世の中の見方。人の見方。

6月の終わりにテレビ各局がビートルズ特集をしていました。

来日から50年だということですが、年月の経過とは恐ろしいものがありますね。

 

人間が生きていくということは常に新しいものを生み出していき、それに伴って古いものが淘汰されていきます。

原始の時代から、人間はその繰り返しで進化してきました。

ビートルズが日本に上陸した50年前のことは、私はうっすらとした記憶しかありませんが、当時は大変な騒ぎだったと思います。

 

男が髪の毛を伸ばしている。

ギターを弾いている。

ビートルズのレコードを買った。

 

これだけで大人たちは若者を不良扱いしました。

 

その少し前の時代は、例えばオートバイや自動車が庶民でも手が届く乗り物になりましたが、若い人がオートバイや自動車に乗っているというだけで、「あいつはカミナリ族だ。」「あいつはカーキチ(車きちがい)だ」などと大人たちから後ろ指を指されました。

 

テレビゲームができたときもそうでしたし、ビデオデッキが出始めた時も、携帯電話が普及し始めた時もそうでした。

それまでレコードだったものがCDになって、テープだったものがディスクになって、それがカードになっていく。

最近ではドローンなどというマシンもそうですが、技術革新に伴う形態や使用方法の変化は、一般的には年齢の低い人たちほど受け入れやすく、年齢が高くなると対応に苦慮すると言われています。

昔、テレビのリモコンの操作や、ビデオデッキの使い方に戸惑って、「最近のものは良くわからないなあ。」と言っていたのは、たいてい50を過ぎたおじさんやおばさんたちでした。

私はこうした世の中の変化をずっと見てきていて、その時々で、どういう人たちがどういう言動をするか、ということにとても興味を覚えてきました。

だから、テレビのリモコンや携帯電話、CDプレーヤーなど、個々の商品を云々するのではなくて、人間というのは新しいものを目の当たりにしたときに、どういう行動に出るのかということを観察して、その行動パターンを分析することにとても興味があるわけです。

たいてい人間というのは、それまでにない、全くの新しい商品が出てきた時には、だいたいある一定の割合で、「賛同してすぐに飛びつく人」、「賛同はするものの様子見の人」、「賛同しようかどうしようか判断できない人」、「賛同しない人」に分かれるものです。

そして、このそれぞれのグループを構成する人たちを、年齢別、性別、出身者別、経歴別というフィルター通してみると、様々なところでとても興味深い結果が出てくるものだ。そう考えるようにしています。

そうすることによって、世の中の当事者になるのではなくて、少し離れた視点から客観的に見ることができますし、それを踏まえて自分が行動するようにすれば、世の中がどう変わろうが、どんな新しい商品や新しい考え方が出てきたとしても、自分の中で対処する方法を見つけることができると考えるからです。

 

だから、ここ数日世間をにぎわせている「ポケモンGO」も、「へえ、なるほどなあ。」と思いながら、「やっぱり、そうだな。」と思っているわけです。

つまり、サッと飛びつく人たちと、様子見の人たちと、賛同しない人たちです。

 

このサッと飛びつく人たちは、実は「イノベーター」とか「アーリー・アダプター」と呼ばれるのですが、アメリカの大学の研究では人口の約15%がこの範疇の人々だとされています。

これに対し、様子見で、なかなかその気にならず、かえって新しいものを批判したり否定したりする行動に出る人たちも同じぐらいの割合で存在すると言われています。

つまり、新しいものが社会にすっかり定着し、当たり前の時代になるまでは、そういうものには手を出さない人たちです。

人類の歴史が進歩発展の歴史であり、人間は新しいものを生み出すことでここまで進化してきたという事実を考えると、イノベーターとかアーリーアダプターと呼ばれる人たちが社会をけん引してきたことは紛れもない事実なんですが、ある一定の割合でそういう新しいものを見向きもせず、逆に否定するようなことをする人たちがいるというのも事実ですから、今回の「ポケモンGO」の騒動を見ても、「おもしろい」と飛びつく人もいれば、「危険だ」「けしからん」と最初から否定してかかる人たちが出てきているというのも実にわかりやすい当然の現象であります。

 

私はいつもだいたいこのように考えて世の中を見るようにしているのですが、こういう時にやってはいけないことというのがあります。それは、新しく出てきたものを否定するということです。

新しく出てきたものは定着するまでに時間が必要です。つまり、多くの人たちにとっては不慣れなもので、とっつきにくく、よくわからない存在です。でも、自分が理解できないという理由で否定することは、世の中の基準が自分を中心に、自分のレベルでなければならないという考え方につながりますから、否定をするということは、ある意味では恥ずかしいことだと私は考えます。

物事の良しあしを判断する基準は、自分の経験則や知識の中にあるという考え方は、広く一般的には通用しないのですが、「よくわからない。」という人たちの中には、自分の知識や経験で判断できないというだけのことで、物事を否定したり拒否したりする人もいるわけで、それが個人ならまだしも、個人の集合体である組織や会社ともなると、やはりいただけないのです。

