メリークリスマス

私が子供の頃。
まあ、かれこれ半世紀も前の話ですが、クリスマスというのはおじさんたちが夜の町に繰り出して大騒ぎをするというのが定番でした。
三角の帽子をかぶって、バーやキャバレーでクラッカーを鳴り響かせて「ジングルべ~ル」とやるのがクリスマスの光景。
これが当たり前でした。

それがいつの頃からか、多分1970年代後半からでしょうか。
クリスマスは家族で楽しむのが一般的になってきました。
チキンの丸焼きを買って、ケーキを買って。
お父さんが早く帰って来る。

そういう家族のだんらんがクリスマスの光景になりました。
当時、作家の藤本義一さんが、イレブンPMかなにかで、「クリスマスというのは、水商売の女性の自殺が一番多い時期なんですよ。今までお店に来ていたおじさんたちがみんな家庭に帰っちゃって、孤独感や疎外感に苛まれて堪えられなくなるのがクリスマスなんです。」と言っていたのが印象に残っています。

そのクリスマスが1980年代半ばになると、映画「私をスキーに連れてって」に代表されるように、恋人たちが大切な時間を過ごす時期になりました。
彼と彼女が二人だけで仲良く過ごすのがクリスマス。
世の中はちょうどバブルに向かっていて、都心のホテルのレストランやお部屋の予約が取れなくなっていったのがこの時期。今年のクリスマスを楽しんだその時に来年の予約も入れていく、なんてのが当たり前になったバブル時代。
そのころ私は既に所帯を持って子供が二人。
どんどん上がる物価に追いつくサラリーなどもらえるはずもありません。当然のように生活するのがやっとでピーピーしていましたから、スカイラインとかセリカとか買って、スキーへ行こうなんて言っている連中を見ると「ふざけるなこのやろう!」と思っていましたが、そういう時代に青春を謳歌した皆さんが、すでに還暦を迎えていらっしゃるわけですから、いろいろな時代を見てきた私としては「おもしろいなあ。」と思うのであります。

ということで今夜はクリスマス。

単身赴任の私はいつものように鍋料理。
出張から帰って冷蔵庫を開けると賞味期限が切れて干からびかけた納豆がありましたので、油揚げに詰め込んで焼いてみました。それに冷凍庫の中にあった海老とブロッコリーのアヒージョ。そして豆腐と油揚げと白菜と大根の鍋。
添えるネギも捨てるような青いところを細かく刻んで余すところなく使ってみました。

いやあ、旨いのなんのって。

世間ではクリボッチというそうですが、半世紀にわたってクリスマスの変遷を見てきている身としては、その身の処し方としては、まあ、こんなもんでしょうと思うのであります。

クリボッチの皆様、これを機会に浪費しなかった分を貯金しましょうね。

そしてすべての日本国民の皆様へ、

メリークリスマス!

でございました。

明日も良い日になりますように。