大新潟展 in 宮崎

私が新潟へ来て5度目の冬が終わろうとしていますが、新潟で一番最初に驚いたのは「枝豆の生産量日本一」ということ。

皆さんも「へ~」って思うでしょう。

で、もっと驚いたのが「枝豆の消費量日本一」ということ。

どういう統計かは知りませんが、そういうことなのです。

で、なんで驚きに値するかというとですね、枝豆の生産量日本一であり、枝豆の消費量日本一ということは、つまり「自分たちで作って、自分たちで食べてしまっている」からです。

東京の人間からすると、枝豆で有名なのが山形の「だだちゃ豆」ですが、実は茶豆というのも新潟の黒崎が発祥と言われているのです。

でも、山形の人は皆さん自分たちで作ったものを東京へ輸出して外貨を稼いでいるんですが、新潟の人は自分たちで食べちゃってるんです。
日本一の生産量を誇る枝豆を経済に流通させることなく、お金を稼ぐことなく、食べちゃってるんですよ。

では、なぜ、そういうことが起きているかというと、豊かだからです。
新潟というところは豊かな地域なのです。
米と酒と魚が採れる。

これに対して、今は米がとれるようになりましたが、新潟を取り囲む山形も富山も長野も皆さん米が取れないから江戸時代から必死になって生きてきた。
だから、自分たちの産品を東京へ輸出して経済流通に乗せて外貨を稼いでいるのですが、新潟は米と酒と魚があるから、そんなことをしなくても大丈夫なのです。

だから、例えば「観光」についても弱い。
観光なんてやらなくたって、別にどうってことないし、十分に生きてこられたからです。
「そんなことやってどうするんですか?」
これが新潟の人たちの口癖のように感じます。
別に観光とかやらなくたって、米と酒と魚があれば十分に生きていかれる。
たぶん皆さんそういう土壌に江戸時代からいるわけですから、あえて意識はしていないでしょうけど、そういう風に思っているんでしょうね。

この写真は東京駅大丸地下の日本酒売り場です。
私は正直言って驚きました。
何が驚いたかって、新潟のお酒が3種類しかないんです。
鶴齢と寒梅と、あと何だったかな。
これだけ日本酒が並べられている中で3つしかない。
あとは福島だったり山形だったり、広島や高知など。
日本酒と言えば新潟、新潟と言えば日本酒なんでしょうが、東京の百貨店では新潟の日本酒のシェアが実に低い。

たぶん米も同じでしょう。
今時、新潟の米ばかりがもてはやされる時代ではありません。
米なんてものは、今の時代、青森県だって北海道だっておいしいお米が採れますからね。
別に新潟じゃなくてもいいわけです。

つまり、何が足りないかというと、宣伝力、プロモーション力、マーケティング力が、新潟県は他県に比べて圧倒的に低い。

観光に対して「そんなことやってどうするの?」と考えているような人たちがたくさんいるから、自分たちの地域が外から見たらどう見られているかという視点が欠如しているのです。

確かに新潟の酒はうまいです。
でも、今時、日本酒ってどうなのよ。
と、思いませんか?

新潟の米はおいしいですよ。
私、毎日食べてますからね。
定食屋さんに入っても、どこのお店もご飯がおいしいのが当たり前です。
でも、今時、米食ってどうなのよ。
と、思いませんか?

つまり、新潟県は立ち止まっているのです。
おそらく、江戸時代から豊かで、十分に生きてこられたから。
でも、時代はどんどん先に進んでいる。
そういう時に、立ち止まっているということは、時代から見ればバックしているのと同じなのです。
だから、お米もお酒も、急速にブランド力が落ちている。

昔の話をしてもしょうがないですが、30年前には新潟のお酒って偽ラベルが出るほど人気がありました。
どこか得体のしれないお酒に、新潟の銘柄のラベルを貼れば高く売れた時代があったのです。

でも、今現在、東京の百貨店の日本酒売り場に占める新潟のお酒の割合は実に低い。
日本人の好みが変わったこともあるかもしれませんが、日本全国の酒蔵が一生懸命努力してお酒を造っているという中で、置いていかれているんですよね。
東京の一等地の百貨店は売り場面積当たりの売り上げがシビアに計算されていますから、売れないお酒は置かない。
そういうところで、新潟のお酒が置かれていないというのは現実なのです。

そんな中で、私が注目するのは九州は宮崎の山形屋さんという地域一番の百貨店で「大新潟展」が開催されていることです。

九州と言えば焼酎ですよね。
私も毎晩芋焼酎を飲んでいますが、芋焼酎と言えば皆さん鹿児島県だと思うでしょう。
でも、日本一芋焼酎を生産しているのは宮崎県なんです。

その宮崎県の百貨店で「大新潟展」が行われていて、新潟のお酒が殴り込みをかけているのです。
芋焼酎の本場で日本酒のキャンペーンですよ。

これはなかなか勇気ある行動で、チャレンジングだと思いますが、実は鹿児島の山形屋さんもそうなんですが、九州の皆様方には新潟県というのがかなり興味を持っていただいているようでして、その証拠にこの宮崎山形屋の大新潟展も第16回なんです。

先ほども申し上げましたが、百貨店というのは一等地にありますから、売り場面積当たりの売り上げに対して実にシビアな計算をしています。
その百貨店で16年も続いて新潟展をやっていて、そこに上越地区から日本酒を持って行って頑張っていらっしゃるのですから、私はこういう活動は、売り上げはなかなか難しいかもしれませんがきちんと評価されるべきだと思いますし、もっともっと積極的に行ってもいいのではないかと思います。

今、お隣の長野県はワインのブランド化が進んでいて、すでに山梨を越えたと言われています。
気候の変化を上手に利用して、長野県のワインが世界に通じるワインとして脚光を浴び始めているようです。

でも、日本のワイン発祥の地はどこでしょうか?
新潟県上越市ですよ。
川上善兵衛という人がマスカット・ベリーAというブドウからワインを生産したのが日本のワインの発祥ですからね。
上越市の岩の原ワインというのが、日本のワインの発祥なのです。

ね、新潟ってすごいでしょう?

だから、もっとどんどん外に対して発信して、外から見たら自分たちがどのように見られているかという視点に立って世の中と付き合っていかないと、どんどん遅れていくだけだと私は思います。

「観光? そんなことやってどうするの?」

と言っているようでは、一事が万事、新潟県はそのうち世の中から相手にされない場所になると私は思います。

宮崎山形屋の大新潟展、お近くの方はどうぞ足をお運びください。

地方百貨店では規模は小さいかもしれませんが、そういうところへも出かけていく丁寧さが今の新潟には必要だと私は思います。

▼3月12日まで
今から飛行機予約してわざわざ出かける人がいたらおもしろいなあ。
出張されていらっしゃる皆様、長丁場ですが頑張ってください。
https://www.yamakataya.co.jp/miyazaki/event/archives/1200