日台友好 平渓線 乗車報告

昨日は台湾北部の平渓(ピンシー)線というローカル線に乗ってきました。
この路線は先日、秋田県の由利高原鉄道が姉妹鉄道締結の調印をした路線で、台北から1時間ほどのところにありながら、たいへん山深く、観光地として有名な九分老街(千と千尋の神隠しの絵のモデルになったところ)や十分瀑布のあるところです。
私はこの平渓線に乗るのは3回目で、前回訪れたのは2005年6月ですからちょうど9年前。
驚いたのは、本線から分岐するわずか10数キロの支線が、今、観光客であふれかえっているんです。
(前回行ったときはガラガラの車内で、孫連れた爺さんが日本人だとわかると、大声で演歌を歌ってくれるような、のんびりとした田舎の路線でした。)
台湾国鉄の七堵機務段(車両基地)の何段長さんと劉さんの2人が同行してくれたんですが、10年前に政権が代わって、こういういらないローカル線を観光路線化しようということになったそうです。
私が訪れた9年前には観光客の姿はほとんどなくて、「今度、この路線を観光鉄道として転換しようという計画があるんですよ。」と説明を受けましたが、その時は私もなんだか「???」だったんです。
この平渓線は、昭和の初めに石炭の積み出しのために建設された路線で、もうその建設当初の役目はとっくに終わっているんです。
日本にも筑豊地区や北海道などに、数多くの石炭積み出しの路線がありましたが、みんな廃止になってしまいました。
でも、台湾のリーダーの人たちは、廃止にしないで観光鉄道にしようと考えたんですね。日本が作ったものであるにもかかわらず。
そして前回の訪問から9年経って今回行ってみて驚いたんですが、とにかく観光客でいっぱいなんですね。
いくら文章で説明してもご理解いただけないと思いますので、どうぞ証拠写真の紙芝居をご覧ください。

[:up:] 平渓線の列車に乗るのはこの瑞芳という駅から。台北から約1時間のところにある駅です。


[:up:] 平渓線の列車はディーゼルカー。こういうラッピングされた観光列車が2~3両編成で、1時間に1本走っています。
ホームには観光客がたくさん。休日でも記念日でもない平日です。

[:up:] 観光列車といっても、外装をラッピングしただけで車内は普通のロングシート。丸くなっているのはエンジンの排気管を通すスペースを覆っているところです。
丸くデザインしているところは何とも昔の中国っぽいですが、この車両は日本製。愛知県の日本車両で作ったものです。
ところで、シール貼っただけで観光列車と言っているローカル線って、千葉県にあるのご存知ですよね。


[:up:] 電化されている本線から分岐するといきなりこういう景色になります。
トンネルは何と素掘りですよ。かつては日本のC12が石炭を運び出していた甲乙丙の丙線規格ですから、木原線と同じですね。


[:up:] ここが平渓線のメインポイント。十分の老街です。
このシーンを見て、「ここなら知ってる!」という方もいらっしゃると思いますが、商店街の真ん中を列車は時速20キロほどのスピードで進んでいきます。
なんだか江ノ電みたいですね。
そう、平渓線は江ノ電と共通乗車の企画もやっているんですよ。

[:up:] 列車交換がある十分駅は上りと下りの列車から吐き出されたお客さんでごった返しています。
この駅には腕木信号機があって、タブレット交換もやっているんですが、それに気づいて撮影しているのは私たちだけでした。
そんなことはどうでもよいようです。

[:up:] 終点の菁桐駅に到着です。観光客のグループが記念撮影。
もうお気づきだと思いますが、観光客としてやってきているのはほとんどが若い人たち。台湾人も多いですが、香港からの人たちもたくさんいました。

[:up:] 菁桐駅に到着したディーゼルカー。
この駅が石炭の積み出しのための駅だったことが、後ろにあるホッパー設備だったコンクリートを見ればわかります。
ところが、このホッパー設備の残骸の上にはイタリアンレストランができていました。前回来た時にはそんなお店はなかったんですが。



