中国漁船の領海侵犯について思うこと。

個人的な感想ですが、今回はいろいろと考えさせられた事件でしたね。
 私は航空会社時代、香港、北京、上海にそれぞれに同僚がいて、業務上も個人的にもお付き合いをさせていただいておりました。彼らは英語を普通に話し、中には日本語にも堪能な人がいましたし、そのような水準の人たちは、完全に私たち日本人や欧米人と同じものの考え方ですから、かえって中国国内のものの考え方を恥ずかしく思っていたようです。そんな付き合いでしたから、あえて国境とか主権とか考えたことはなかったのですが、今回の事件では、中国という国の考え方を改めて認識させられた気がします。
 子供のころ私の父がよく「中華思想」ということを話していました。
「中国には中華思想というものがある。それは簡単に言うと自分たちの国が常に世界の中心にあって繁栄し、その他の周りの国は野蛮な国だと考えている。」ということ。
だから、国境という概念も自分が中心であって常に外に向かって繁栄していくため、周りから境を決められることに反感を持っているのだろうと。
中国が、日本とばかりでなく、他の隣国とも領土問題で常にもめているのはそのためのようだ。
父が言っていたことが正しいかどうか分かりませんが、私の父は戦前の人間で、当然のように孔孟思想などを深く勉強し、諳んじている中国の古典をいつも口ずさんでいた人でしたから、中国に対して敬いの気持ちを持っていたと思います。どちらかというと今の日本人より昔の人の方が、一般的に中国大陸に対して尊敬の念を持っていたと思います。
今回の事件で、一連の中国政府の声明や報道を見て思ったのは、その中華思想ということでした。
中国には10億の民がいます。過去においてもいろいろ報道統制や言論統制をしたりしてきましたが、10億の民が自由を主張し、いろいろ言い始めたら国の中が収拾つかなくなる可能性があります。農村と都市部との生活格差も拡大するばかりですから、農村で暴動が起きる可能性もあります。今回の中国政府の一連の発言を見ても、日本側に強硬姿勢を示すというよりも、中国の国内に向けて弱気な姿勢を示すことができないということが根底にあると思います。
国のトップがアメリカで在米華僑の人たちの前で日本に対して強硬な発言をしたとしても、この中華思想を考えた場合、当然と言えば当然かもしれません。
日本には謙遜の美徳ということがありますが、自分たちが世界の中心であるという考えの国民を前に、政府や国のトップが話をする場合、謙遜姿勢は受け入れられないと思います。強い中国というイメージを自国民に示さなければならないことが先決なのです。
まして交渉事になれば、まず最初に自分たちの考えをどんどん主張しないと、譲歩する余地を作れませんから、なおさらのことです。
ただ、私が今回感じたことは、中国という国は、中華思想にプラスして、日本に対して、心の根底には反日感情があるということです。
彼らは日本にあこがれを持っていて、お金を得られるようになったら、真っ先に日本へ遊びに来るようになりましたが、根底では何かきっかけを見つけては、日本をバッシングして、反日運動が盛り上がる国なのです。
この点は、戦争で同じようなことをされた日本が、アメリカに対して反米感情をあまり持っていないのと大きく異なる点です。
韓国もそうですが、自分の国の中で政治的にうまくいかなくなると、政府が教科書問題や歴史認識、領土問題などを取り上げて日本をバッシングして(または、そういう反日運動を黙認して)、自国の国民の目を日本に向けさせるという政治手法をとることが常套手段になっていますが、私が問題だと思うのはそういう国民感情がある国に対して、経済や食料供給などをこのまま依存し続けてもよいのかどうかということです。
ヨーロッパを例にとると、ロシアから天然ガスの太いパイプがヨーロッパに敷かれていて、安価な天然ガスの供給を受けていますが、数年前に政治的要因でロシアと東ヨーロッパがもめた際に、ロシア側が天然ガスの供給をストップした実例があります。
冬の寒さが厳しい東ヨーロッパで天然ガスの供給が一方的に止められれば、即生存にかかわりますから、たいへんなことです。その後、ヨーロッパでは「ロシアはそういうことをする国だ」という前提で、いくら安価だからといって依存しすぎないようにと各国政府や国民が対応策を取り始めました。
今、日本では製造分野だけでなく、食糧の輸入も、国内の消費も中国が頼りという状況になりつつありますが、外貨の獲得と私たち日本人の国際化を促進するために観光客を受け入れることは良いとして、食糧や資源などについて、どこまで中国を頼ってよいかということを、国民全員が真剣に考えなければならないと思います。
隣国ですから、もちろん相互敬愛し、仲良く付き合っていくことは大事なことですが、何かのきっかけを見つけて、すぐに手のひらを返すような国民性があるということが、今回の件ではっきりとわかったわけですから、今までのような「安ければどこでも良い」というようなご都合主義ではなく、自分たちの首根っこを相手に預けないようにするにはどうしたらよいか、国民の負担増も視野に入れて真剣に考えなければいけないと思います。
イギリスではロシアマネーがロンドンの不動産などを買いあさっているようですが、イギリスとしてみれば自分たちの土地が外国に買われるということに対する嫌悪感はもちろんあるものの、外貨を自分の国に呼び込む有効な手段として考えているようですから、私たち日本人もその位のしたたかさを持つように勉強しなければなりませんね。
今回の事件が発生してすぐに、当時の前原国土交通大臣が、「わが国には尖閣諸島に領土問題は存在しない。この地域で発生した事件は国内法に則って粛々と手続きを進める。」と発言されましたが、あの時の前原大臣は格好よかった。まさに「日いずる処の天子」に見えたのは私だけではないと思います。
中国人の船長を釈放したのは誰の判断だったのか、などというようなことを論じる時間があったら、今後の日本がどうやって中国と付き合っていくかということを考えなければいけません。
中国産の食料は、農薬が多く使ってあるから食べないというような次元ではなく、自分たちの生命線を相手に握られてよいのか、ということや、なぜ沖縄に基地が必要なのかなど、国家の根幹にかかわるところを日本人はもっと論じなければ、とんでもないことになりそうです。
ちなみに私はいわゆるノンポリで、国粋主義者でも軍国主義者でもなく、政治にも全く興味はありません。単なる1日本人として、感じたままを徒然と述べてみただけでございますので、誤解のないようにお願いいたします。
私たちの千葉県には、水田も畑もいっぱいあって、漁業も酪農も養鶏も盛んで、
東京や横浜などの大都市を十分に賄っていかれるだけの力がありますから、中国から燃料を使ってわざわざ運んでこなくても、十分にやっていかれると思うのです。
もっと千葉に来て、いろいろ食べて、経験してみてください。
はい、それが私の結論です。
ああ、腹減った。そうだ、中華を喰いに行こう!