広告の原点


毎年この時期になると大多喜街道に掲示されるいよかんの看板。
道路を走っていると100mおきぐらいに道路わきにある看板に目が留まります。
車のドライバーに繰り返し繰り返しメッセージを送るわけです。
こういうメッセージの送り方は実に重要で、その度ごとに
「あれ? いよかん? ポンカン?」
「おいしいのかなあ?」
「いくらだろうか?」
とドライバー心理に訴えかけます。
メッセージはいたってシンプルで
商品名・値段・味 などが一つ一つ大きな文字で書かれていて、決して1枚の板にいろいろな情報を細かく載せているわけではないわけです。


どんな人が商売をしているのだろうか気になって、車を停めて街道沿いのトラックをのぞいて見ると、近くの農家のおじさんという人がニコニコしながら売っている。
こういうトラックでやってくる商売は、たいていろくなものを売っていないので、誰も信用しないのだろう。
それを見越してか、おじさんは売っている全部の種類のみかんを試食させてくれたのです。
それも、明らかに試食用とわかるような良いみかんではなく、くすんでいたり、しみが付いているやつを商品の中からヒョイと取り上げてナイフで切って「はい、どーぞ。」
実は私、みかん等のかんきつ類は大の苦手。
決して自分からは食べない。
その私が食べてみて、「おいしいね、あまいね、おじさん」

ということで、会社のデスクの上にはキヨミオレンジ、いよかん等の袋がどっさりとなったのです。
会社の中で、みんなで食べて、みんな甘いねえと言ってくれましたが、そんな古典的なトラック商売に引っかかる私のことを「甘いねえ。」と言ったのか。
でも、私は思うんです。
こんな山の中の農家のおじさんだって、どうやったらお客様が来てくれるか、自分の店に立ち止まってくれるかということを真剣に考えている。
それなのに、商売をやっているというのに、あまりにも策を考えていない人が実に多いわけです。
お客様は何もしなければ来てくれません。
でも、自分たちでは何もしないで、お客様が来ない来ないと言っているだけで何も考えていない。
そしてたちが悪いことに、そういう何も考えていない人に限って、人がやっていることを見て、その人がうまくいっていたりしようものなら、文句を言ったり、邪魔をしたり、ひどい場合には潰そうとしたりする。
そういうことって、皆様の周りにもあるんじゃないでしょうか。
私は、このみかん屋のおじさんはすごいと思います。
でも、商売人なら当たり前のことだと思いませんか?