旅行の相場

今、国を挙げて観光産業を盛り立てようとしています。
いわゆる観光立国というものです。

日本は世界中の国から憧れの対象として見られています。
憧れですから「いつかは行ってみたい。」と世界の皆様が思ってくれているということです。

そういう人たちにいらしていただくと、日本国内でたくさんお金を消費していただけます。
皆さんもそうだと思いますが、旅行へ行くと普段の生活よりも多くのお金を使います。

せっかく来たのだからおいしいものを食べましょう。
せっかく来たのだからここでしかできない体験をしましょう。
せっかくきたのだからお土産を買って帰りましょう。

旅行というのは非日常体験ですから、いつもと違ったことをするためにお金を使います。
毎日一生懸命働いて、お金を稼いで、お金をためて、そのお金を使いに来るのが観光客です。

だから、食べたいものを用意して、やりたいことを用意して、買いたいものを用意してあげれば、その地域にお金が落ちます。

これが観光が産業であるというゆえんです。

ところが、田舎というところはリソースが限られます。
つまり、やってくれる人が限られますから、例えば団体旅行が来るから500円の弁当を100個用意してくれと田舎の食堂にお願いしても、「えっ、100個も弁当作れませんよ。」となるでしょう。
頑張って作ったとしても500円の弁当ですから利が薄くて、忙しいだけで儲かりませんから、ヘトヘトになってしまいます。

でも、5000円のお料理を10人分作っていただけますかとお願いしたらどうでしょう。

小さな田舎の食堂でも10人前ならできるかもしれません。
しかも1人前5000円いただければ、材料も吟味できますし、時間もかけられます。
利益率も高くなります。
そしてお客様の満足度もあがります。

だから、田舎の町で観光をやる時には、できるだけ高い金額を払っていただけるようなお客様にいらしていただかなければ、忙しいだけ忙しくて全然儲からなくてヘトヘトに疲れるだけの商売になってしまいます。

でも、田舎の観光地の人たちは、都会の人が、あるいは外国人がなぜ自分の町にやってくるのか、何を求めてくるのかがわからない人が多いですから、「お客様からお金をいただくこと」に罪悪感や後ろめたさを感じる人が多くいます。

自分たちの金銭感覚でお客様をおもてなしをしますから、なかなか儲かりません。
そしてお客様もふだんと同じ程度のものしか手に入りませんから満足度が下がります。
経済が拡大しない理由はそこにあります。

大井川鐵道は昨年から台湾に営業をしています。
きかんしゃトーマスのプロモーションも台湾で行っていますので、このところ台湾の個人客が増えてきています。
私も昨年台北の旅行会社を回って、「ぜひいらしてください。」と営業して回りましたが、その営業が功を奏して、今、ぼちぼち台湾からのツアーの予約が入ってきています。

そういう人たちが一体いくら日本で使うか、考えたことがありますか?
台湾から日本に来るツアーの旅行費用がいくらかご存じでしょうか?

6月7月といくつものツアーを設定していただいている台湾の旅行会社の募集広告がこれです。

6泊7日のコースで旅行人用は105000台湾元から126000台湾元。
いくらだかわかりますか?

105000台湾元は日本円で528000円
126000台湾元は日本円で633000円です。

台湾で日本への旅行を申し込むと6泊7日のコースで60万円なんです。

では、どういうコースかというと、

台北から成田に入って、踊り子号に乗って伊豆へ。
富士山を見て、金谷から大井川鐵道に乗って家山からバスで千頭、
千頭から奥大井湖上駅まで井川線で往復して浜名湖へ。
浜松から新幹線で京都へ出て、最後は関西空港から台北へ帰る6泊7日コースです。

おわかりいただけますか?
この旅行のメインは井川線の奥大井湖上駅なのです。

今、我々が営業してお客様にいらしていただこうと思っている台湾はこういう旅行相場で皆さん旅行代金を払っていただいています。
つまり60万円の旅行代金を払える人たちが団体でやってくるのです。

こういう時に、きちんと利益を上げる商売をしていかないと「ぜひ皆さんいらしてください」と言ったところで、何のために台北まで行って営業しているかわかりません。
60万円も旅行代金を払う人たちが、1500円の駅弁で喜ぶとも思えません。
だから大井川鐵道では食堂車「オハシ」をやるのです。

