空港は飛行機に乗らない人をどう集めるか

沖縄に居座った台風が九州方面に向かっています。

那覇空港も運航再開できて、何日も足止めになった人たちが家に帰れるようになったとニュースが伝えています。
もう一つ、今度は関東地方を狙って台風が来ていますが、何かあると、旅行者たちは空港に足止めを食らって動けなくなるシーンが毎年のように繰り返されていますね。

スケジュールに余裕をもって…といったところで、せいぜい1日か2日。
今回の台風のように何日も居座られてしまうとお手上げですね。

特に島のようなところは代替輸送手段がありませんから、出発前に「台風が来ているから取りやめにする」という決断しかないと思いますが、なかなかできるものではありません。

私も沖縄にはよく行きますが、なんとも難しいですね。

さて、空港というところはロビーで寝泊まりするようにはできていませんので、飛行機が飛んでこなくなるとお客様が滞留して今回のように大変なことになりますが、飛行機が順調であれば全く問題はありません。
まもなくお盆のピークになりますが、東京駅や新大阪駅などの新幹線のホームと違って、空港は基本的には飛行機に乗るまで建物の中で完結しますから、エアコンが効いて快適です。

昨今セキュリティーが働く人不足で長蛇の列と言われていますが、それとて時間に余裕をもっていけば、炎天下のホームに並ぶことを考えれば大したことはありません。

飛行機というのは自由席はありませんから、予約した人しか空港に来ません。多少お見送りの方がいらっしゃるとは言え、チェックインやセキュリティーに並ぶのは飛行機に乗る人だけですから、待ち受ける側も「明日の予約数」を見ればどれだけ混むか容易に予測できますし、例えば180人乗りの飛行機が1日に10本出る空港であれば、1日1800人ですから、新幹線に比べれば大したことはありません。

私は長年空港で働いていましたが、お盆や年末年始だからと言って、普段の倍のお客様がいらっしゃるわけでもなく、とにかく座席数だけの話ですから、意外と淡々と仕事を進めていました。

もちろん、セキュリティーや出国審査は込み合いますから、できるだけお早めにゲートへお進みくださいというアナウンスをしますが、出発便が込み合う時間帯ならともかく、まぁ、何とかなっていました。

では、何とかならないのはどういうときかというと、実はお客様が乗らない時期や時間帯だと思います。
これは飛行機を運航する航空会社ではなくて、空港を運営する空港会社の場合ですけど。

よく、航空会社と空港会社の区別がつかない人がいるようですが、航空会社というのは飛行機を運航する会社で、空港会社というのは空港の建物を運営する会社ですから、お間違えの無いように。

ということで、その空港の建物の話ですが、コロナの影響で日本全国ほとんどすべての空港がピンチになりました。
飛行機に乗る人がいなくなると、航空会社はもちろんですが、空港会社も大ピンチです。
とにかくお客様がいらっしゃらないのですから、レストランやお土産店など、どこもかしこも営業できなくなって、中には閉店してしまったところもたくさんあります。

でも、私は思うのです。
空港というところは、飛行機に乗る人たちが行くのはもちろんですが、飛行機に乗らない人たちをどうやって空港に来てもらおうかと考えるべきではないかと。

なぜなら、多くの皆さんは空への憧れや飛行機への憧れというのをお持ちだと思うからです。
駅へ行って電車を見るのが楽しいという人が百人中20人ぐらいいるかもしれませんが、空港へ行って飛行機を見るのが楽しいという人はおそらくその倍以上いらっしゃるのではないでしょうか。

駅というのは待合室とホームしかなくて殺風景ですが、空港というのはチェックインカウンターや出発ロビー、到着ロビー、レストラン街や展望デッキなどがほとんどすべての空港にありますから、おじいちゃんおばあちゃんとお孫さんが遊びに行ったり、家族で遊びに行くにはなかなか良い場所だと私は思います。
でも、コロナの時期が3年間も続いたのですが、空港会社やあるいは空港を運営する行政の皆様方が、「今の時期は出かけることはできないけど、空港に遊びにおいでよ。」というキャンペーンをやったところはほとんどなかったと思います。

みんな行きたくてもどこへも行かれない時期ならば、せめて空港へ遊びに来て、家族でご飯を食べて、「今度飛行機に乗ろうね」的な地元の県から出ない休日の過ごし方ってあったと思うのですが。

今、地方空港活性化の名のもとに例えば駐車場の料金を無料にしたり、いろいろ飛行機利用者の便宜を図るような取り組みをしている空港が多くなりましたが、「飛行機を利用しない人たちに空港に来てもらうにはどうしたらよいか」ということを実施している空港は少なそうです。

