ホテルの朝ごはん

私は出張でいろいろなところに出かけます。
このところ、体調が回復してきましたので、たまっていた出張を精力的にこなしており、昨日、おとといは山陰の中核都市に泊まりましたし、先週は九州に3泊しました。
来週は大阪に2泊する予定です。
こんな感じでシティーホテル、ビジネスホテルを問わず、年間30~40泊ぐらいします。
決まった土地に行く場合には定宿を決めている場合もありますし、いろいろなところに泊まってみたいという気持ちもありますから、行くたびにインターネットで検索して、自分の予算にあった快適そうなホテルを予約して出かけます。
そんなホテル選びの重要なファクターの1つが朝ごはん。
出張中は朝ごはんはきちんと食べることが体調管理につながりますから、料金に朝食が含まれているかどうか。また、朝食付きのプランがあるかどうかが、私にとっては重要事項なのです。
昔、私が20代、30代だったころは、シティーホテルはもとより、ビジネスホテルでも朝食が付いているホテルはほとんどありませんでした。
そういう時代には、ホテルのレストランや喫茶室で食べる朝食は結構高いものでしたので、ホテルで食べることはせずに、当時はまだあまりコンビニが普及してませんでしたから、駅の売店やパン屋さんで朝ごはんを仕入れてホテルの部屋で食べたり、早めにチェックアウトをして、喫茶店でモーニングサービスを利用するなど、少しでも安く上げる努力をしたものです。
何しろ、ちょっと良いホテルになると、30年前の当時から朝食は1500円とか2000円するのは当たり前で、当時のホテルの営業姿勢は、宿泊客に部屋の冷蔵庫の中身をどうやったら飲んでもらえるかなど、部屋代以外にお金を落としてもらうことが売り上げ増につながると信じていましたから、ホテルの朝食は客単価を上げるための大切なツールだったのです。
なぜなら、宿泊客にとっては朝食はホテルで食べざるを得ない状況ですから高くても食べるだろうということらしく、外からのお客様を相手にするランチの方が、価格が安いなんてことは当たり前だったのです。
朝ごはんと昼ごはんを比べて朝ごはんの方が料金が高いというのは、常識で考えたらおかしなことですが、今でも意外とそういうホテルはあるものです。
それが、東横インに代表されるような格安のビジネスホテルチェーン店が、いつの頃から朝食無料サービスを始めました。
フリカケがかかったおにぎりに味噌汁といった簡単な朝食ですが、そのホテルに宿泊すれば、朝ご飯が無料で食べられるとあって、出張経費を安く上げたいサラリーマンでホテルの予約がいっぱいになるようになりました。
それまでは、ホテルの朝食は、ホテルにとって客単価を上げるためのツールだったものが、無料の朝食を付けることによって、客室そのものの稼働率を上げる戦略に変化してきたのです。
そのやり方で、客室の稼働率を上げたホテルが、次々とチェーン展開に成功しているのが明らかになると、いろいろなホテルが無料の朝食を出すようになりました。
そうなると、朝食を出すか出さないかというレベルで勝負することが難しくなりますから、お客様の囲い込みのための差別化が見られるようになります。
フリカケおにぎりと味噌汁だけだった無料の朝食が、ホテルによってはいろいろなおかずやサラダが付くようになったり、夕食サービスとしてカレーライスが無料で食べられるようになるなど、各種のサービスが、今ではいろいろなホテルで行われるようになり、そういうホテルはどこも高い稼働率を誇っているようです。
そんな中で、なかなか形態変更に踏み切れないのがシティーホテルと呼ばれる高級ホテルで、いまでも1800円とか2000円ぐらいの朝食料金を取ってビュッフェスタイルの朝食サービスを行っているわけですが、そういうホテルでもインターネットを注意深く検索していると、朝食付きの格安プランで標準の室料よりも安いものを良く見かけますから、私はそういうプランを見逃さないようにしてホテルを選んだりしています。
また、ホテルは朝食だけではなく、部屋の広さや設備なども時代によって変わってきています。
バブルのころは、やたらに狭かったビジネスホテルのシングルルームやユニットバスなどが、最近建てられたホテルではゆったりしていて、それでいて部屋代が安いところもたくさんあります。
だから、昔泊まったことがあるホテルに今泊まってみると、設備の陳腐化が目立って結構がっかりしたりしますから、老舗ホテルといえども要注意なわけです。
ホテルの建物の中に高級レストランや結婚式場や大きな会議室があるようなシティーホテルが苦戦している中で、ビジネス需要に特化したチェーン店のビジネスホテルが高い稼働率を誇っているのは、時代の流れをよく見て需要を掘り起こした成果だと思いますが、同時に料飲部門で売り上げの半分以上を稼ぐシティーホテルのビジネススタイルが、時代の流れに合わなくなってきている。でも、箱モノを抱えているから容易に業態変更できないジレンマを感じます。
そんなジレンマはホテル業界だけではなくて、鉄道業界にも各所に見られますが、その一つが夜行列車。
ビジネスホテルが駅前にたくさんできて、宿泊料もサービスもこれだけ変化しているのがここ20年、30年の時代の流れなのですが、寝台特急はB寝台6300円という値段のまま、昔ながらの設備そのままで走っているのですから、誰も乗らなくなって、「そろそろ辞めたいんですが。」と鉄道会社がギブアップを申告するのも無理はないと私は思います。
国鉄時代から続く夜行列車は、言うなればすべてのお客様に向けたシティーホテルのようなものですが、その走るシティーホテルからレストラン(食堂車)が無くなってかれこれ20数年。
私から見たら、商売として何のテコ入れもしていない状態では、一部の客層に特化した高速バスや、価格を含めた営業戦略に熱心な航空会社が様々な輸送商品を出してきているなかで、昔のままの寝台特急にお客様を取り込むことは不可能だということなのです。
ただ、気になるのは、商品としての夜行列車を何のテコ入れもできないようでは、そういう会社の他の商品もたかが知れてるのではないでしょうか、と当然お客様は考えるということで、つまりは鉄道会社の商品企画力に疑問符が付いてしまうということなんです。
だから、車掌の接客対応をはじめとする鉄道の車内サービスにはあまり期待しないし、洗練されてないのは目に見えていますから、私はどうしても飛行機を利用することになるのです。
ちなみに、私が日本で一番素晴らしい無料の朝食を食べさせると思っているビジネスホテルは、釧路駅前にあるロイヤルイン。
例えばよくあるのはビュッフェ形式のホテルの朝食で出される焼き魚は、いったいどこへ行けば仕入れられるのだろうかと思えるような小さくて薄っぺらな鮭だったりするじゃないですか。
ところが、このホテルでは厚さ1センチ以上ある普通の切り身の焼き魚が出るんです。もちろん好きなものを好きなだけ。
先日泊まった時は、鮭と鱈とあいなめの3種類。
魚好きの私にはたまりません。
その他のおかずも豪華ですし、焼きたてのパンもたくさんありますから、皆さんも話のタネに、このホテルの朝食を食べるためだけに釧路に行く価値がありますよ。
ホテルから宣伝費をいただいているわけではありませんから、リンクは貼りません。
あとはインターネットで検索してみてくださいね。
ホテル業界でやっていることを見ると、世の中の変化が良くわかるというものです。