では、私たち日本人は台湾旅行にどういう相場観を持っているのでしょうか。

こちらは日本旅行の台湾2~3泊コースです。
日本旅行は老舗の大手旅行会社ですから、お客様もそれなりの層を狙っています。
だからそこそこいいホテルを用意していますが、でも、日本人の台湾旅行の相場はこの程度ですね。
日本は失われた30年を経験してきていますから何でも安くなければならないと思っている人が多くいます。
安いのが正義だと考えてる人たちもいるでしょう。

でも、毎日の生活必需品ならともかく、あこがれの地へ非日常体験をするために観光へ行くのですから、お値段よりも質です。満足できるかどうかが問われているのです。

失われた30年ということは、30年間物価がほとんど上がっていないということですからね。

でも、こと観光に関しては安さが正義ではないと私は思います。
しっかりしたサービスを提供して、それに見合った対価をいただくことで、会社も地域も発展していくことをやって行くのが観光産業です。

お昼ご飯にカレーライスを食べるとしたら1000円は高いなと思うかもしれません。
でも、それは自分が日々生活している中でお昼ご飯として食べるから1000円は高いと思うかもしれませんが、例えば観光で海の幸で有名なところへ行ってお昼ご飯を食べるとしたら、3000円の海鮮丼を食べるでしょう。
せっかく来たのだからおいしいものを食べようと考えて。

これが観光の相場です。
だから、自分がふだん食べているお昼ごはんの予算と比べて「高い!」と言ってはいけないのです。
もし、「高い! 安くしろ!」と言うのであれば、それは経済の発展にブレーキを掛けることになるのです。

今日の私のお昼御飯です。
大井川鐵道のEL急行1BOX占有プランでお昼ご飯用にお寿司をお願いしている寿司宗さんへ行きまして、寿司ランチ1600円。
昨日も一昨日も頑張って仕事をしたのでちょっと贅沢しましたが、今、駅弁買ってもこの値段はしますよね。

でも、ふだんからこういうものを食べているわけじゃありませんよ。

昨日のお昼ご飯
マルちゃんの3個入りソース焼きそば。
これ旨いんですよね。
その1個分です。
それにさつま揚げ。
ちょっと多すぎたので少し残しましたが、ふだんはお昼はこんなもんでしょう。

でも、旅行へ行くとこういうものを食べたくなりませんか?

新潟県糸魚川市の道の駅、マリンドリームの番屋食堂の海鮮丼です。
3000円。

2年前まで地元でしたが、ときどきこれが食べたくなって出かけていました。

せっかく日本海まで来たのだからおいしいものを食べよう。
これが観光客の心理だと思います。
だから、お客様に満足していただくためには自分たちが「高い!」と思ってもきちんと高いものも準備しておかなければなりません。

私は井川線も同じだと思います。
東京からくる人たちは千頭まで新幹線と在来線、そして大鐵本線と町営バスを乗り継いで往復2万円かけて来るのです。
台湾からは60万円かけて乗りに来るのです。

そういう人たちなら1500円は安いけど3500円は高いからやめておこう、という心理にはならないと思いますよ。

こういうことを理解してきちんとした戦略を立てないと、国が提唱している観光産業というのは実現しないのだと私は思います。

ちなみにこちらは大井川本線ですが、この写真の皆様方はパーシーに乗車するのにお一人3000円お支払いいただいている方です。
地元の人は「高い!」と言って多分乗らないと思いますが、観光に来られる方は皆さん笑顔でご乗車されています。

今、井川線が値上げされるという話題で持ちきりですが、値上げではなくて観光列車化の話で、それは奥大井湖上駅へ行く大井川鐵道の井川線の話です。
トーマス、パーシーが走る大井川本線は値上げの予定はありません。
大井川鐵道が何か悪いことをしようとしているというような意図的な拡散がたくさんあるようですが、トーマス、パーシーやブルートレインは全く値上げの予定はありませんので、皆様どうぞご安心のうえご旅行の計画をお立てください。

いよいよトーマスもソドー島から戻ってきます。
6月上旬はこの時だけのトーマスとパーシーの共演も見られます。

皆様方のご乗車をお待ちいたしております。

大井川鐵道 【公式】- きかんしゃトーマス号 – DAY OUT WITH THOMAS 2025
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