昨日、石破さんと話したこと

昨日のフォーラムで石破さんと話したことはこんな内容でした。

テーマは「街づくりとは」

地方創生という言葉が言われてからかなりの時間が経過していますが、現状はどうなのか。うまく行っているところは良いけれど、うまく行ってないところにはどういう原因があるのか。

・街づくりの振り返り
・鉄道と街づくり
・街づくりから地方創生

この3点が具体的な内容ということでした。

私:まず大事なことは、今、すたれてしまっている街というのは急にすたれてしまったわけではなくて、何十年もかけてすたれてきている。ということは、長年その街に住んできた人たちが、街をそのようにしてしまったということ。これは歴然とした事実だから、その街に住んでいる人たちに「活性化をしろ」と言っても無理である。
でも、その街に住んでいる人たちは、まぎれもなく街の主役であるから、一緒にやって行かなければならない。

石破:結局、そこまでする必要があるんですか?とか、やらなくてもいいでしょう?とか、自分たちの時代がそれでよかったからと、やろうとしない人たちが多い。そこに尽きるのではないか。
(ユーカリが丘の山万の例を出して)ゆりかごから墓場までという街づくりに専念している。大変な成功事例だが、他の地域ではやろうとしていない。


▲撮影:石渡哲朗氏

私:100%のオレンジジュースがコップに入ってます。
しばらく置いておいたらどうなりますか?
オレンジジュースが蒸発して量が少なくなるでしょう?
でも、実は蒸発したのは水分だけで、中身のオレンジジュースはさらに濃くなっているということなんです。
ローカル鉄道も同じで、車や他の交通手段へ移行できる人たちは移行してしまってるから、今残っている人(鉄道を利用している人)は濃くなっている。つまり、鉄道じゃなければ移動できない人たちが鉄道に乗っている。
利用者の人数ばかりを見ているのではなく、その中身、つまりニーズが濃くなっていることをまずは理解しなけらばならない。

ただ、少子化、人口減少で、その人たちだけのための交通手段では将来的に成り立たなくなるのは明らかなので、その部分を観光で補うというのが現状考えられるやり方で、観光が盛んになれば、当然地域も潤うし、活気が出る。

石破:(私のことを指して)こういう天才がいて、その天才がお金をかけずにローカル鉄道というものの全く新しい使い方を見つけて、地域まで一緒に栄えるという実例を示している。他にもたくさん天才たちが実例を示しているにもかかわらず、話を聞いたり視察に出かけたりはするけれど、「すごいですねえ。」と、そこまででお仕舞い。
全くやろうとしないところがほとんど。
政治家が口を挟めば、「偉そうに、お前なんぞに何がわかるか」と言われる。

鳥塚:どんな商売もそうだが、お客様が減ったら何をするか?
お客様を増やす努力をしなければならない。
ローカル鉄道は地域の利用者が減っている。このままでは立ちいかなくなるということが明らかであるのなら、お客様を増やす努力をするのが基本であり、商売の原理原則である。
ところが、旧国鉄系の大手鉄道会社はそれをやっていない。
私は、地域にお客様を連れてくるような仕組みを作っている。

石破:地域需要に頼るのではなく、「わざわざ乗りたくなるような列車」を走らせて、「用事もないのにその地域に行く」という需要を作らなければならない。
だいたい、寝台列車というものが無くなって、日本の鉄道は衰退した。
夜間の時間を上手に使うということが経済原理的にも効率的だということは明らかであり、昔はみなそうやって移動していた。


▲撮影:石渡哲朗 氏

鳥塚:今は寝台列車で目的地へ行くという需要はなくなってしまったけれど、寝台車に乗ってみたいという需要はあるはず。これがまさに「目的地へ行くための夜行列車」ではなく、「乗ることそのものが目的の夜行列車」だ。トキめき鉄道ではどこにも行かない夜行列車というのを走らせていて、1人16000円するにもかかわらず、大人気で満席になっている。

石破:鳥塚さんがやったキハの中には、コレクションの中づり広告がかかっていて、確か「フルムーンパス」の広告があったけど、ああいうのを見ると、本当に涙が出るほど感動しますよ。

鳥塚:はい、今、トキめき鉄道で走らせている昭和の急行列車の中にも昭和の中づり広告をかけてあって、気づいた人は感激していますよ。

【会場に、長野県小海町の黒澤町長さんがいらしてまして「小海線をどうしたらよいか」というご質問をいただきました】

鳥塚:小海線は簡単ですよ。何とでもなります。
その理由は、
・新幹線に接続していること。
・行き止まり式ではなく、小淵沢で中央本線に接続しているので、日帰りで周遊できる線形であること。
・清里、野辺山があること。
清里はかつて一世を風靡した観光地ですが、今は廃れてる。でも、誰でも知っている。鉄道最高地点はあるし、高原だし、軽井沢や浅間山も近くにあるじゃないですか。
まして、小海駅は小海町で駅舎を購入して、そのときに自動券売機が撤去されて手書きの切符を売っているのですから、それだけでもみんな来ますよ。

【一言で言って、地方創生のネックになっているのは何だと思いますか? というプレゼンテーターから石破さんへの質問】

石破:イオンができたから商店街がダメになったと言ってる商店街はダメです。イオンと競合しないような商品を取りそろえるなど、自分たちが差別化できる工夫をしなければだめで、イオンを理由にして、商店街がダメになることを正当化しているようではだめです。

鉄道も同じで、高速道路ができたからローカル鉄道はダメになったということではなくて、その鉄道の利点を見つけて、高速道路や新幹線を使って乗りに来てもらえるような努力をするべきですし、それが都会人が探している「今だけ、ここだけ、あなただけ」だと思います。

ということで、記憶の限りですが、こんな感じの内容でした。

先日もお話しさせていただきましたが、あとは今後、私の周囲で発生するであろう様々な動きに対して、私の中にあるリトマス試験紙を時々使ってみようと思います。