[:up:] そこで、気になったので残骸の上にあるレストランへ上がってみました。
上から見るとこんな感じです。
観光客でごった返しているのがお解りいただけるのではないでしょうか。

[:up:] 列車が出て行ってしまうと少し静かになりました。
これが駅舎です。
80年もたっていてかなりボロいんですが、別に新しくしなくたっていいんです。これだって立派な観光地なんです。
上から見ると、Nゲージのローカル線駅舎と同じようなつくりでしょう。
だって、日本時代の建築ですからね。


[:up:] こちらはその駅前の老街。老街とは昔ながらの町並みで、お土産物屋さんになっています。これでも立派に観光地なんです。お金がなくても、いくらでも勝負できるということの証明ですよ。
こういうシーンを見て、いすみ鉄道の課題がすぐにピンときます。
この日は昨日、水曜日ですね。
いすみ鉄道は土休日は大変賑わっていますが、平日はシーンとしています。
つまり、いすみ鉄道の課題は平日の需要をどう掘り起こすかということなんです。
台湾国鉄は、地元の観光地と見事に連携して、わずか10年足らずでここまで観光鉄道を成功させているんです。
いすみ鉄道の先生なんですね。
だから私は台湾国鉄からいろいろなことを勉強させていただいていて、由利高原鉄道の春田社長に続いて、集集線というローカル線と姉妹鉄道提携をしたいと考えているんです。
平日需要を開拓するのがいすみ鉄道の課題ですが、その課題を達成するためには台湾国鉄を見習って2つのことをやらなければなりません。
その1つは、地域交通を考えるような役所が担当していたのではだめだということ。これは、観光地を作り上げることですから、今までのお役所の管轄では無理なんです。そろそろ自分たちの手に負えないということを理解していただかなければならない時期に来ているということなんです。
もう1つは、地元がしっかり動くこと。
今の段階では動いているとは到底言えません。
これだけの観光客が来るということは、私が就任してからのいすみ鉄道を見ていればわかることですから、いつ来ても良い体制を地元が作らなければなりません。
それがおもてなしの精神です。
「観光客? 俺たちには関係ないよ。」と聞こえてきそうですが、それでは「おもてなし」という言葉が、この地域にはないということになりますね。
そのためには地元が動かなければなりませんし、動けないのであれば、動ける人たちに来ていただかなければならないということなんです。
いすみ鉄道は房総半島の観光資源であることは間違いありません。
私が就任して5年間、私が稼ぎ出すキャッシュフローで鉄道を運営してきましたが、いつまでもそれでいすみ鉄道が維持していかれるわけではありません。
いすみ鉄道はすでに地域鉄道の域を超えていてるということなんです。
ご理解いただけますでしょうか。
皆様方が捨てようとしていたいすみ鉄道が、ここまで元気になったというのは事実なんですが、このままにしておいくと、目前のチャンスをつぶすことになると思いませんか?

[:up:] 駅のすぐ横で見かけた竹筒。
願い事を書いて吊るしてあります。
1本200円ぐらいでしょうか。
これなら、国吉駅だってすぐにできますよね。
できないんじゃなくて、やらないだけなんです。

[:up:] 平渓線の旅を終えて瑞芳駅で記念撮影。
何機務段長と劉さん。私の大切な友達です。
二人ともお付き合いいただきましてありがとうございました。
さて、私が今回彼らにお持ちしたお土産はこちら。

いすみ鉄道もなかの新バージョンとして試作中の「台湾国鉄DRC1000型」。
平渓線や集集線で走る車両で、上の記念写真の後ろの車両です。
私は、こういうことが友好の始まりだと考えているのです。
どうです、皆さん、欲しいでしょ?
いすみ鉄道もなかの解説に書かれているシークレットの1つとして7月ごろにデビューの予定です。
シークレットの1つ?
ということはシークレットは2つ以上あるってことですか?
なんて野暮なことは聞かないでくださいね。
それがシークレットということですから。