ベジ・ミール弁当 発売について

3月1日から、いすみ鉄道の新しい駅弁「ベジ・ミール弁当」を大多喜駅で発売いたします。
お弁当の内容につきましての詳細は こちら をご確認ください。

このお弁当は、菜食主義の方々の中でも、ビーガンと呼ばれる完全菜食主義の方々へ向けたお弁当です。
日本人の教育の中では、「好き嫌いなく、なんでもきちんと食べる子」が良い子であるとされてきました。
最近でこそ、アレルギーの人が増えた関係で、人によって食べられないもの、食べてはいけないものがあるということが、世間的にもだいぶ認識されるようになりましたが、それはせいぜいこの10年の話で、私たちの世代は親の世代が戦争経験者ですから、「食べ物を粗末にするな。」から始まって、「お父さんが子供のころは食べ物がなかった。」とか、「世の中には食べたくても食べられない子供がたくさんいる。」などと、親や学校の先生から毎日のように口を酸っぱくして言われた世代で、親の世代ほどではないにしろ、食べ物を残すとか、捨てるとか、そういうことにはとても気が引ける教育を受けてきました。
だから、日本人は基本的には何でも食べるし、食べられないものがあるという人は、一般的には前述のようにある種の食物にアレルギーを持っているとか、あるいは、健康上の理由で、摂取を控えるように言われているなどという場合に限られると思います。
ところが、日本を一歩出ると、そういう個人の好き嫌いとは全く別の次元で、各種の食品や食材を食べることができない人たちがいるのに気が付きます。
それは宗教上に理由であったり、自分の主義主張であったり、理由はいろいろですが、少なくともいえるのは「何でも残さずきれいに食べる子は良い子」という教育や考え方は通用しないのが世界の現実です。
例えば、隣国の韓国、台湾、中国にも、素食文化(ベジタリアン)はありますが、もう少し遠く、インドネシアやマレーシアになると宗教上の理由で食べられない食品がたくさん出てきます。そして、そういう人たちが、日本に観光で訪れた時にたくさんの問題が発生します。
日本は2020年に向けて外国からのお客様を2000万人にしましょうという国を挙げてのキャンペーンをしていますが、ということは、さまざまな食文化を持った人たちが日本にやってくるわけです。
でも、大都市の大きなホテルならともかく、現実問題として地方へ行ったらまずそういう食文化に対応できていませんし、例えば新幹線に乗って「お腹が空いたなあ。」と思っても何を食べてよいかわからないのです。
「肉がだめなら魚の弁当があるし、寿司だってあるだろう。」
日本人はせいぜいその程度の認識しかありませんが、では、その魚のお弁当の魚を調理するときにバターが使われているかという疑問をお客様が持った時に、買う前に判断できるシステムがありません。
牛肉と豚肉はダメだけど、鶏肉なら食べられるという人が、ではから揚げ弁当なら大丈夫と思うかもしれませんが、そのから揚げを揚げる油に牛脂やラードが使われているかもしれません。
そういう、食物に対するデリカシーというのが日本人には全くなくて、日本人的に一番気になるのはカロリーがどれだけで、塩分は何グラムかという程度なのが、日本の食文化、特に弁当文化なのです。
私は航空会社にいましたから、あらゆる宗教の食文化にも、自然志向の食文化にも、健康上の理由の食文化にも対応できる体制を航空会社は持っているということを知っています。でも、残念ながら、鉄道の食文化には買う前に外人が判断できる基準を示している弁当などほとんどなくて、例えば「野菜たっぷりのお弁当」とか、「玄米のお弁当」などというものは存在しますが、外国人が食べられるかどうかという観点から作られているわけではなくて、健康上肉よりも野菜の方が良いですよ、というコンセプトで商品化されていると見ることができます。
私は、そんな疑問をスーパードメスティックカンパニーの鉄道食文化に抱いていたところ、ふといすみ鉄道の地元を見渡してみると、ニューヨークで修業を積んで日本に戻られて、千葉県の食材が気に入って、大多喜に移り住んでレストランをされているご夫婦がいることに気づきました。
このレストランは健康食でもなく、宗教食でもありませんが、使用する食材を追求していくと、結果として外国からのお客様にも自信を持って受け入れられるお料理をお出ししているのですから、私は彼らお願いをして、日本人はもちろんですが、外国からのお客様がいらしても困らないような、そんなお弁当を作っていただこうということで、今回のこの「ベジ・ミール弁当」が誕生したのです。
(つづく)