価値がわかるかどうかが問われています。

本日の東洋経済オンライン。
南阿蘇鉄道の記事が出ていました。
熊本地震で被災した「南阿蘇鉄道」は蘇るかどうか。
いすみ鉄道でも懇意にしていただいている鉄道写真家の南正時先生が書かれた記事です。
ローカル鉄道というのは、昭和の時代から地域住民の足として活躍してきました。
でも、自動車社会になって、皆さん自動車の便利さを知るようになり、少子化の時代、人口減少に直面して、鉄道の利用者は激減しています。
だから、「もう要らない」といって鉄道を捨ててしまう地域が日本全国で見られました。
確かに自分たちの生活では必要ないのですから、要らないと言えば要らないかもしれません。
でも、時代が変わって、鉄道が要らないということは、もしかしたら、その鉄道が走っている地域だって、日本全国から見たらすでに要らない地域になっているかもしれません。
自分たちは、普段の生活に鉄道を必要としなくなっているかもしれませんが、外から来るお客様はどうやってその町に来たらよいでしょうか。
「バスがあるじゃないか。」
という方がいらっしゃるかもしれませんが、鉄道が廃止されると、それに代わって運転されているバスも遅かれ早かれなくなっているというのが今までの歴史です。
そしてオンデマンド交通などにとってかわられるわけですが、地域内の輸送はそれで何とかなるかもしれませんが、外部からの人は来なくなります。
要らない地域と言われることもないまま、見向きもされなくなっていきます。
だから、そうならないために、鉄道をうまく使っていくことが求められるわけで、私がいすみ鉄道で展開しているのは、インフラとしての鉄道は活用の仕方次第で、地域に人を呼ぶツールになりますよ、ということです。
これがローカル鉄道のもう一つの価値なのです。
阿蘇の外輪山のふもとを走る南阿蘇鉄道の写真を見ると、「いいところだなあ。行ってみたいなあ。」とたくさんの人が思います。
これは広告塔でありツールなわけです。
そして、その写真を見て、熊本県や阿蘇山に観光客が来るわけです。
でも、だからと言って阿蘇観光に来る人たち全員が南阿蘇鉄道に乗るわけではありません。
だから、ローカル鉄道は観光のツールにはなるけれど、それだけで黒字になるというものでもありません。
そこのところをどう考えるかということが求められるわけで、それがローカル鉄道の価値だということです。
先日、同じ熊本県の熊本電鉄さんも訪問させていただきました。
くまもん電車を走らせたところ、外国人観光客が1万人乗りに来たそうです。
九州の地方私鉄に外国人観光客が1万人もやってくるって、すごいことですよ。
でも、「それでいくらの収入になるんですか?」と言われれば、熊本電鉄は全区間乗っても片道370円ですから、1万人乗せたって370万円にしかなりません。
1年間に外国人が1万人乗車するという奇跡的なことが起きても、370万円しか売り上げにならないんです。
「だったら、そんな余計なことやらなくたって良いじゃないですか。」
という意見の人も当然いるでしょうね。
でも、考えてみてください。
くまもん電車をお目当てに熊本市に1万人の外国人が来ているということは、そういう皆さんが食事をして、宿泊をして、お土産を買ってという大きなお金が落ちるわけです。だから、くまもん電車は熊本に人を呼ぶツールとしての役割を果たしているわけで、交通機関というのはインフラですから、近視眼的に「乗って何ぼ」というだけのビジネスではないわけです。
トータルに考えたら、走っていることそのものに価値があるのは明白なんですが、「株式会社なんだから黒字にしろ」的な考え方を長年やってきて、株式会社は鉄道だけじゃなくて、いろいろな田舎からみな撤退して、その結果として、今、田舎は廃れてしまったというのが現実なんですね。
そう考えると、南阿蘇鉄道の価値というのは、ある意味明白で、日本政府が外国人4000万人を表明している以上、国際的観光地の阿蘇に観光鉄道としてのローカル線は絶対に必要なのです。
だから、何としてでも治す必要がある。
お金がかかると言われていますが、要はお金の問題だけだということでもあるわけで、田舎の自治体には無理な金額だとしても、国を挙げて復興を行う過程では、私は復活できると考えています。
そのために、全国各地の皆様方が「復興支援」のために切符を買ってくれたり、グッズを買ってくれるわけで、そういう行為は署名以上の効果がありますから、私は、その部分でお手伝いさせていただいているのであります。
考えても見てください。
九州の山の中の小さなローカル線に対して、東京、大阪をはじめ、秋田の山の中、鳥取の山の中のローカル鉄道沿線の人たちが、身銭を切って「支援します。」と言っているわけですから、これは何も南阿蘇村の地域交通の話ではないわけで、つまり、私たちは全国各地から「忘れてはいませんよ。」「きちんと応援してますよ。」という言葉を熊本に届けているのです。
こういうことができるのがローカル鉄道の価値であり、今、問われているのは、そういうローカル鉄道が持つもう一つの価値が偉い人たちに理解できるかどうかということなのであります。
南正時先生の書かれた東京経済オンラインの記事、ぜひお読みになっていただきたいと思います。