富の創造 その3

7月13日に掲載した「富の創造 その2」に続く本日はPART3。

しばしお付き合いください。

 

前回は「サラリーマンというのは労働者であるから、労働者である以上、もらっている給与の高い安いはともかくとして、下層階級である。」というお話でした。

毎日満員電車に揺られて、ストレスの多い会社で一生懸命にお仕事をされていらっしゃる皆様方に向かって、「サラリーマンというのは下層階級です。」などと申し上げるのは大変に心苦しいのでありますが、現代社会において、上流、中流、そして下層階級というのはどういうものか、最もわかり易く分類するとこのようになります。

 

上流階級:生活のために労働をする必要のない人たち。

 

中流階級:労働をしなくなっても今の生活を変更する必要のない人たち。

 

下層階級:生活のために労働をしなければならない人たち。(労働をしなくなったら今の生活の質を変更しなければならない人たち。)

 

これはあくまでも経済原則的に申し上げている分類ですが、サラリーマンが下層階級に位置すると申し上げるのは、生活のために労働をしなければならないからであって、その労働の対価として得られるお金は会社から支払われる給料であり、これが労働力の商品化であり、サラリーマンができる富の創造です。だから、労働をしなくなってしまえば収入の道が閉ざされて、生活に追われる傾向になるわけです。

 

さて、皆様方に夢と希望を持っていただくのが使命のローカル線の社長としては、何とか下層階級から抜け出す方法を見つけていただくための助言をしなければならないというのが仕事でありますから、どうしたら下層階級から抜け出せるかどうかというお話をしてみたいと思います。

 

少し前までは、まあ、毎月の収入の中から一生懸命貯蓄をして、ある程度お金が貯まったらそれを元手にして不動産や株式に投資すれば、不労所得が得られますよ、という方法が声高に言われました。いろいろなビジネス書が出されて、セミナーなども開かれていますから、すでに始めていらっしゃる人も多いのではないでしょうか。

 

これは確かに間違っていないのですが、ひとつだけ必要な条件があります。その条件というのは、物価上昇が前提になっているということです。不労所得としてのお金の得方としては、簡単に言うとインカムゲインとキャピタルゲインの2通りあって、インカムゲインとは例えば株式ならば配当収入であったり、不動産投資ならば家賃収入であるわけで、これは経済がある程度順調であれば、当面の間は得ることができます。でも、景気が悪くなれば株式配当はなくなりますし、家を借りてくれる人がいなくなれば家賃収入は得られなくなります。

 

家賃収入に関して言えば、いろいろな事業者が「あなたも大家さんになれますよ。」的な広告を打ってシステムを作っていますが、マンションを5つも6つも購入した経験がある私として見たら、「本当に大家さんになって儲かるのであれば、そういう事業者は人にやらせないで自分でやるはずだ。」という疑問がありますから、あまりお勧めはいたしません。

 

どうしてかというと、例えば、アパートやマンションなどの収入向け不動産を1棟購入後、全額自己資金での購入でなければすぐに返済が始まるわけですが、その返済額は果たして家賃収入以下で収まるだろうか。逆に言えば、返済金額以上の家賃収入が本当に入ってくるのだろうかという不安が発生します。

事業者は購入希望者のその不安を解消してもらうために、「もし入居者が居なくても、向こう10年間は家賃保証をしますから安心です。」と甘い言葉を用意していますね。でも、よく考えてみるとわかることなのですが、アパートや賃貸マンションというのは、基本的に、新築であれば入居者は居るものなんです。だけど10年ぐらいしてきて、陳腐化が目立つようになると、徐々に入居者が減ってくる。そうなるとリフォームなどお金をかけて整備しなおさなければならなくなる時期が来るのですが、その時期になると家賃保証が無くなるのです。

これは一種のまやかしです。

でもって、家賃収入が減る中で、借入金の返済だけはずっと続き、さらにリフォームなどの整備費用が掛かるわけですから、よほど立地条件が良いところでもない限り、こういうプランは頓挫することは目に見えているのです。

 

これがインカムゲインの落とし穴であって、ではどうしたらよいかというと、そこにキャピタルゲインが伴うことで抜け出せるのです。キャピタルゲインというのは、つまり資産そのものの値上がりによる差益。10年前に3億円で1棟買いした収入向け不動産が、資産価値5億円ぐらいになっていれば、ということは物価の上昇があるということですから家賃収入だって上がってくる。新しくリフォームしようと思っても資産価値が上がっているから銀行から追加融資が得られる。でも、3億円で10年前に購入した時の借入金の返済額は増えることはありませんから、キャピタルゲインによって救われるわけです。まして、その時点で売却したとしても、借入金の残金を返済したうえで手元に大きなお金が残りますから、まあ投資としては成功と言えると思います。

 

だから、物価上昇が必要なわけで、適正な数値で緩やかに物価上昇してくれさえすれば、資本主義経済は全体的にうまく回りますから、政府と日銀は「緩やかなインフレ」をお題目のように唱えているのです。

 

でも、不動産を安く買うためには、景気が悪くて、皆さん持ちこたえることができず、何とか財産の切り売りや整理をしようという時ですから、「今なら不動産投資が良いですよ。そうすれば家賃収入が得られるようになりますから。」などという宣伝があちらこちらで見られるような世の中になってくると、その時はすでに買いではない、ということになるのです。

 

だから、遺産や財産がたっぷりある人は別として、毎月のサラリーの中から一生懸命貯蓄をして元手を作るような人にとってみたら、世の中でブームになったり流行っているようなことには手を出してはいけませんよということなのですが、そうなると夢も希望もなくなりますよね。

でも、大丈夫です。なぜなら、世の中が変わってきているからです。

 

産業資本主義全体の構造が変わってきていますから、うまくその波に乗ることができれば、何億円などという大きなお金は無理だとしても、今の給料の倍ぐらいのお金を稼ぐことはできるでしょう。会社の中でいくら頑張ったって給料が倍になるのは無理なことだと思いますが、そのぐらいのお金であれば、ちょっと器用な人であれば、あるいは気が回る人であれば、大きな冒険をせずとも得られるようになるとしたら、それって労働者階層からの独立になるのではないでしょうか。

 

というようなことを私は20年ぐらい前から考えて実践しているのであります。

 

(つづく)