新幹線のB/Cについて

国交省の五十嵐鉄道局長が発言を撤回して謝罪したというニュースが聞こえてきます。
内容的には、北陸新幹線の敦賀から大阪方面への延伸工事について

・B/C(BバイC:費用対効果)だけで新幹線の建設が決まるなら政治はいらない。
・ルートはおのずから決まっている。

この2点が論点となっているようですが、詳しい発言内容とその場の雰囲気はわかりませんが、ルートに関しての発言は別にして、1つめの費用対効果だけで新幹線の効果が決まるなら政治はいらないということに関しては、私は全くその通りであり、別に謝罪する必要はないと思います。
もちろん、公務員としての中立性や、政治家に対する配慮という点で疑問視される方々がいらっしゃるのはわかりますが、ルート選定が暗礁に乗り上げるような状態にある時に、鉄道のプロが自分が正しいと思っていることを発言してこそリーダーシップなのではないかと思いますし、そういうことを自由に言えないような社会の仕組みがあるとしたら、それこそプロフェッショナルが活躍できない世の中になってしまうと考えます。

B/Cとは、B:利益とC:費用との関係性を示す指標で、費用を分母、利益を分子として、それが1以上であれば黒字。1以下であれば赤字という算数のお話。
数学じゃなくて算数です。
100円の費用をかけて105円利益が出れば5円の黒字ですね。
100円の費用をかけて95円しか利益が出なければ5円の赤字。

政治家の先生たちも財務省のお役人さんたちも、新幹線という国の将来を作っていくような国家的な投資事業について、なんでB/Cを最優先事項として考えるのでしょうか。
日本はここ30年にわたって、この近視眼的な目先の帳尻合わせだけでやって来たから今こうなってしまっているのだと思いますし、財務省の役人さんたちは自分たちの経済合理性を強引に推し進めてきたから、今、国民から叩かれているわけです。

その同じお役人さんが国交省という目で見たら、当然ですが将来的に長い目で見て国土強靭化につながるのであれば、目先の帳尻合わせに反したとしてもやるべきですから、それが政治ですね。

株式会社ならできないことをやるのですから、政治力だと思いますよ。

では、財務省のお役人さんにお聞きしますが、北海道新幹線はB/Cでプラスなのでしょうか?
必ず費用対効果という点で黒字になっているのですね。

いかがでしょうか?

どう考えてもこの建設費が高騰する時代に黒字にはならないでしょう。
じゃあ、なぜ建設を続行しているのですか?
北海道新幹線こそ、今すぐ建設を凍結するべきだと私は思いますよ。

北海道新幹線の建設計画が決まったのは半世紀以上前です。
その時は函館と札幌を結ぶ特急、急行列車は夜行も含めて18本ぐらいありました。
しかもどの列車も長編成で食堂車を連結した特急列車は長いもので13両編成。
短い編成でも7両でした。

今はどうかというと、函館から札幌方面へ行く特急列車(急行列車はなし)は11本で、どれも基本編成は5両です。

半世紀前の当時であれば高速道路もなく、航空機も今のようには一般化していませんでしたから、その時の判断では新幹線を建設すればB/Cは黒字にすることもできたかもしれませんが、それが遅れに遅れて半世紀経ってこれから工事をしようとする時に、どのように鉛筆をなめたらB/Cが黒字になるのでしょうか?

お役所は一度決まったことは半世紀前のことでも何も考えずに実行し、これからのことはB/Cが黒字にならなければできないのでしょうかね。

もしそうだとしたら、この辺りの感覚が民間とはかなりズレていますよ。
北海道新幹線だって、B/Cでは赤字かもしれないけれど、北海道の振興や国土強靭化の観点からは必要だから建設をしているわけで、それが政治判断でしょう。

だとしたら鉄道のプロとして鉄道局長が言っていることは私は正しいと思いますし、立場上鉄道のプロが正しいことを言えない仕組みがあるとしたら、長い目で見たら国益に反するということになります。

だから、なんだかな~、なんですよ。

鉄道というのは費用対効果(費用便益性)だけでは測ることができない社会便益性があるわけで、ここがなかなか数値化できない部分なんですが、すでに宇都宮ライトレールで証明されているのです。
だから、B/Cで赤字でも建設するべきなんです。

並行在来線はその典型的な例で、特急列車のお客様がみんな新幹線に行っちゃいますから、残された在来線はよほど大きな県庁所在地でもない限り黒字になるわけないんです。でも、鉄道事業の届け出を出す時には必ず黒字化するという事業計画を出さないと会社設立が認められません。
なぜなら赤字とわかっていて会社を始める莫迦はいませんからね。

ところが、鉄道は費用便益性だけじゃなくて社会便益性というのもあるのですから費用便益性だけを基準に鉄道事業を考えるということはそもそも論としておかしいわけで、そういう国は日本だけだそうです。

なぜかと言うと財務省がそういう方針だからでしょう。
もっとも、日本の国は先進国では他には見られない単式簿記を採用しています。
これは子供のお小遣い帳と同じで、「いくらもらいました。いくら使いました。いくら残ってます。」だけの世界です。

通常の会社は複式簿記ですから貸方と借方があって、設備投資にお金を使えばそのお金が消えてなくなるわけではなくて、左側から右側に形を変えて移動しただけですから、何年も使用するような大きな買い物は減価償却という長い目で見ることができます。
これがお役所の世界にはありませんから、近視眼的に儲かるか儲からないかという判断を求めてくるのでしょう。

ということで、私は鉄道局長のようなプロ中のプロが決して間違っていない発言を、財務省や政治の力で捻じ曲げられて謝罪するような構造は、国益に反するのではないかと思う次第であります。

くだらんねえ、この国は莫迦ばかりで。

ちなみにですが、北海道新幹線の建設が決まったころの週刊誌が出てきました。
表紙の女性は誰だかわかりますか?
可愛かったなあ。

今はきれいなおばあさんになっていると思いますが、この頃の週刊誌に書いてある内容が今の世の中で通用すると思いますか?
今でも通用すると思っているとしたら、あなたは相当ズレているわけで、それでも強引に実行しようというのが北海道新幹線だというのが、私のものの見方であります。

考え方には個人差がありますから、「そうじゃないよ」という方はご容赦くださいますようお願い申し上げます。

北海道新幹線も北陸新幹線もリニアも、早く乗ってみたい。
人生が終わらぬうちに。