地方創生 どうなるの? その2

農協改革が地方の農家の所得を増やすというのがアベノミクスの方針のようですが、今回の一連の報道を見ていると、なんだかJA全中や各地の農協が仕事をしていないような、邪魔な存在のように感じる人もいるかもしれません。
でも、決してそんなことはなくて、地域へ下ると、農協には頑張っている農協と、ふつうの農協があるのがわかります。
頑張っている農協は、例えば商品として出荷できないようなアウトレットの蜜柑を集めて、ジュースにしたりハイボールにしたりして売り出しているところなど、いろいろ創意工夫をしていて、田舎の町が全国区になったりしていますが、他の地域の農協が仕事をしていないのではなくて、他の地域の農協もきちんと農協としての仕事をしているのですが、頑張っているところがあると、普通に仕事をしている農協が仕事をしていないように見えるわけで、そういう状況を全国組織の上部団体から見れば、下の位置にあるところをすくい上げなければならないということになります。
でも、下の位置にあるところをすくい上げるのはなかなか困難な話だというのも世の常で、そうすると、一生懸命頑張っているところとしては面白くないわけです。
一つの地域の中で一生懸命頑張っている農家もあれば、普通の農家があるのと同じように、全国的に見れば、一生懸命頑張っている農協もあれば、普通の農協もあるわけで、別に頑張ってないとか、仕事をしていないとかいうことではないんです。
でも、全国組織から見ると、全国均一であることが望ましいわけで、上に立って管理しようとする人たちはいつの時代もスタンダード作りに熱心になるというのも世の常ですから、受験戦争も同じで、全国一律の模擬試験をやったり、大学入試のセンター試験があったり、そもそも偏差値などというのが存在するのもその理由なんです。
ところが、世の中が順調な時代はそういう画一的な指導方法や商品展開で良かったかもしれませんが、世界の競争にもまれたり、人口減少でどこかが淘汰されなければならないような時代を迎えた今では、画一的な方法では対処しきれなくなったというのが、アベノミクスの言い分だと思います。
マクドナルドが経常赤字になったという報道が新聞に出ていましたが、食品の製造過程の問題がその大きな原因だと言われていますが、確かにそれは大きな要因かもしれませんが、全世界的に売り上げが落ちていることは説明できません。
マクドナルドは、世界どこへ行っても同じ味、同じ商品構成ですが、実は、そういう世界共通のスタンダードを作り上げたことが評価される時代はもう終わっていて、そのような大量生産でコストを下げている画一的な商品には魅力がなくなってしまっているのかもしれません。
日本のマクドナルドは月見バーガーなど世界では発売していないユニークな商品構成が特長ですが、そういうオリジナル商品ばかり出している日本のマクドナルドは本社の方針に反していてけしからん、ということで送り込まれた外人社長が、舵を全く逆の方向に切ってしまったのが、マクドナルド凋落の本当の原因かもしれません。
つまり、これからの時代は農業だって特徴ある商品づくりをして、消費者のニーズにこたえるような米や野菜を作っていかなければ、今まで通りに普通の農業をやって普通の産物を出荷しているだけの農業では所詮価格の勝負になるだけですから、外国からの安い農産物には負けてしまうわけで、そういう農家を保護するような関税もかけられなくなりますから、農家がしっかり自立できるように、農協はそういう創意工夫やハウツーを各農家に教えるリーダーシップを発揮しなければならないんですね。
普通に農業をやって、普通の農産物を作っている農家の人だって、いろいろ苦労しているし頑張っています。「俺たちが何か悪いことをしてるのか?」とアベノミクスに対してそういう気持ちの人もいるかもしれません。
でも、経済のパイが膨らむ時代ならそういう考えも通じたかもしれませんが、経済のパイがシュリンクしていく時代では、自ら創意工夫を持って時代に合ったサービスを提供していくことができなければ今の足場すら守れなくなるんです。
都会の会社に勤めている人たちはバブル崩壊後、世の中の急激な変化という荒波にもまれ続ける20数年を経験しています。今までのように、今までと同じスタイルで仕事をしていた「昭和のサラリーマン」の人たちはみなさん仕事を失って淘汰されてしまいました。
その時に、彼らは異口同音に、「俺が何をしたっていうんだ。」「何か悪い事でもしたのか?」「一生懸命会社に尽くしてきたというのに。」と言っていました。
つまり、彼らが特に悪いことをしたわけでもなく、彼らなりに頑張ってきたにもかかわらず、座席が10席から8席に減れば、2人は座れなくなるのと同じように、生き残ることができなかったんです。
都会の人たちは皆そういう経験をしてきたわけですが、それがいよいよ全国津々浦々にやってきているというのがアベノミクスなんですね。
だから、警察に逮捕されても「俺の米はうまいぞ!」と言ってよい商品づくりに励んできたような地域の人は、アベノミクスだからと言って特に身構えてもいませんし、都会の人たちも、「僕たちも経験してきたけど、当然なんじゃないですか?」と意外に冷静な目でアベノミクスを見ているということなんです。
繰り返しますが、普通の農家の人たちだって十分に頑張ってきているんです。
だけど、それだけでは立ちいかない時代になるということですから、今こそ農協が地域に合ったリーダーシップを発揮していくときである、というのが、全国組織を改革するということなのです。
(つづく)