観光は総合力が試されるのです。

先日、日本各地を観光で町おこしされている観光のプロフェッショナルの方とお話をする機会がありました。
その方はいすみ鉄道と沿線地域の取り組みをよく御存じで、地域の皆様方が頑張っているのを高く評価していますが、彼が私にくれたアドバイスは、
「観光というのは地域の総合力が問われますよ。」
ということです。
誰かひとりが始めたことが、人気になって人が集まってくる。
そういう人や会社、旅館や商店などが数件できると、ある程度注目を集めることができるようになります。
これが観光の第一段階で、いすみ鉄道沿線地域は今ちょうどこの段階にいます。
次に、それぞれが点として発信している情報を、面として広げていく取り組みが必要になります。
誰もが泊まりたくなるような旅館がある。
乗ってみたいローカル線が走っている。
立ち寄ってみたい温泉がある。
人気の郷土料理屋がある。
体験できる観光スポットがある。
こういうそれぞれの観光拠点を面として結んで広げていくことが、観光地化できるかどうかの分かれ目になるということです。
そのために一番肝心なのが役場の観光課であり、観光協会です。
ふつうならば観光協会が中心となって、旅館や食堂など1つ1つの観光拠点を取りまとめて、役場や観光協会から情報を発信し、都会へ出かけて行って、旅行会社や観光バスの会社に営業をして、少しでもお客様にいらしていただくこと。
そして、より多くの人々に知っていただくために、マスコミに営業をしていろいろ取り上げてもらう。
ところが、町政の仕組みの中では役場の職員の人たちがいくらやろうと思っても動けない部分がたくさんありますから、役場が動きやすいように議員さんたちが議会でサポートしていくことが大前提になります。
そうすることで、総合的にお客様にいらしていただくことをやっていかなければなりません。
そのためには、議会はもちろんのこと、地域の商工会も青年会も婦人会も商店会もみんなが一つになって協力していく。
これが「総合力」です。
こういうことは、観光を売り物にしている自治体ではふつうに行われていることなので、観光地化がうまく機能している地域になればなるほど、まとまっている傾向が見られます。
ところが、いすみ鉄道沿線では、この総合力を発揮するための仕組み作りに動いていないし、本来あるべき姿で機能していない。というのが私の見立て。
例えば、大多喜町は観光協会で独自のホームページがなくて、役場のホームページに観光協会のページがあるだけで、その中のブログは有志が「サポーター」としてやっているだけのもの。
ちなみに役場のホームページはヒット数は1日せいぜい300~400件程度。
観光協会の建物と道路を隔てた所にあるいすみ鉄道大多喜駅から発信しているいすみ鉄道のホームページは1日5000件、多い日には10000件以上のヒット数があるのですから、大多喜の観光情報はいすみ鉄道のホームページを利用する方がはるかに効率的なのですが、そういう話は一切やってきません。
ついでに観光協会そのものもいすみ鉄道が引き受けてしまえば、総合力が試される観光という産業の中で、シームレスサービスが提供できると私は考えています。
いかがですか、皆さん。
大多喜の観光情報もいすみ鉄道が引き受ければ、即、全国区になること請け合いなのですが。
まあ、だめだろうな、役場の職員がいくら知恵を絞って一生懸命やっても、それをサポートする体制ができていないもんなあ。
これは私の僻みかもしれませんが、大多喜の人たちはいすみ鉄道のことを役場の下請けだと思っているから、私が就任した当初はいすみ鉄道の職員に向かって「あなたの給料は町が払ってやってるんだ。」なんて平気で言っていたし、今でも、余計なことをしないで黙って走っていればよいと思っている。
そして、大多喜は本多忠勝翁一筋で未来永劫観光客が来ると思っているわけですから、いすみ鉄道を目当てに来てくれる観光客何て、客じゃないと思っているのでしょう。
だから、自分たちより下だと思っている(下請けだと思っている)いすみ鉄道に対しては営業数字を厳しく求めてくるけれど、観光客数の伸びやお祭りの人出、移住キャンペーンの結果など自分たちの営業数字については何も課していませんからね。
いすみ鉄道の情報発信力を利用して、大多喜を全国区にすることは、それほど難しいことでもないと思いますが、私に任されているのはいすみ鉄道であって大多喜町観光協会ではありません。
でも、私が観光をお引き受けするとしたら、
・年に2回、主催イベントをやって
・大多喜の町の中に定期的にボンネットバスを走らせて
・いらしていただく観光客にカフェなどのくつろぎの場所を積極的に提供し、
・東京都内にアンテナショップを作って大多喜の産品を紹介する
ぐらいのことは、来年からすぐにでも実現してみたいと思います。
いかがでしょうかね。
いずれにしても、総合力が問われるのが観光ですから、商店会とか、商工会とか、何とか組合など、自分たちの都合でわけのわからない線引きをして、それぞれがテンデンバラバラに活動している状況では笑いものになるのが関の山、だってことぐらいは、気づいてほしいと思います。
もっとも、これは、大多喜だけじゃなくて、ほぼ全国的に見られる現象なんです。
だから、さりげなく全国をリサーチすれば、やってはいけないことは何で、やらなければいけないことが何かぐらいすぐわかるのですが、地域のリーダーたちが「視察」に行くと、先方は良いところしか言いませんから、本当のところが見えてこないのだと思います。
ということで、今年、いすみ鉄道の前々身である千葉県営夷隅人車軌道百周年を記念して、現在、いすみ鉄道と大多喜町、千葉県が協力して12月にイベントを企画しています。
前例がないイベントで、おまけに予算もありませんが、総合力を鍛えるためには良いチャンスになるのではないかと考えています。
養老渓谷の紅葉も終わった12月にイベントをやるなんて馬鹿げているとおっしゃられる方もいらっしゃると思いますが、集客が難しい時期だからこそイベントをやるのが私の基本です。
鉄道があれば、シーズン関係なく集客できるんですよというのが、ローカル線の価値だということをお示ししたいと思うのです。
皆様、少しずつではございますが、いすみ鉄道を利用する動きが大多喜にも出てきていますので、どうぞご期待ください。
このイベントは人車を復元する楽しいイベントですよ。