今夜のひとりごと

昨日かおとといか、中央線の快速電車にグリーン車が連結されるという話が出ていました。
こういう発表があると、賛成の人たちは、疲れたらお金を払えば座って行かれるようになるから良いなどと言いますし、反対の人たちは、貧乏人には迷惑な話だとか、ただでさえ混んでいるんだから、その分普通車にすれば少しは混雑緩和になるだろうとか、そういう意見が出てくると思います。
でも、私は、JRがどうして中央線にグリーン車を連結しようと考えたのか、それが気になるのです。
なぜなら、昔の人たちはご存じの通り、中央線の快速電車というのは混雑が首都圏で一番激しい電車として昭和の時代は有名で、発車しようとしてもドアが閉まらないなんていうのはしょっちゅうでしたし、詰め込んだ乗客の圧力で走行中の電車のドアがはずれ、大きな事故になったなんてのも中央線ですから、私の印象としては、そういう中央線にどうしてグリーン車を入れるのだろうかと思うわけです。
首都圏の電車では横須賀線が戦前からグリーン車(1・2等車)を連結していましたし、湘南電車と呼ばれた東海道線にもグリーン車が付いていました。横須賀線と乗り入れることになった総武快速線にもグリーン車が付くようになりましたが、この時、東京の人間は誰もが、「なんで千葉へ行く電車にグリーン車が必要なんだ。」と「???」の感じでした。
最近では湘南新宿ラインで東海道線とつながっている関係で東北線や高崎線にもグリーン車が入っていますし、常磐線にも入っています。
でも、これらは昔でいう「中電」(中距離電車)の領域ですから、なんとなく理解できるのです。
そう、昔は都内の駅の切符売り場には「電車区間」と「汽車区間」があって、「電車区間」は都内から大宮、取手、千葉、大船、高尾と、だいたいそのあたりまでで、それより先は「汽車区間」で、中電というのは汽車区間へ入っていく電車(当時は113系、115系、415系など)のことで、こういう電車にはボックスシートが付いていてトイレもあって、だからグリーン車が付いているというのも理解できるのですが、電車区間が基本の高尾や青梅までの快速電車に、グリーン車が付くということは、私にしてみたら京浜東北線や総武緩行線、いや、山手線にグリーン車が付くような気がしないでもありません。
そんな感じなんですね。
で、JRがどうしてその電車区間で混雑が激しい中央線にグリーン車を連結するのだろうと考えるわけですが、別にJRの友人に詳しく聞いたわけではありませんから、あくまでも私の想像なんですが、いよいよ通勤客が減少する時代が見えてきたんだろうなあと思うのです。
今から20年以上前ですが、これからの時代は通勤客が減っていくという分析が発表されました。当時の関東にいるとそんな実感は全くなく、毎日電車は混んでいて、地下化や高架化など、まだまだ線路を作ってスムーズに走れるようにして、電車本数を増やそうとしていた時代なんですが、当時すでに関西地区では通勤時の混雑に陰りが見えてきていて、それを一番感じていたのが南海電車でした。
そこで、南海電車では上級の車両を作って座席指定車として、「サザン」という名前で特急電車に連結して走らせ始めました。特急と言っても特急料金は不要でしたが、座席指定料金が300円ほど必要で、つまり特別車両ですから、JRでいえばグリーン車のようなものです。そして、通勤電車でも指定席料金を払えば座って行かれるようになりました。
それまでは通勤電車の着席サービスというと、グリーン車を除けば、いわゆるホームライナーのような別仕立ての列車が主流でしたが、私が南海「サザン」が素晴らしいと思ったのは、着席料金を払えば座って行かれるということはもちろんなんですが、着席料金を払わない人との差というのが座れるかどうかということだけであって、目的地に到着する時間は同じだということなんです。
ところが、ホームライナーの場合は、ライナー券を手に入れることができた人は、座って帰れるのは当たり前なんですが、ライナー券を買うことができなかった人は、座れないだけじゃなくて、そのライナーが通過していくのを退避して待たなければなりませんから、その分目的地へ着くのも遅くなるわけで、なんだか馬鹿にされているような気がしたのです。
で、今回の中央線のグリーン車ですが、中央線に限らず、快速や普通列車のグリーン車のグリーン料金というのは着席料金だと考えれば、特急列車でもないのに余計にお金を払った人が普通の人を追い越していくわけではありませんから、所要時間という点ではどちらも同じで、私としてはあとは選択の問題だと思えば思えないことはないと考えることにしています。
快速電車のグリーン車は自由席ですから、グリーン料金というのは着席料金ではないし、同じ路線を走る特急の自由席特急料金との整合性もありません。だからそういう点ではまだまだ改善が必要だという人もいると思いますが、現行のグリーン料金で朝夕は満席になっている現状を考えると、特別安くする必要もないわけで、今10両で走っている電車を12両にして、そのうち2両がグリーン車になるわけですから、JRもそれなりに言い訳を考えてから発表していることがわかります。お客様にしたって、2両車両が増えれば、グリーン車にお客が流れる分を考えると、ある程度混雑緩和になることは事実ですから、まあ、何もしないよりはした方が良いということになるのでしょうし、その点ではJRらしくないというか、やる気になればできるじゃないの、と思わないでもありません。
私にとってもグリーン車は高根の花で、懐具合と相談しなければ気軽に乗ることはできませんが、それでも、やっぱり、グリーン車がついている電車が走っているということは、ありがたいと思います。
そして、団塊の世代の皆様方が退職されて、郊外の団地が老人の村になってきている現状を考えると、通勤電車と言えども、座って行かれる時代がもうすぐそこまで来ているということは、間違いないのではないでしょうか。
それにしても、20年以上も前から通勤電車に座席指定車を連結している南海電車は、私は偉いと思います。
関東ではそんな鉄道会社はありませんからね。
いよいよ関東でも、通勤輸送に陰りが見えてきた。
今回の中央線のグリーン車連結で、私はそう感じるのです。