば別ですがね。

でも、まさか、自社の最高級の商品を外注や関連事業者へ丸投げはないでしょう。

 

つまり、一言で申し上げるとすれば、いすみ鉄道社長の負け惜しみなのであります。

 

 

でも、明日はいすみ鉄道がテレビに出ますよ。

夜8時以降のNNN「日テレニュース24」。

ぜひご覧ください。