いすみ鉄道の「雨の日スペシャル」

いすみ鉄道社員ブログに掲載されている「雨の日スペシャル」。

 

実は、急行列車のヘッドマークが雨の日にはいつもと違うのが取り付けられて走ることを言います。

 

昭和の国鉄形ディーゼルカーで運転されている急行列車は土休日の運転で、土曜日は「夷隅」、日曜日は「そと房」、それ以外の休日にはヘッドマークなしで走っていますが、雨が降るといつもと違うヘッドマークが取り付けられます。

実はヘッドマークはイベント用などに10数種類用意してあって、雨の日にはその日の担当乗務員が好きなヘッドマークを取り付けて走ってよいですよ、と社長である私がスタッフに伝えているのです。

だから、「明日は雨になりそうだ。」という時には、翌日の担当乗務員は前の日からそわそわ、うきうきしているようで、きっとこれが楽しいのだと思います。

 

昨日今日はこんなヘッドマークで走りました。

 

昨日です。

まず、朝の列車はお決まりの「夷隅」。

途中から雨模様になりましたので「水郷」になりました。

 

今日は台風の接近で朝から雨でしたので、「くろしお」

「さざなみ」

「白浜」

「夕凪」

そして「うち房」。

 

何と、5種類です。

コンプリートされた方はいらっしゃいますでしょうか。

 

全て国鉄時代の準急列車や急行列車に取り付けられていた当時のヘッドマークを再現しています。

準急列車というのは昭和43年のダイヤ改正まで走ってい走行距離が100km程度までの短距離列車で、昭和43年のいわゆる「ヨンサントウ」と呼ばれる白紙ダイヤ改正で急行列車に統合されて「準急」という呼称は無くなりましたが、いすみ鉄道のキハ28は昭和39年製ですから当然、準急列車もありなのです。

「白浜」「くろしお」は紀勢本線じゃないのという人もいるかもしれませんが、実は紀勢本線の列車に名前を譲る前は房総の列車だったんです。ていうか、同じ名前の列車が両方走っていたのですが、考えてみればお分りいただけるように、白浜も勝浦も、どちらの沿線にもありますからね。

「さざなみ」だって、今の「さざなみ」じゃなくて、実は準急列車や臨時列車の名前として房総で活躍した国鉄時代の列車の再現なのです。

 

さて、ではどうしてこのような雨の日スペシャルを始めたのかというお話ですが、実は、房総半島のような日帰り観光地は雨が降るとお客様が来ないという弱点があるからです。

北海道や沖縄なら予約しているし、旅行費用も払い込んでいますから、大雪だろうが台風が来ようが飛行機が飛ぶ限りは皆さん出かけるでしょうけど、日帰り観光地は雨が降ったらお客様が来ない。

だから、それを逆手にとって、雨が降ったらお客様が来るようにしようというのが狙いです。

 

キハは2両編成でいつも同じところを行ったり来たりしているだけですが、ヘッドマークを変えることでいろいろな列車に変身することになります。そういう雨の日スペシャルをやれば、「雨が降ったらいすみ鉄道へ行こう。」ということになるのです。

実際、こうして大雨の中を一生懸命撮影していただけるありがたいファンの方もいらっしゃるわけで、沿線にお客様がいらっしゃるということは、たとえ運賃収入には直接結びつかなくても、地域にとっては必ずプラスになりますから、長年地域の支援に支えられてきた第3セクター鉄道としては、それでもいいのではと私は考えています。

 

何しろ国鉄形というのは全国区で、例えばこのキハ28という形式は、系列の仲間を含めると北海道から九州まで全国で走っていましたので、北海道出身の方でも九州出身の方でも、初めていすみ鉄道にいらしても懐かしいと感じていただける優れものの役者なのです。

 

 

この写真は石破さんにいらしていただいたときの1枚。

大臣ですから全国いろいろな所で最高のおもてなしを受けているはずです。

そういう方をおもてなしするのに、いすみ鉄道はお金がありませんから勝負になりませんよね。

 

その時に、いすみ鉄道のスタッフが気を利かせて、「砂丘」というヘッドマークを取り付けました。

本当は御宿の「砂丘」をイメージしているのですが石破さんは鳥取の方ですから、当然この列車を見れば、ご自分が子供の頃乗った山陰本線の列車を思い出していただけたのではないかと思います。

だからこの笑顔。

大臣をおもてなしするのにもお金をかけずに喜んでいただけるという「いすみ鉄道方式」なのです。

 

お金をかけずに、今あるものをどうやって有効に使ってお客様に喜んでいただけるか。

 

これが私が考えたいすみ鉄道の「雨の日スペシャル」で、今、スタッフや乗務員が、その心を理解して、しっかりやってくれているということなのです。

 

(写真は渡辺新悟さん、古谷彰浩さんの撮影。いつもありがとうございます。)