社長はあまちゃん?

5月17日のブログを読んだ方から。
社長さん、ビジネスなんだからもっと積極的にいかなくちゃ。切り捨てるところは切り捨てて、良いとこどりしていくべきでしょう。
社長さんは意外に人情肌なんですね。外資系出身だから、もっとドライかと思ってた。
こんなご意見をいただきました。
大企業に勤めていたり、都会に住んでいる人の中には、ドライに切るところはバサバサ切っていくような考えが当然だと思っている人もいらっしゃるでしょうね。
いちいち地域の人のことなんか考えていたんじゃ、ビジネス何てできないし、地域の人の話を聞いていたんじゃ、物事は先に進まないよ。
こういう意見があるのも事実でしょう。
ただ、一つだけはっきりさせておかなければならないこと。
それは、「外資系ってドライだ」、と日本人の多くが思っているようですが、実はこれは間違いというか、勘違いなんです。
私は、外資系の会社に20年以上勤務してきましたが、外資系の会社がドライだなんて考えたことはありません。
私が勤務していた会社はイギリスの会社ですが、日本に飛行機を飛ばしてくるに当たっては日本のマーケットを熟知する必要がある。
日本という地域に住んでいる人たちが、どういう嗜好があって、何を好んで、どのようなサービスを望んでいるか。
そのバックグラウンドにはどのような文化があるのか。
日本でも東京と名古屋と大阪ではどういう考え方の違いがあり、所得格差やお金に対する考え方はどう違うか。
そういうことを外資系の会社は、とても気にしていて、地域の最重要戦略の一つに考えています。
なぜなら、そこに住んでいる人々を相手にして商売を展開するということは、そこに住んでいる人たちを知らなければならないからです。
私はロンドンの本社の幹部職員から、
「あなたたち日本人を雇っているのは、イギリス人ではわからない日本人のお客様に対するサービスを展開してもらうためなのです。」といつも言われていました。
その地域のお客様は何を求めていて、そのために会社は何をしたら喜んでもらえるのか、ということを外資系ではいつもいつも考えているわけで、その大元になるのは、その地域や地域に住んでいる人たちを尊重し、大切に思うということなのです。
少なくとも私はそういう会社に勤めてきたし、私の知る限り、他の外資系、例えば私の友人たちが勤務するアメリカ系の航空会社だって、皆、同じように自分たちが商売をしようとする地域というものを大切にしているのです。
でも、日本人は意外にこういうことがわかっていないわけで、外資系はドライだと思っているし、今回の西武の一件もそうですが、一方的に外資が悪者になるようだし、ひどい場合は、外人は何を考えているかわからない、何ていう人もいる。
でも、外資系って、そんな非人道的な会社じゃなくて、日本の会社以上に日本的な面がたくさんあるのです。
逆に、私の目から見ると、日本の会社の方がひどい場合があります。
地域を全く顧みなかったり、企業活動を通じて社会貢献をするということをはき違えていて、本業では地域を否定しながら、慈善事業的にほんの一部で社会貢献と称する活動をやって、それを大々的にPRしていたり。
本当ならば本業で地域社会に貢献するのがビジネスですから、それって偽善もいいところなんですが、日本にはあまり宗教的バックグラウンドがないから消費者も気付かない。
消費者だけでなく従業員も気付かないから、自分の会社はいい会社だと信じている人も少なくないわけです。
そういう会社に共通しているのは、海外を知らないということ。
地域外での商売の経験がないし、開拓していく必要性もない会社だから、そんなこと考えたこともないということだと思います。
だから、私が浪花節のようなことを考えてることに、「社長は甘ちゃんだ。」と笑っている人もいるのは知っているけれど、世の中って捨てたもんじゃないし、甘ちゃんだって良いし、お互いを思いやって助け合っていくことは、決して甘ちゃん何かじゃなくて、その地域で商売をやっていくに当たって、人としてとても当たり前なことで、でもとても大切なことなんですよ。
ということを言いたいわけです。
例えば、官から民に変わったような会社は、その規模が大きければ大きいほど、地域のことなんて考えない傾向があるし、そういう会社の幹部連中は、それが「アメリカ型経営だ」と思っているかもしれないけれど、それは大きな間違いで、外資系はもっともっと真剣に地域のことを考えている。
あなたたちが、外資系はドライで、地域のことよりも株主のことを最優先に考えているのが外資系だなんてことを信じているのは大きな勘違いで、なぜそんなことを思うかというと、それは、ふつうの企業なら創業時に築きあげられるはずの企業理念というものが、そういう企業には存在しないからなのです。
電力会社もそうですが、地域のことを考えているとは思えない大きな会社が多い。
東海村でまた発生した放射能漏れ事故を見ても、地域を念頭においていないことがよくわかるのではないでしょうか。
あまりにも世界を知らない人たちが経営する「スーパードメスティックカンパニー」が、世の中をリードできるはずがないのです。
なぜなら、そこには人が住んでいるから。
そこに住んで毎日生活をしている人がいるから。
そういうことを考えられないような会社は、いくら規模が大きくても、その規模の大きさを持って自社を正当化しようとしても、世界を見てきた私から見たら、チャンチャラおかしい「甘ちゃん」なのであります。
人は、世界を知れば知るほど、身近にある地域というものの大切さを理解するものだ。
というのが私の結論です。
だから、世界最大の航空会社で長年を勤務した人間が、ローカル線で奮闘しているのです。
世界を知れば知るほど、ローカル線の駅前商店街や、そこに住んでいる人たちの笑顔の大切さがよくわかるようになりますから。