大切にしたいこと。まもならなければならないこと。

いすみ鉄道はありがたいことにたくさんのテレビ取材や雑誌、新聞などで取り上げていただいています。
地域の宣伝料を含めてお金に換算したら数億円以上のものですが、すべてタダ。
広告宣伝費がないいすみ鉄道にしてみたら、とてもありがたいことです。
だから、NHKがドラマを撮ってくれるというお話をいただいた時には、「いすみ鉄道は全面協力します。」と申し上げて、撮影用の臨時列車を毎日走らせて、車庫での撮影も朝から晩まで行って、必要経費以外は一切お金を請求しなかった。そうしたらNHKのプロデューサーや監督さんたちが、「ありがたい、ありがたい」と何度もお礼を言ってくれて、感激してくれましたが、それはこちらのセリフなんです。
私が就任した日、2009年6月の夕方のニュースで、NHKは記者会見の様子を放映してくれました。
その時、ラストシーンで大多喜の駅を発車していく列車の後ろ姿が映っていました。だんだんと遠ざかる列車のシーンにテロップが流れます。
「この社長の力量しだいによっては、この鉄道は廃線になる。」
そういうテロップです。
私は翌日、NHKの記者に、「ずいぶんじゃないの。ああいう報道!」って笑いながら抗議したら、記者さんが
「申し訳ない。ニュースとしてはあの方がインパクトが。でも、私が責任を持って社長の仕事をフォローします。」
そう言ってくれて、それからずっとNHKはいすみ鉄道を大切に扱ってくれて、小さな旅で取り上げてくれたり、今回のドラマの話だったり。
だから、いすみ鉄道は全面協力したわけです。
これは、人と人との大切なつながりなんですね。
日本経営士会という経営コンサルタントの皆様の集まりがあります。
2009年9月に私に最初に講演を依頼していただいた団体です。
それからというもの、いつもいすみ鉄道を気にかけてくれていて、おととしは「ビジネスイノベーション賞」をいただきましたし、去年行った「能楽とオペラの協演 in 夷隅」もサポートしてくれました。
ロータリークラブもそうです。
いすみ鉄道が存続が決まる前の時点から支えてくれて励ましてくれました。
鶏卵牧場の村石社長さんと知り合ったのがロータリーで、その時の出会いがポッポの丘のスタートです。
倫理法人会という経営者の集まりも、いすみ鉄道や社長である私を就任当初から励ましてくれて、力になってくださっていますし、千葉県中小企業家同友会という組織も、何年も前からいすみ鉄道を励ましてくれています。
国吉駅で駅の美化運動に長年努めていただいている原さんご夫婦を始めとする応援団の皆様。もちろん、カケス団長もありがたい存在です。
商店街の吉田さんも松葉屋さんの松本さん、みどり屋さん、引田さんも、よちよち歩きの危なっかしい社長を一から育ててくれました。
埼玉から足しげく通ってきてくれる女性もいます。
当時、不安でいっぱいだった私は、彼らの顔を見て、どれだけ勇気づけられたことでしょうか。
彼らに共通して言えることは、自分たちには一銭の儲けにもならないけれど、地域のために、いすみ鉄道のために、どこの馬の骨かもわからない私のことを、何年も前から支えてきてくれているのです。
今、いすみ鉄道は全国から注目を集めています。
いろいろな会社やテレビ、団体などからありがたいお話をいただいています。
でも、私は、いすみ鉄道の社長としてまず第一に考えるのは、いすみ鉄道が廃止されるかもしれないという時から私を支えてくれてきた人たちのことです。
そういう皆様方への感謝は、言葉ではなくて態度で示さなければなりませんから、私の中での優先順位は第一番目なのです。
人間は良い時もあれば悪い時もあります。
会社も同じです。
いすみ鉄道が少しぐらい世間の注目を集めるようになったからって、いい気になってはいけませんよ。
ということを常に教えてくれるのが、今まで支えてきてくれた皆様方の笑顔なのです。
上総中野の駅でこのところ観光客といざこざばかり起こしているおじいさんがいます。
でも、彼は私が就任するずっと前から、駅を守ってきてくれたわけで、大多喜駅売店の看板を作ってくれた人で、私にとっては大事な人です。
いすみ鉄道が急に注目されて、予期せぬような人数の観光客がやってくるようになって、それも、自分が大切に守ってきた鉄道で来てくれるのではなく、車でやってきて写真だけ撮って、トイレだけ使ってサッと帰ってしまう。
そういうことに対して、自分の考えと現実とのギャップに、年齢的な面もあって心が調節できないのです。
大多喜の兄貴も、いすみ鉄道が開業した日からいすみ鉄道を見守ってきてくれた人です。社会的には評価されにくい存在かもしれませんが、私から見たら、いすみ鉄道を一番愛してくれている人だと思います。
そういう、昔からかかわってきてくれている人を、「邪魔だから帰ってくれ。」ということは、私は言うべきではないと考えているのです。
いすみ鉄道の売店の女性もそうですね。
都会の洗練されたお店から見ると、愛想が悪かったり押しが強かったり、いろいろ問題はあると思います。
改めなければいけないところ、学ばなければいけないところがたくさんある人たちであることも事実です。
でも、私にとって見たら、とてもとても大切な仲間です。
いすみ鉄道が存続をかけて売店の売り上げに命を託した時に快く参加してくれて、今でもずっと働いてくれている大切な仲間です。
開店当初はヒマで、「社長、大丈夫でしょうか。」と心配してくれていた仲間だから、お客様がたくさん来るようになって忙しくなったのがうれしくてたまらない。
本当は増員しなければならないけれど、なかなか人がいないから少ない人数で頑張ってくれている。
そういう彼女たちは、私にとってみたらとても大切な仲間なのです。
いすみ鉄道は、少し会社の業績が上向いてきて、マスコミにも取り上げられるようになってきたけれど、そういう時だからこそ、大切にしなければならないことがあるし、忘れてはいけないことがある。守らなければならないことがあるのです。
いすみ鉄道ファンのブログを運営してくれているtassさん。
いつもありがとうございます。
最近ではキハをお目当てにたくさんの鉄道ファンが来るようになりました。
でも、tassさんは、いすみ鉄道がレールバスしか走ってなくて、鉄道ファンが誰も見向きもしなかった時からずっと、四季折々のシーンを写してくれています。
その頃は、まさかいすみ鉄道が今のようになるとは思わなかったでしょう。
tassさんの無欲の勝利ですね。
私が航空会社を辞めていすみ鉄道の社長に就任して、不安にさいなまれているときに力になってくれた皆様方へ、「いすみ鉄道は自分たちが支えてきたんだよ。」「あの社長は俺たちが育ててきたんだよ。」と少しだけ自慢していただけることが、私からの恩返しなのです。
さあて、明日も頑張るぞ!


[:up:]本日、幕張で行われた千葉県中小企業家同友会の年次総会。
森田知事もいらしてました。
千葉県中小企業家同友会は、私が就任した当初からお声をかけていただき、「応援するよ。」「頑張ってね。」と励ましてくれている団体です。
いすみ鉄道がここまで来れたのも、幹部の皆様方のおかげです。
今度は、いすみ鉄道が皆様のお手伝いをする時期だと思い、ご依頼をお引き受けいたしました。
森田知事もおっしゃっていましたが、千葉県の中小企業が元気にならなければ、千葉県は元気になりません。そして千葉県が元気にならなければ、日本は元気にならないのです。
いすみ鉄道は千葉県を元気にするお役にお使いいただければ本望なのです。
同友会の皆様、本日はありがとうございました。