若い人たちへ

先日、そごう横浜店で開催された「ヨコハマトレインパラダイス」でホリプロの南田マネージャーさんと銚子電鉄の竹本社長さんと私の3人でのトークショーがありました。

その時に私が皆様方からの質問に答えて、お話させていただいたこと。
自分のことなのでいつも同じ話なんですが、なぜ航空会社に入ったか?
というお話です。

私は子供のころから新幹線の運転士になりたかったんです。
まだ、東北新幹線も上越新幹線もない時代でしたから、新幹線と言えば東海道新幹線と、その延長線上にある岡山止まりの山陽新幹線のみ。

蒸気機関車とか電気機関車などもカッコよかったんですが、将来的に伸びていく市場を考えた場合、これからの時代は新幹線だと思っていましたし、何しろ当時は世界一速い超特急でしたから、子供にとっては憧れです。
だから、代々木の塾の帰りに遠回りをして東京駅で新幹線を見たり、ブルートレインを見たりしてたんですが、ある時、気が付いたのです。

それは、「新幹線には外人のお客様が多い」ということ。

今は東京中、あるいは日本中で外国人が闊歩する時代になりましたが、当時の日本は町中に外国人の姿などほとんどいませんでした。でも、新幹線は東京と大阪を結ぶ列車ですから、50年も前からけっこう外国人の姿を見かけていたのです。
当時の外国人と言えばたいていは白人金髪。ときどき黒人。
東南アジアとか中国とかはいませんでしたし、いても見分けがつかなかったと思いますが、そういう白人金髪、ときどき黒人の姿を見て、私は思ったんです。

「新幹線の運転士になるためには、英語が必要だ。」と。

数学とか物理とか、まぁ、基本なんでしょうけど、新幹線にはそれにプラスして英語が必要だ。
なぜならば、外国人が多いんだから、道を聞かれたりご案内したりする場合には、当然英語がわからなければ話になりません。
と、ガキの私は考えて、英語だけは一生懸命勉強しといたんです。

まだ中国語や韓国語を勉強する時代ではありませんでしたし、第二外国語と言えばフランス語かドイツ語という時代でした。
だから、他の科目は、まぁ、どうでも良いんですけど、将来新幹線の運転士になるんだというモチベーションから、英語の勉強は一生懸命やりました。
当時のガキの単純な発想ですね。

で、結果的には国鉄改革というのがあって、高校を出るときにも大学を出るときにも国鉄の採用がなかった時代だったので、「新幹線は無理だな。」となった時に、「じゃあ、飛行機へ行こうか。」となったのですが、その時に英語を勉強していたことが役に立ったのです。

実際には大学生の時にはもうすでに国鉄はダメダメで、あんなところへ行ってもしょうがないとあきらめていたんですが、そんな時に芸は身を助けるではありませんが、比較的すんなりと飛行機の世界に移行できたのです。

もっとも、飛行機の世界も当時は募集がなくて散々苦労はしましたけれど、私の場合は仕事と人生を分けて考えることができないタイプでしたので、「職業を通じて自己実現をする」ということに徹底して努力をすることになるわけですが、それでも、その時点から英語を勉強したのでは間に合いません。子供のころから勉強してきたことが役に立ったと、トークショーの席上でそんなお話をさせていただきました。

ということで、若い皆様方へ。

今の時点では将来どうしようか決めていない人が多いとは思いますが、だったらとりあえず勉強だけはしておきましょう。

勉強をしておけば、できるだけ遠くを見渡せることができるようになります。
できるだけ遠くを見渡せるようになれば、できるだけ多くの選択肢に出会えます。

将来どうなるのかわからないのは不安かもしれませんが、将来どうなるかわからないから楽しいのだし、将来どうなるかわからないから、生きていく価値があるのです。

私は、そんなこんなで現在に至っているわけですが、飛行機も鉄道も、両方仕事としてやっているのですから、とりあえず、自分の人生は良かったなと思いますし、今、50年前の自分に再会したとしたら、「自分の思う道を一生懸命進んでみなさい。人生は面白いよ。」と言おうと思います。

Good Luck to all of you, guys.