自分の地域の価値

人は自分が住んでいるところの価値をなかなか理解できないものだと思います。

私は東京生まれの東京育ち、いわゆるチャキチャキですが、東京などはちっとも良いとは思いません。
でも、皆さん東京にあこがれているから二言目には「東京のどこがそんなにいいの?」と言ってしまいます。

東京よりも地方の都市の方がずっと良いと信じています。
所得は確かに東京の方が良いかもしれませんが、住居費や生活費を考えると、トータルで見ると絶対に田舎の方が生活は楽だと思います。
まあ、教育とか医療とかは別としてね。

この間、直江津の皆さんと話をしているときにも思ったんですが、皆さん直江津という故郷を誇りに思っている。なんとか盛り立てたいと思っている。
それはとてもいいことだと思いますが、では、どうやって盛り立てますか?ということになると、正直言って策がない。

その理由は、自分たちが住んでいる直江津という地域が、都会人の目で見たら、あるいは外国人の目で見たらどのように見えているかということの理解が不足しているから。

外から見たら自分たちの地域がどう見えるのか、ということは、つまり顧客心理なわけで、東京の人やインバウンドの外国人が地域にとってのお客様だと考えた場合、お客様が何を求めてこの地域にやってくるのかということが理解できなければ、つまりはお客様にいらしていただくことはできませんし、もしかしたら今来ている人たちは、たまたま通りすがりに立ち寄っただけなのかもしれません。

地元の人は二言目には春日山とか上杉謙信とか言いますが、それっていつの話かと言えば400年以上も前の話ですから、来る人はもう来ているわけで、新しいお客様を捕まえるツールにはならないのです。

と、私はいつも思っています。

自己満足で観光をやるなら別ですけど、産業として観光をやるならば、きちんとした戦略がなければなりませんし、その戦略のイロハのイは「顧客心理をどうつかむか」だと私は思います。

さて、本日のニュースですが、上越市のふるさと納税額が初めて1億円を超えたとのこと。
よくわかりませんが、収支は3万円だとか?

上越市のふるさと納税初の1億円超え 前年度の約4倍 実質収支は3万円の黒字

こういう報道をするところを見ると、「せいぜい頑張ったって3万円なんだから、そんなことやってどうするの?」的な感じなんでしょうけど、私は以前に同じことを言われました。

レストラン列車なんかやったって、大した利益にならないじゃないか。
そんなことやってどうするんだ?

これ、5~6年前の話ですけど、自治体の長の発言です。

私は、「あぁ、この人はバカなんだなあ。」と思いました。
なぜならば経済のことを全く分かっていないからです。

百万円稼いで、百万円出て行ったとします。
手元に残ったのはゼロです。
だったら何もしないけれど、何も出て行かないのと同じではないか。

きっとその人はそういう考えの持ち主だと思いましたが、経済というのは生き物ですから、たとえ手元に何も残らなかったとしても、百万円稼ぐという行動が必要なわけです。

奇しくもコロナで皆さん経験しましたよね。

売り上げゼロで支払いもゼロ。

売り上げ百万で支払いも百万と同じでしたか?

違うでしょう。

ふるさと納税も同じようなものなんです。
なぜなら、市民の皆様方は他の自治体に一生懸命ふるさと納税をしているからね。

だから、一生懸命ふるさと納税の企画をやって、都会の皆様方に応援していただけるような商品を作って、宣伝をして数字を出していかないと、置いていかれるのです。

つまり、上越市のふるさと納税の収支が3万円ということは、これでやっとお金が出ていくのを食い止めたということなのです。

前にもお話したと思いますが、世の中全体が前に進んでいるときに、自分も一生懸命前に進むことでやっと世の中に追いついているということですから、自分が前に進まなければ世の中からは置いていかれるのです。

コロナが明けて、世の中が一斉に前に向かって進んでいるときに、何もしなかったり、のんびり構えていたりしたら、置いていかれるのです。

多分、上越市は中川市長の号令の下、今まであまり熱心じゃなかったふるさと納税に力を入れて来ていて、その結果が1億円越え。でも、収支は3万円。
ということは、上越市としてはかなり一生懸命やっているのでしょうけど、これでやっと世の中の流れに追いついているということであって、スタートラインに立っているようなものなのです。

県内の他の地域では50億越えの自治体がいくつもある中で、上越市はその2%にも及ばないということなのですから。

では、どうしたらよいかということになると、まずは自分たちが他の地域からどう見られているかということをしっかりと自覚して、世の中の皆様方が上越市に対して何を求めているのか。そしてそういう志向に合ったふるさと納税の企画を出していかなければならないということなのだと私は思います。

私は直江津をはじめ、高田や二本木、あるいは頸城という地域は全国区になれると考えていますから、老体に鞭打ってこちらで頑張っているのですが、地域活性化は私の仕事ではありませんので、こうして時々文句を言って、できれば早く気付いてほしいなあと思う次第でありますが、新潟県全体が、長野県や富山県に比べるとぬるま湯だと思いますから、そろそろ本腰を入れていかないと、一生懸命前に進んでいるつもりでも、実は遅れを取っているということになると危惧しています。

まぁ、地域活性化は私の仕事ではありませんので、余計なおせっかいかもしれませんが。

とにかく、「俺たちはこれだ!」と地域の歴史や伝統ばかりを誇示しているやり方は、自己満足でしかありませんから、他の人たちからどう見られているのかということを念頭に置かなければならないと私は思うのです。


もう稲刈りが終わったかな?(千葉県新田野の田んぼ)