本気の地方創生

2019年9月9日にえちごトキめき鉄道の社長に就任して今日でまる4年。
5年目に入ることになりました。

就任直後、2019年10月の台風の大雨は皆様ご記憶のことと思います。
新幹線の長野車両基地が水没したあの時ですが、トキめき鉄道でも二本木-関山間の築堤が崩壊。
就任後いきなりの試練でした。

その後、2020年の年明けから武漢の肺炎が世界中を蔓延し始め、観光シーズンを迎える春には緊急事態宣言。
観光列車「雪月花」どころではありません。県をまたぐ移動が原則禁止となりました。

そんな先が見えない状況ではありますが、「一筋の光を目指して」ということで、地元の皆様方、県民の皆様方へ向けて夜行列車体験号や、地元の皆様限定の雪月花などの運行を行いました。
どこにも行かれない新潟の皆様方に、この機会に地元の良さを知ってもらおう。そうすればいずれコロナが終わった時に、外からやってくる観光客の皆様方に対して、地元の皆様が自信を持って地域の良さをお伝えできるようになる。コロナで一旦はしゃがみ込むことになりますが、それは次へのジャンプへの準備だ。という思いからでした。

2020年秋には国の支援を使ってD51を直江津に持ってきて、春田さんに来ていただいて力を貸してもらい、翌年2021年4月に直江津D51レールパークを開園。
同時進行でJR西日本から455・413系車両を譲渡していただき、整備を重ね、2021年7月から国鉄形観光急行を運行開始いたしました。

今思えば、コロナで足踏みしていた時代にきちんと準備をしていたことになりますが、(少なくとも私はそのつもりでしたが)、人類が初めて経験するコロナという禍の中で、「そんなことやってどうするの?」「それでうちの会社が黒字になるとでも思ってるんですか?」という反対意見も会社の内外には根強くありました。

そういう人たちに対して、「では、どうしましょうか?」「何か他に考えはありますか?」と聞くと、皆さん黙ってしまいます。
つまり、リーダーたちとてどうしてよいかわからなかったのです。

ローカル線を今後どうしていこうかということでさえ手探りで、正直言ってどうしてよいかわからない人たちに、コロナ禍が追い打ちをかけての二重苦、三重苦の時でした。

そういう時は黙って首をすくめて静かに嵐が過ぎ去るのを待っているという方法もあるかもしれません。でも、それは「困難な時代を何とかして前に進めなさい」という公募社長として私に与えられた使命には反することですので、私は失敗しても命取りにならないように配慮しながら、雪月花、D51レールパーク、国鉄形観光急行を進めてきました。

と、同時に、毎日ご乗車いただく高校生の皆様方にご利用いただこうと直江津駅のホームに自習室を作ったり、東京出張からお帰りになられる地元の皆様方の新幹線接続の利便性を向上させるため、「おかえり上越」という列車を設定し、運転を開始いたしました。

おかげさまで、雪月花は2020年こそ落ち込んだものの、2021年度には過去最高だった2019年とほぼ並び、昨年度、2022年度には2019年度を大きく超える数字をはじき出しておりますし、国鉄形観光急行も利益率では雪月花をはるかに超える収益をもたらしております。
直江津D51レールパークも春から秋までの土休日のみの開園ではありますが、2年連続年間1万人を超える入場者を達成し、鉄道の町直江津の皆様方に親しまれる存在となることができました。

この夏の時点で、落ち込んでいるとすれば新幹線から接続する出張などのお客様の数ですが、これは世の中の流れとして、出張そのものが減っていくだろうということはコロナの中ですでに予測しておりましたので、それを補う手段として、地元に観光客を呼び込もうということで、様々なイベントやツアー、あるいは観光列車を走らせてきて、その数字を合わせると、ほぼコロナ前の水準に戻ってきている状況です。

そして、えちごトキめき鉄道という会社の名前と、直江津や上越という名前を以前にも増して全国に知らしめることができたと考えています。

これが私が就任して以来の4年間の成果です。

その他にも、車両の検査を自社で行うべく準備を進め、皆様ご存じのように国鉄形車両のクハ455の検査を直江津運転センターで実施いたしました。この冬はさらに残りの2両、モハ412とクモハ413の検査を同様に直江津で行う予定で、業務改善に向けた長期的な目標も着々と進んでおります。

さて、わたくし的にはこの4年間、コロナという未曽有の危機はありましたが、その時々で的確に判断し、やるべきことはきちんとやってきたと自負しておりますし、それなりの結果が出ていると考えております。

代表取締役社長としての任期は来年の6月までで、残すところ1年を切っておりますが、さてさて、世の中を見渡すと、コロナ禍をきっかけに日本全国同時進行的に疲弊が進んでいて、コロナが終わっても立ち直れないようなダメージを受けていたり、あるいは、コロナを理由にして、これ幸いと今までのお約束をなし崩しにするような動きも出てきているようです。

そんな中で、私のところにもいろいろとローカル鉄道の活性化のお話をいただいておりますが、地方創生が叫ばれて幾多の歳月が経過しているのも事実でして、では、結果が出ているのかというとどうもそうではない。

その違いは何なのだろうかと考えたときに、「地域活性化」ということに本気で立ち向かっているのか、それともお題目だけ唱えて「やってるふり」をしていたり、あるいは目標達成度などの進捗状況をチェックせず、「自分たちは地域活性化をやっているんだ。」ということに満足してしまっている地域も多くみられると考えます。

私はローカル鉄道を通じて全国いたるところの沿線自治体や都道府県とお付き合いさせていただいておりますが、本気で立ち向かっているところと、「とりあえずやりました」的なところの差を目の当たりにしています。
そんな中で、最近ではいろいろお話やご相談をいただいた際に、「この人たちは本当にやる気なんだろうか? それとも、立場上とりあえずやっているふりをしているのだろうか。」ということを見させていただくことにしています。

つまり、私の頭の中にはリトマス試験紙があって、地域の代表の皆様方や役所の皆様方とお話をさせていただく中で、その試験紙が何色に変わるかということを見させていただいているのです。

なぜなら、ここ2年ほど冬になると足の神経痛が出てきていますし、そんなことから、自分の残り時間というものを意識するようになりまして、本気度のないところに時間を使うことがためらわれるようになってきたからです。

ということで明日から5年目。

私の仕事に対する姿勢は常に本気です。
本気じゃなければ4年でここまでの成果は出せないでしょう。

その私が本気で取り組む価値がある仕事なのか、それともそうじゃないのか。
いろいろなところで皆様方の本気度を私の中のリトマス試験紙でチェックさせていただいて、人生の残りの時間を地域に貢献させていただきたいと考えております。

9月17日、私のよき理解者であります石破さんとのフォーラム、「本気の地方創生」。
千葉若葉文化センター。

本気の皆様方、どうぞご参加ください。

考えてみたら石破さんとのお付き合いも長くなりますね。
今回もよろしくお願いいたします。