 

こういう私の考え方に、多くの人たちは賛同していただけると思います。ここ数日を見ていても、ふだんはスマホのゲームなどやらないおじさんやおばさんたちが、「どれどれ」とアプリを入れてはじめています。ある意味実にけなげな人たちですが、彼らは別に若い人たちに好かれようとか、共通の話題を持とうとかいうのではなくて、今の50歳ぐらいの人たちは先ほども書きましたように、いろいろ技術革新の末に今の世の中が出来上がってきたのを見て育ってきていますから、素直な気持ちで興味があるのだと思います。

 

個人だけじゃなくて会社や企業もそうですね。学校などの公共的な施設もそうですが、「危機だ」「禁止しろ」という「何かあると誰かが責任を取らなくてはならないから、とりあえず規制しよう。」という人たちがいるグループと、「これは良いチャンスだ。うちにたくさんのお客さんを呼ぶツールにしよう。」と考える鳥取県のような地域も出てきます。

このように、「ポケモンGO」のような一つの現象を見ると、意外とその人個人やその会社がどういう考え方の持ち主かがよくわかるものです。

若い人たちは自分の周りの大人たちや、ごひいきにしている会社や地域が、どういう考え方をしているか、その考え方の癖や、基本的な性向を判断する材料にできると思いますがいかがでしょうか。

 

今回の「ポケモンGO」は今までの新商品と違って、わずか数日でこれだけ人気になったのにも理由があります。

ふつうなら15%の人たちが「面白いねえ」と言って真っ先に始めるのでしょうが、今回は3割4割、あるいはそれ以上の人たちがいきなりはじめています。その理由はポケモンというキャラクターがすでに登場から20年が経過し、一般的になっているということと、スマホもすでに十分に普及しているからで、これはハードの変革ではなくて1つのソフトの導入だけの話ですから、実に受け入れられやすい環境にあったということです。

逆に言うと、サブミナルなどを仕組まれたら怖いなあと思わないでもないではありませんが、世界各地をアドレス化して、実際にそこを訪ねさせることが可能になったということですから、いすみ鉄道のようなローカル線にとっては千載一遇のチャンスだと私は考えています。

 

いすみ鉄道でも「危なくてしょうがない。」と眉間にしわを寄せている社員と、「早速やってみようかなあ。」という社員がいます。社長としては、いったい個々の社員が物事をどうとらえて、どういう考え方をする人間なのかということが、はっきりとわかるまたとないチャンスでもあります。自分の会社の従業員がどちらの15%に入るのか、それとも真ん中の70%に入るのか、今後の組織構成にかかわることですので、じっくりと観察させていただきたいと思っております。

これが社長の「ポケモンGO」の見方ということです。

 

と、一応公言しておきますから、あとは自分たちで考えてみてくださいね。

 

世の中の法則といえばもう一つ。

 

50年前にビートルズサウンドを真っ先に取り入れたのは当時の10代20代の人たちでした。

年寄りたちからは「不良だ」と呼ばれていましたが、その年寄りたちを「古い」とか「時代遅れだ」と言い返していました。

50年たって、今度は当時の若い人たちが年寄組になっています。

そして今、その人たちは若い人たちに向かってなんて言っているでしょうか。

これも観察に値するところです。

今でも当時の気持ちを忘れずに、若い人たちをしっかりサポートしていっている人たち。

自分には関係ないとなにも気にしていない人たち。

若いやつらはけしからん、礼儀も知らないと、ことあるごとに憤慨している人たち。

これも上の割合とほぼ同じぐらい一定の割合で存在するんです。

若い人たちは、自分の周りにいるおじさん、おばさんたちが、どういう考え方の人たちなのか、よく観察して、判断して、お付き合いする人しない人を考えた方が良いと思います。

 

私の観察分析によれば、昔から長年鉄道趣味をやってきているおじさんたちは、70歳の人でも80歳の人でも、たいていの人は若い人たちの見方のようです。

自分たちが積み上げてきた鉄道趣味業界に関心を示してくれて、次に引き継いでくれる若い人たちに対して、とても好感をもって接してくれている方が方多いですから、鉄道趣味を通じて、いろいろな世代の方々とお付き合いすることは、大きな人生勉強になりますし、やがて自分が年取った時に、若い人たちにどう接するかということも、勉強材料としてはとても価値あるものだと思います。

 

やっぱり、鉄道趣味は素晴らしい。

世代を超えて一つのテーマに取り組むことができる数少ないアイテムですよ。鉄道は。

そうは思いませんか。

 

大切にしたいと私は思います。

 

まあ、ポケモンブームは、一過性のもので、多分、急速に鎮火しますから、その部分も観察させていただこうと思っています。