パスポート

私のパスポートは昨年8月に失効したままで、更新していない。
この秋から台湾国鉄通いを復活しようと考えているので、そろそろパスポートを申請しなければならないのだが、今のパスポートは10年有効だから、次回の更新は61歳か。
自分の残りの人生を考えると、最後のパスポートになるかもしれない、などと思う今日この頃である。
10年たてば人相も変わるから、写真ぐらいはちゃんとした写真館で撮っておかねば。
成田空港時代に、私はチェックインカウンターや搭乗ゲートでお客様のパスポートを見るのが仕事の一つだった。
偽パスポートを見破るコツも心得ていたが、偽パスポートでないのにときどき写真と本人が違っていることがあった。
よくあるのが、パスポートの写真には黒々と髪の毛があるのに、目の前にいるご本人には、その名残りしかない方。
これは、人生という風雪に耐えてきた証拠なのでいたしかたないと思うのだが、ときどき、パスポートの写真には髪の毛がないのに、目の前のご本人はふさふさとしている方がいる。
こういうときは、アレッ?と思っても、事務的な表情でお客様がいなくなるまで、さりげなくやり過ごさなければならないから、ツボにはまらないようにするのがたいへんである。
外人にときどきいるのは、パスポートは男性だけど、目の前にいる人は麗しの美人という人。
大きく胸のあいたドレスを着ていたりすると、どうしていいかわからなくなる。
でも外人はオープンだから、こういう人は自分から、ニーッて笑って、「アイ、アム」とか「イッツ ミー」とか言ってくれるから、「ビューティフルね」って答えると、投げキッスをしてくれて、ハイさようなら。
一番困ったのは、男性の恰好で、パスポートの写真も男性なのに、気持ちだけが女性の人。
「鳥さん、気をつけてね。好かれてるよ。」と同僚の女性が横からそっと注意してくれるけど、相手に気を悪くさせてもいけないから、さりげなくやり過ごすのが難しいのである。
チェックインカウンターで「行ってらっしゃい」した後で、飛行機の搭乗口で再開するときなど、はるか彼方から満面の笑顔で近づいてきて、「ハッロー、アゲイン」なんて言われるけど、そういう人って、金髪の白人ですごくハンサムな人が多いから、同僚の女性たちは、「いい男なのにもったいない。」とため息をつくのである。
彼女たちに言わせると、どうやら私のような体形の男性は、その道の方々からはとても持てるらしい。
以前、あるクル―の女性から「鳥塚さんはどちらなの」と聞かれたので、
「僕は女房も子供もいるよ。」って答えたら、
「そんな人いっぱいいるわよ。世を忍ぶ仮の姿って人も多いのよ。」と言われた。
そうなると、私としてはどう答えていいのかわからないのである。
日本ではセクハラと言うと 男→女 と決まっているけど、外資系では逆だって十分あり得るのである。
誰か助けて~!