もう30年近く前の話になりますが、ロンドンのヒースロー空港ではビジネスルームというのが完備してました。簡単に言うと貸会議室です。

ある会社の社長さんが(日本の会社ではありませんよ)、11時に東京を出るロンドン行きに乗って、乗り継ぎが夕方のニューヨーク行のコンコルドだというのです。
「だったら最初から東京ーニューヨークを飛べばいいじゃないですか。」
私がそう聞くと、彼は、「いや、ロンドンで会議があるんだ。」と答えます。
「空港の会議室で、ロンドンの人間と会議をして、そのままニューヨークへ行く。」
そういうスケジュールなんですね。
もちろんZOOM会議などというのはない時代でしたから。

ファーストクラスとコンコルドですからそれだけで当時の金額でも100万円以上の行程ですが、ビジネスは「Time is Money」
お金じゃないんですよね。
私は空港の使い方って、何も飛行機に乗るばかりじゃないかもしれないと思い始めたのがそのころで、そのあと地方空港がどんどん日本国内にもできて、なかなか厳しい時代が長く続いています。

何しろ、空港というのは飛行機の座席数以上にお客様が来ないのですから。

例えば富山空港ですが、国内線は東京便が1日3便に札幌便が1便。
160人乗りの飛行機として満席に乗っても1日600人ちょっとです。

その人たち相手にレストランやお土産物屋さんがあるのですが、到着旅客は基本的には空港に滞留しませんので、では1日600人の出発客が商売の相手となりますが、そのうち何割が空港の中で食事をしたりするのでしょうか。

そう考えると空港内のレストランは来店客数が限られますから、じり貧でしょう。最終便が18時半に出てしまいますから、飛行機利用者だけを対象にしていたら夕食のお客様も当てにできません。

その対策でしょうか。富山空港では外部からお客様にいらしていただこうと、レストランを利用したら駐車場が無料になるサービスをやっていますし、それ以外にも空港のビルの中に貸会議室を設けて時間貸しで会議ができるようになっていたりします。
上等なお寿司屋さんがビルの中に入っていますが、これなら飛行機に乗らない人でも行きたくなりますよね。

先日、大阪空港へ行きましたが、空港ビル内が改装されていて、飛行機に乗らない人たちにもいらしていただける仕組みがいろいろできていますし、夕方以降、空港の夜景を楽しみながら食事をしてもらう目的でしょうか。18時以降駐車料金が割引や無料になるサービスも行っています。

まぁ、大阪空港の場合はそれ以前の問題として、飛行機の運航をちゃんとしましょうよという大きな課題がありますが、それは国交省の問題で、空港ビルを運営する会社としては、何とか飛行機に乗らない人に来てもらおうと算段している様子がうかがえます。

昨日は奈良から上越への移動日でしたが、神戸市内の出島にある取引先の会社さんを訪問しまして、その後その先にある神戸空港へ行きました。

飛行機に乗る用はありませんが、お昼時だったので食事をしようと思ったのです。

予約したサンダーバードは15時過ぎ。三宮や大阪でお昼を食べようとも考えましたが、どこも混んでいて待たされるでしょう。でも神戸空港なら大丈夫だろうと予測して行ったら、案の定すぐに入れましたし、こんな面白い電車が走っていますから、飛行機に乗らなくても何となく行ってみたくなると思いませんか。

実は、神戸空港は伊丹空港と差別化を図っていて、まず第一に駐車場が安い。
伊丹は今の時期1日3000円以上しますけど、神戸空港は24時間以内なら無料。
まして、ややこしい門限も23時ですから、到着便も22時過ぎまである。
伊丹よりも安心です。
イベントとしてキッチンカーマルシェなんていうのもやっていて、飛行機に乗る人も飛行機に乗らない人も利用したくなるような空港が神戸空港だと思いました。

ということで、空港というところは何も飛行機に乗る人だけが行く場所ではありません。
飛行機に乗らない人にどうやって来てもらえるかというのが、これからの、特に地方空港の大きな課題だと私は考えるのですが、そもそも飛行機に乗らない人は空港にも行きません。
駅なら大抵の町にありますから、電車に乗らない人にどうやって電車に乗ってもらおうかということよりも、飛行機に乗らない人にどうやって空港に来てもらおうかと考える方が、もしかしたら難しいかもしれません。

でも、空港には一種独特な雰囲気がありますから、少なくても私の場合は駅で電車を見るよりも空港で飛行機を見る方が好きなのであります。

飲むところも食べるところもありますから、デートスポットとしても使えるんですけどね。

新潟県民は飛行機に乗る機会が少ない人たちですから、なかなかこういうお話をしても、そもそも論としてピンとこないでしょうけど。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。